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化学部会

2007年 化学部会講演会等開催行事

2007年に開催した例会及び講演会の報告等を掲載しています。

1月24日

出席者31名 13:30〜17:00 葺手第2ビル

講演1:「一種類の分子からできた金属」

小林昭子 先生 日本大学 文理学部 化学科 教授
 小林先生らは中性の金属錯体分子が導電性を有し、かつフェルミ面を持つなど、いわゆる金属としての特性を示すことを見出されたが、これは従来の概念を越えた画期的な成果である。量子化学的な説明が多く非常に難解な内容であったが、今後の新たな展開が期待される興味深い講演を拝聴できた。小林先生らは(TTF)[Ni(dmit)2]2(dmit= 1,3-dithiole?2-thione-4,5-dithiolate)などのDonor-Acceptor金属錯体超伝導体に関する研究の途上で、金属dmit錯体の種々の誘導体、[M(tmdt)2] (M=Ni,Pd,Pt,…,tmdt=trimethylenetetrathia fulvalenedithiolate)が単独分子で導電性を示し、金属的な挙動を示すことを発見した。例えば、[Cu(tmdt)2]は5.1S/cm、[Ni(tmdt)2]は200S/cm、[Au(tmdt)2]は50S/cmの導電性を示した。これらの分子は中性であり、その集合体は平面状分子の積層構造からなり特殊な電子状態を持つことが特徴である。さらに、これらの分子にはフェルミ面が観察され、このことが金属であることの究極の証明といえる。混晶系のMolecular Alloyである[Ni 0.75Au0.25(tmdt)2]単結晶も紹介された。これらの化合物は有機溶媒に不溶であるが、今後錯体構造の工夫などで可溶性にできれば、膜状にしてプリント基板、くし型電極などへの応用が考えられ興味深い。その他、Cu(dmdt)2],[Zn(tmdt)2],Co(dt)2などさまざまな分子金属錯体の構造と特性についても紹介があった。これらの金属錯体は粉末状であり、今後固体化する加工法と導電体としての応用について検討したいとのことであった。

講演2:「ヨウ素の製造と利用」

海宝龍夫 氏 関東天然ガス開発(株)、技術士(化学部門)
 房総半島地下にはヨウ化物濃度が100ppmと海水の2000倍も高い地下かん水がある。資源的に少なく高価なヨウ素について、資源状況、生産技術、利用法について紹介していただいた。近年、偏光フィルムや色素増感太陽電池など先端技術においても重要なヨウ素の最新動向について拝聴した。
 情報交流会:理事会、委員会報告があり、技術士法50周年記念行事について紹介があった。また化学部会規約案について紹介があり、審議後基本的に了承された。

以上 松浦一雄記

2月22日

技術士法制定50周年記念化学部会第一回行事
 出席者37名 13:30〜17:00 葺手第2ビル

講演1:「21世紀の化学安全の方向性」

田村昌三 先生 横浜国立大学 教授
 化学物質は潜在的に発火・爆発、有害環境汚染などの危険性を有しているものが多く、操作ミスなどにより製造・取扱い時などに危険が顕在化する恐れがある。したがって、産業の高度化、ライフスタイルの変化に伴い環境との調和が重要な問題となる。環境負荷低減と安全の視点から、燃料電池、リチウムイオン電池、水素燃料など新燃料システムや廃棄物処理システムの改善が重要な課題であること、化学プロセスからの化学物質の漏洩防止、火災・爆発防止が大きな問題であることを指摘され、操作ミスによる過去の重大事例として副生ダイオキシンによるセべソ(イタリア)およびメチルイソシアネートによるボパール(インド)の事故について紹介があった。最近の事例としては原子力関係でのアスファルト固化処理の際の火災や臨界問題があり、安全知識と意識の欠如に起因する基本的な問題であることを指摘された。化学物質関連の事故例として、過酸化水素水溶液輸送時の事故、ヒドロキシルアミン蒸留時の事故など豊富な事例を挙げて物質危険性の知識と安全意識、倫理の重要性について触れられた。21世紀の化学安全の方向としては、化学物質総合安全管理システムの整備とレスポンシブルケア、潜在危険の認識、ベネフィットとリスクに基づく科学的議論、大学での安全教育や失敗知識の技術者安全教育の活用、安全教育人材育成、情報センター機能の重要性など多くの問題点を強調された。

講演2:「JICAシニアボランティア-ヨルダン体験記」

立木清広 氏 三菱石油OB、技術士(化学部門)
 高硫黄重油を使用しているイスラーム国ヨルダンの大気環境保護の目的で、現地にて「火力発電所での石油製品の試験分析」の指導をされた同氏から、宗教と文化、言語の違いなどによる様な戸惑いを含め活動成果についてお話いただいた。ご自身の生き方の自己評価やJICAのシニア海外ボランティア制度の紹介もあり質疑も盛り上がった。

情報交流会

 理事会、委員会報告があり、とくに4月の理研見学会の詳細案内、技術士法制定50周年記念行事の企画案や代議員制度導入案などについて経緯紹介があった。

以上 松浦一雄記

3月22日

 出席者32名 13:30〜17:00 葺手第2ビル

講演1:「超分子ポリマーから超分子材料へ」

荒木孝二 先生 東京大学 生産技術研究所 教授
 安定でロバストな共有結合からなる通常の有機分子に対して、超分子とはファンデルワールス力、水素結合、配位結合などの弱い分子間相互作用からなり高度な機能を果たしている分子の新しい概念である。典型例にはキモトリプシンなどの酵素が挙げられ1990年頃から市民権を得てきた。これに呼応して、超分子材料とは水素結合を介する自己組織化などの動的構造制御により、超分子→超分子ポリマー→超分子材料へと階層的に構築される材料の新しい概念である。分子設計例としては、グアニンを主鎖形成部位としこれにソフトセグメントとしてアルキルシリルリボースを連結させた超分子があり、これを水素結合により一次元水素結合主鎖からなる超分子ポリマーとし、さらに分子間相互作用によりラメラ、へリングボーンなどの集積構造が形成される。このソフトセグメントを用いる分子設計は多様な超分子材料の階層的構築に極めて有用な手段である。一次元超分子材料の例としては、溶融紡糸により作られる超分子繊維があり、強度は弱いが水素結合の可逆性を生かせる特徴がある。二次元超分子材料の例としてはオルガノゲルが、三次元材料としては超分子フィルムがある。超分子材料は、結合は弱いが可逆的な分子間相互作用をベースにしているので、機能性を生かした材料がねらいである。発光スイッチング、超分子液晶、熱可逆架橋ゴムなどへの応用も期待され、ニーズにマッチした材料をテーラーメイドにつくれる夢のある材料の紹介があった。

講演2:「OGJの石油統計値の解析など」

井原博之 氏 技術士(化学部門)
 45年間にわたる膨大なデータの独自の解析結果に基づく貴重な講演であった。API比重で原油が3種類に分類でき、原油の生成時期は主に白亜紀でプレートの動きとよく相関している、埋蔵量が多く硫黄分の多い原油は旧アフリカ大陸北側に偏在している。イギリス、ノルウエーの原油生産状況からピークオイルは近いことが予想される。

情報交流会

 5月の臨時総会開催の案内、日刊工業新聞への技術士事例掲載の半年延長の件、4月の理研見学会の案内、技術士法制定50周年記念行事の案内などがあった。

以上 松浦一雄記

4月24日

 出席者40名 13:30〜17:00

見学会

 (独)理化学研究所・中央研究所(埼玉県和光市)
 理化学研究所は1917年の設立当初より、大河内正敏、高峰譲吉、鈴木梅太郎他多数の著名な科学者を擁し理研コンツェルンとも称されてきた。
 1948年以後、株式会社、特殊法人形態を経て、2003年に独立行政法人となり現在に至っている。その間、仁科芳雄、朝永振一郎らが在籍、現在は2001年度のノーベル化学賞受賞者の野依良治博士が理事長を務めている。研究体制は、中央研究所、フロンティア研究システム、生命科学系研究センター、研究基盤センターから構成され、「見える理研」、「世の中に役立つ理研」など野依イニシアティブの下で、強い個の実現と機動的な連携による理研ブランドの創出を謳っている。中央研究所では真の創造性と卓越性すなわちオンリーワンかナンバーワンを目指し、その他のセクションでも卓越した先見性と世界最高水準の確保を目指している。最近の研究成果の例としては113番目の元素の発見(2004年森田ら)、骨粗鬆症の骨の破壊を止める新治療法の確立、(2006年長田ら)、Spring-8の放射光粉末回折による微量アスベストの検出(2006年石川ら)、ポリマー構造を高度に制御する高性能触媒の開発(2005年侯ら)などがある。重要国家プロジェクトとしては、次世代スーパーコンピュータの開発、分子イメージング研究、テラへルツ光研究、次世代放射光源の開発、超高速タンパク質ファクトリーなどが挙げられる。外国人研究者は50か国・396人に達している。今回は膨大な研究施設の中から、ケミカルバイオロジー(長田裕之研究室)と次世代ナノサイエンス・テクノロジ−領域研究(川合真紀研究室)の最新研究動向について紹介していただいた。長田研では20世紀で最も注目すべき発見と言われる抗生物質について研究しており、微生物代謝産物から有用な新しい細胞機能調節物質(バイオプローブ)を探索し、細胞機能の解析研究に用いている。最近では、放線菌が生産する物質がT細胞の増殖を抑えることを見出し、新たな免疫抑制作用の標的として注目されている。川合研では固体表面のナノメートル領域の新機能発現に注目、STMなどを駆使して単分子の振動や反応を解析しており、電子ナノ機能を用いた分子デバイスなど「ものつくり・サイエンス」として期待されている。

以上、松浦一雄記

5月24日

技術士法制定50周年記念化学部会第二回行事
 参加者53名13:30〜17:00 葺手第二ビル

講演1:基調講演「技術者(技術士)の将来に向けて」

湖上国雄 氏 技術士(化学部門)
 平成12年の技術士制度改正の総括として、APECエンジニア、JABEE連携、高い倫理観の下、公益に対する社会的責任の明示を挙げられた。技術士の問題点とその解決方法の提案として、学協会、産業界、一般社会へのPR運動、技術士活用センターの創設などを通して活用促進へ向けて努力することが重要であり、最終的には業務占有資格へつなげたい意向が示された。業務拡大へ向けての提案としては、世界的に卓越した製品の発明・工業化に貢献することが知名度の向上につながり、結果的に業務拡大を産むこと、MOT関連事項も重要であり、どんな良いビジネスを提供できるかを顧客に分からせることの必要性などを説かれた。

講演2:パネルディスカッション

「技術士について考える―明日の技術士はどうあるべきか」
パネリスト:前田秀一 氏(司会)石川清 氏、平野輝美 氏、石原哲男 氏、齊藤義順 氏 全員技術士 (化学部門)

 さまざまなキャリアと年代層のパネリストにフロア−の会員も交えて活発な討議がなされた。以下に重要なポイントのみ要約した。
(1)技術士の問題点とその解決方法の提案:1)企業と技術士のつながりを強固にする必要があり、単なる企業従業員ではなく一技術者としての職業意識の目覚めが必要。2)企業内技術士が少ないが、JABEE連携などを通して大学卆業後は技術士となって当たり前という環境作りが必要。3)プロジェクト、部会活動は会員の技術の拡がりに役立ち、人脈拡大もできるなど入会メリットに大きく影響する。これらの活動の強化が重要。
(2)技術士としての夢とその実現方法:企業を越えた技術者集団としての技術士会の地位向上が重要。技術士個人としては、技術的バックボーンを持った技術経営者、定年後も社会に貢献できる技術者、世界に活躍する技術者などの道がある。このときベースとして会社からのメンタル的独立が必須である。今回の記念行事には、とくに1次、2次試験合格者が22名も参加、新人層の問題意識の高さが伺えた。

臨時総会

 来期新幹事の選任、幹事互選による新部会長の選任、副部会長の選任を行った。新合格者祝賀会を開催した。

以上 松浦一雄

6月28日

技術士法制定50周年記念化学部会第三回行事
 参加者37名 13:30〜17:00 葺手第二ビル

講演1:基調講演「日本ハムグループにおけるコンプライアンスへの取り組み」

宮地敏通 氏 日本ハム(株)執行役員
 2002年8月に日本ハムの食肉偽装が報道された。同社では直ちに再発防止策を発表し、外部メンバ−を含む企業倫理委員会を中心とした徹底した内部統制の仕組み・運用・チェック・改善によるコンプライアンス経営の継続的改善を推進、その結果、売り上げは2005年度には危機以前のレベルまで回復した。法令順守と内部コミュニケーションの仕組み(現在年間120件のボトムアップを幹部約100人が共有)など内部統制の具体的な推進施策と成果について生々しい部分も含めお話頂けた。

講演2:パネルデイスカッション

「技術士について考える −技術士の社会的責任−」
司会:伝田六郎 氏 元日本製鋼所 技術士(化学部門)
パネリスト:井上祥平 氏(東大名誉 教授、元日本化学会会長)、青山祐造 氏(元三菱レイヨン取締役、技術士)、中村博昭 氏(元冨士フイルム・技術士:化学部門)
 まず、東大名誉教授、元日本化学会会長・現倫理委員長の井上祥平氏より「倫理に関する日本化学会の活動」について紹介して頂いた。日本化学会では2000年1月に英国化学会の倫理規定をもとに「会員行動規範」を制定、化学会のみならず企業及び一般に対象を広げてその徹底に注力しているが、近年に至っても研究関連の不祥事が起こっている。防止策として井上氏は対症療法から原因療法への転換の重要を説かれた。ついで伝田六郎氏の司会の下、以下のパネリストによるプレゼンテーションがなされた。青山祐造氏(元三菱レイヨン取締役、技術士):「技術者の倫理をどう果たしてゆくか〜真理と倫理」、中村博昭氏(元冨士フイルム、技術士):「コンプライアンス経営は、技術者が主役」、伝田六郎氏(元日本製鋼所、技術者):「エンジニアリングと技術者倫理」。これらを受けてフロアー参加者も交え活発な議論がなされた。現在まさに沸騰している議題だけに収束する方向とはならなかったものの、全員一致の感想としては、“この議論そのものに大きな意義がある”であった。今後、英国流倫理観および日本化学会の活動状況に関してさらなる情報収集を行う予定である。(後者に関しては本年11月22日に井上祥平氏に再度の講演をお願いしている)

情報交流会

 総会・理事会報告を中心に、新会長、副会長をはじめ各常設委員長など来期新体制と方針についての紹介があった。

以上 松浦一雄

7月26日

講演1:「トライボロジーの最近の話題」

加藤康司 氏 日本大学 教授

講演2:「有機合成とフッ素化学」

林 誠一 氏 技術士(化学部門)

8月28日

講演1:「帝人グループの将来を担う研究開発」

山岸 隆 氏 帝人 副社長

講演2:「技術移転」

岡本 勤 氏 新日石総研 技術士(化学部門)

8月23日

講演1:「2050年低炭素社会に向けての挑戦」

藤野純一 氏 国立環境研

講演2:「東アジアにおけるプラント試運転結果の報告」

佐藤文昭 氏 三菱重工 技術士(化学部門)

9月27日

講演1:「セレンディピティと研究開発」

澤泉重一 先生 富山県立大 客員教授

講演2:「グリーン合成の実践例:光学活性ピレスロイド」

鈴鴨剛夫 氏 技術士(化学部門)

10月25日

見学会

 防衛省 技術研究本部 航空装備研究所(立川市)

11月22日

講演1:「日本化学会における倫理活動について」

井上祥平 先生 東大名誉 教授

講演2:「男性から見た化粧品と化粧品技術」

秋葉恵一郎 氏 技術士(化学部門)

12月13日

講演1:「外食産業の現状と化学の接点」

村本信幸 氏 元スカイラーク

講演2:「自発光塗料:新しい機能性塗料の提案」

平野富夫 氏 日本ペイント(株) 技術士(化学部門)

忘年会

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