生物工学部会のホーム
部会活動状況
施設見学会実績(見学会および講演会)2025年
【日時】2025年7月18日(金) 13:00-17:00 (終了後、懇親会)
【訪問先】[1]神戸医療産業都市推進機構
[2]理化学研究所 生命機能科学研究センター
[3]理化学研究所 計算科学機構 「富岳」
[4](株)バッカス・バイオイノベーション
【懇親会】コウベビアハウゼ
【内容】2025年度の夏季施設見学会は、兵庫県神戸市ポートアイランドのメディカル・クラスター、バイオ・クラスター並びにシミュレーション・クラスターの3エリアで開催された。参加者は、生物工学部門だけでなく、化学、上下水道、機械及び経営工学部門の方々にもご参加いただき、計38名の参加者であった。
河野猛 近畿支部会長の開会の挨拶で幕を開け、神戸医療産業都市推進機構ではクラスター推進センター創薬バイオGLの小池晴彦先生、理化学研究所 生命機能科学研究センターではサイエンスコミユニケーター山岸敦先生、理化学研究所 計算科学機構「富岳」では高度情報科学技術研究機構RIST 須永泰弘先生、そして(株)バッカス・バイオイノベーションでは取締役 服部亮先生より貴重なご講演、質疑応答及び各施設のご紹介があった。
1.神戸医療産業都市推進機構(小池先生)
神戸医療産業都市推進機構では、クラスター推進センター創薬バイオGL 小池晴彦先生より、神戸医療産業都市(KBIC)、神戸医療産業都市推進機構(FBRI)並びにクラスター推進センター(CCD)の紹介があった。
KBICは、1998年よりプロジェクトがスタートし、バイオものづくりの拠点として遺伝子治療、細胞医療を中心に2024年7月時点で約360の企業や団体が進出しており、雇用者数も2023年3月時点で約12700名まで拡大しているとのことであった。また、KBICでは、世界初のiPS細胞移植手術に貢献した株式会社ビジョンケア、手術支援ロボット開発の株式会社メディカロボ、世界初の歯髄再生医療のアエラスバイオ株式会社などの構成が有名であることが紹介された。また、最新の事業として、細胞・遺伝子治療製品実用化のワンストップサポート、GMP製造エコシステムの強化支援など、「Be CGTEco KOBE」戦略で製造ノウハウ開発シーズの情報提供、GMP製造エコシステム、製造人材育成、製造・品質管理体制強化、薬事承認までの助言や臨床実装の場の整備・構築に注力しているとの説明があった。
FBRIは、医療イノベーション創生を目的として、産学官医の連携・融合を支援する機関である。CCDは、イノベーションが生まれる仕組み作り、グローバル展開も見据えた地元企業等に対する事業化支援ならびに魅力的なクラスター形成を実践しているとのことであった。
2.理化学研究所 生命機能科学研究センター(山岸先生)
理化学研究所は、日本で唯一の自然科学の総合研究所であり、その中で生命科学を推進する4つの研究センターがある。神戸地区には生命機能科学研究センター(BDR)がある。当該研究センターは、300人弱の規模でそのうち半分が女性を占めている。多細胞生物のライフサイクルを支える分子・細胞・臓器の動きを動的なシステムとして研究し、それらの成果を再生医療や診断技術の開発、健康寿命の延伸に取り組んでいる。当日は、サイエンスコミュニケーターの山岸敦先生のご説明の後、2班に分かれて生命科学実験用ヒューマノイドロボットシステム「LabDroid まほろ」を見学した。
このシステムは、細胞培養等の実験においてAIが細胞の状態を判断して、作業を行い、これまでヒト的、時間的に制限されてきた作業を24時間体制で行うことができること、暗闇でも作業できる等のヒトの都合に左右されないメリットがあることが紹介された。ヒトが使用する従来の器具をそのまま使えるように設計されていることも興味深い。
3.理化学研究所 計算科学機構 「富岳」(須永先生)
理化学研究所 計算科学機構では、一般財団法人高度情報科学技術研究機構(RIST)の須永泰弘先生より、スーパーコンピューター「富岳」の紹介と成果例について紹介があった。
「富岳」は、2021年3月より本格稼働し、現時点でGraph500世界1位、Top500は世界7位の性能を誇っている。また、旧型の「京」と「富岳」を含む革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)を使用した企業数は、2025年3月末時点で累計426社にもおよぶとのことであった。
「富岳」の成果として、ヒトの病原物質の呼出メカニズムの解析、室内換気設計、ミストシャワーの吐水シミュレーション、医療への応用として心房細動や人スケール脳のシミュレーション、さらには医薬開発のための薬剤分子結晶構造予測プラットフォーム構築や製材特性予測法の開発事例が紹介された。「富岳」はインターネットを介して使用することができることができ、利用前や利用中の相談支援もあることが紹介された。最近、量子コンピューターも導入され、今後益々の相乗効果が期待される。
4.(株)バッカス・バイオイノベーション(服部先生)
株式会社バッカス・バイオイノベーションは、バイオものづくり企業として活動されており、神戸大学の近藤昭彦教授が代表取締役である。当日は、同社取締役の服部亮先生より同社事業の紹介があった。特に、DBTLサイクル(生物をDNAからデザインして、意図している機能を有する微生物・植物・動物細胞等のスマートセルを創生すること、有用物質を生産すること)をコンセプトとされている。具体的には、統合型バイオファウンドリと称して微生物の育種からプロセス開発までをワンストップで実現する事例の紹介があった。
5.懇親会&翌日オプションツアー
神戸市三宮にあるコウベビアハウゼにて、懇親会が開催された。参加者は、計34名になり、東田部会長の乾杯から始まり、日ごろ直接会話のない会員間の交流が進み、盛況の内に幕を閉じた。
見学会翌日は、灘五郷ツアー又は神戸港クルーズ&中華街散策のオプションツアーがあった。
6.最後に
今回の見学会では、我が国が誇るスーパーコンピューター「富岳」の施設見学もあり、貴重な体験ができたと考える。とにかく、生物工学部門技術士にとっては、興味深い内容ばかりであった。また、当日は各施設間の移動は曇天下とは言え暑い時間帯の徒歩移動もあること、また訪問先も4か所ということで参加者の負担を心配したが、すべて問題なく予定通り実施できた。
今回の見学会の各施設でお世話になりました講師の先生方、神戸医療産業都市推進機構の小林圭以子氏、理化学研究所の水島一司氏及び岡田昭彦氏並びに(株)バッカス・バイオイノベーションの長谷川慎哉氏に深く感謝いたします。
最後に、生物工学部門近畿支部の幹事の皆様、お疲れさまでした。
(文責:島田 敦)
「IPEJ」,「日本技術士会」,「技術士会」,「CEマーク」及び「PEマーク」は、公益社団法人日本技術士会の登録商標です。
公益社団法人 日本技術士会 / Copyright IPEJ. All Rights Reserved.