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生物工学部会

研修旅行実績(見学会および講演会)2014年

研修旅行の様子(拡大画像へのリンク)

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研修旅行記録

【日時】平成26年7月27日(金)13:40-17:00(終了後懇親会)
【訪問先】知の拠点あいち
【懇親会】(名古屋駅周辺)

【内容】
1. 「知の拠点あいち」の概要
 山本良平会員(知の拠点あいち事業統括)、柿谷均部会長からの挨拶の後、(公財)科学技術交流財団(以後財団と記載する)・知の拠点重点研究プロジェクト統括部部長の山本佳史様より、知の拠点あいちの概要について紹介がなされた。知の拠点あいちは付加価値の高いものづくり技術を支援するために最先端の研究開発環境を備えている。職員は約200名おり、うち100名は県の職員、残り100名は財団の職員である。約16ヘクタールの土地には、あいち産業科学技術総合センターとあいちシンクロトロン光センターの2施設が建ち、210億円の投資がなされている。うち75億円がシンクロトロン設備に、20億円が各種計測機器の費用として使用されている。ものづくりのイノベーションを生み出す、知の発信の拠点となることを目指している。

2. 「食の安心・安全技術開発プロジェクト」について
 財団の知の拠点重点研究プロジェクト統括部、科学技術コーディネータの松村憲明様から、あいち産業科学技術総合センターの紹介、産学官のプロジェクト制度、プロジェクトの一つである食の安心・安全技術開発プロジェクトの概要と進捗について説明がなされた。あいち産業科学技術総合センターは、産学行政の連携によるモノづくりイノベーションを推進する施設としてスタートした。分子や原子レベルの操作・制御およびデータと理論に基づくモノづくりを目指している。産学行政の研究者を結集し、愛知県は各研究プロジェクトを財団に委託することで共同研究を実施する。現在3つのプロジェクトが5カ年計画で実施されている。2011年から開始したため、今年で4年目となる。プロジェクトは1. 低環境負荷型次世代ナノ・マイクロ加工技術の開発プロジェクト、2. 食の安心・安全技術開発プロジェクト、3. 超早期診断技術開発プロジェクトの3つから構成されており、それぞれのプロジェクトの中に3つのグループが配置され、個別の研究テーマが実施されている。プロジェクト2は、有害化学物質、食品中の固形異物、食品中の微生物における高度な計測デバイスの開発が行われている。グループ1(有害化学物質計測)では、光学的アプローチやイムノアッセイ、GC-MS等を活用し、現在1~2日かかっている分析を数十分で分析可能なシステムの開発を行っている。グループ2(固形異物検出)では、磁気センサー(SQUID、フラックスゲートセンサ、MRI)や超音波、電磁波(近赤外線、テラヘルツ波)を活用し、これまで検出の難しかった毛髪や虫等の異物を検出可能な技術を開発している。グループ3(微生物検出)では、光学的アプローチや特異抗体等を活用した検査装置の開発や、MALDI-TOF-MSを用いたリボソームタンパク質解析(ストレイン・ソリューション)の活用を進めている。高精度検査による安心・安全な食品・農作物の提供が期待される。

3. 「超早期診断技術開発プロジェクト」について
 表題のプロジェクトについて事業統括の山本良平会員から概要と進捗の説明がなされた。目的はお年寄りを含む全ての人々が一人でやれることはやり、生活を楽しむ社会を実現すること。生活の場に導入した計測機器から得られた情報を医療機関が解析可能な環境の構築を視野に入れている。がん・心疾患・脳血管のそれぞれに対してグループを設け、計測技術の開発を行っている。グループ1では血管の弾力性測定を短時間に測定し、動脈硬化進行度を計測する技術を開発している。グループ2では、がんの簡便な診断方法の開発を行うべく、微小がんを確実に検出する技術(内視鏡やがん幹細胞を濃縮し計測するデバイス)の開発を行っている。グループ3では、生活習慣病の診断技術として呼気・皮膚ガスの成分分析により、腸内細菌の変化を検知できる技術や、人の動きや呼吸をモニタリングできる布センサーの開発が実施されている。超早期診断による健やかな生活の提供や日常生活に溶け込む新しい医療システムの構築を目指す。

4. 4. 知の拠点あいち重点研究プロジェクト研究室および試作機器 見学
 山本良平会員の案内で、施設を見学した。研究員ごとに入出できる部屋が制限されている。超早期診断技術開発のラボにおいては、がんにおける感染症等の検出のためのマイクロ流路チップを用いた迅速ELISA小型分析装置を見せていただいた。生活環境に溶け込むスマートなデザインで、様々な生体試料を迅速に解析できるとのこと。96ウェルプレートの装置と比較して必要なサンプル量は1/100程度であり、数時間かかっていた計測時間も10分程度にまで短縮できる。

5. 高度計測分析機器 見学
 顕微鏡観察、表面分析、光分析、構造解析、質量分析、組成分析、熱分析、X線観察、電磁環境試験に関する多くの分析機器について説明を頂いた。地域の企業や大学の利用に供されるとともに、専門の技術者とコーディネータを配し、機器の測定から分析の支援まで行っているという。

6. シンクロトロン光利用施設 見学
 あいちシンクロトロン光センターは、次世代のものづくりに不可欠なナノレベルの先端・計測分析を行う施設であり、財団が運営管理している。シンクロトロンの施設の大きさとしては、Spring-8の20分の1ほど(外周72 m)であり、そのためビームエネルギーは極端に高くはない。その一方でエネルギーの高低を調節でき、時間あたりのX線量が一定であるなどの特徴がある。ビームラインは6本あり、2本が新設予定。化学状態や局所構造解析、分散状態・高次構造分析、結晶構造・薄膜構造分析など、様々な用途に使用できる。使用は時間(シフト数)で決まるため、多検体を解析することで1サンプルの価格を2000円程度にまで抑えられる。施設利用に際しては、コーディネータが窓口となり、9人いる説明員が協力する。試験結果の基本的解釈まで実施しているとのことで、必要に応じて大学の先生との議論を支援するという。

7. 所感
 知の拠点あいちは、その名のとおりイノベーションのためのものづくりを推進する施設として整備されており、各研究のレベルは非常に高くかつ実用的であると感じた。施設には最先端の様々な計測機器が揃っており、また企業が利用しやすいように相談窓口等が設けられているなど、産学連携のための多くの工夫がなされていた。愛知県のものづくりと科学技術に対する熱い情熱と深い理解を感じた研修となった。今後のイノベーション創出に期待したい。

(記録者:本田 大士)

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