生物工学部会のホーム部会活動状況研修旅行実績(見学会および講演会)2010年
日時:2010年7月9日13時〜18時(終了後懇親会)
場所:(独)理化学研究所神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター、同 分子イメージング科学研究センター、先端医療センター、臨床研究情報センター
懇親会:神戸空港内 ブッフェ グランチャイナ(18時〜21時)
2010年度日本技術士会生物工学部会の夏期研修旅行として、神戸ポートアイランド地区にある理化学研究所神戸研究所と周辺の研究施設を上記日程で訪問した。理研の神戸研究所は最先端の医療技術について、基礎研究から臨床応用まで一貫して扱っており、周辺の施設とともに大きな研究クラスターを形成している。各施設の見学会および講演会の内容について報告する。
【見学会】
各施設を回る前に神戸市役所の方から、神戸ポートアイランド地区にある研究施設全体の概要をご案内いただいた。以下、各施設の見学内容について説明する。先端医療に関連する設備がこの地域に集約されており、効率的で迅速な研究開発を行うことが出来るよう設計されている。先般話題となったスーパーコンピューター設備は完成が間近となっており、今後の利用が期待される。
(1)発生・再生科学総合研究センター
ヒト再生医療に応用が期待される万能細胞、幹細胞の応用を目的として、各種動物幹細胞からの分化過程の研究が行われている。今回は特にプラナリアの再生過程の研究やニワトリ胚の分化過程の研究について説明を受けた。
(2)分子イメージング科学研究センター
薬物動態、薬効、薬理研究を目的としてポジトロン核種の製造、標識化合物の合成、実験動物への投与から撮像追跡まで一貫して研究できる設備。今回は標識化合物の合成設備やPET(陽電子断層撮影)設備を見学した。
(3)先端医療センター、臨床研究情報センター
臨床研究を目的とした病院機能を持つ医療センターと、基礎から臨床への橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)の情報管理・解析を行う情報センター。
【分子イメージング科学研究センター 渡辺恭良先生(センター長)によるご講演】
演題:「分子イメージングを活用した創薬」
分子イメージング科学研究センターでは特にアルツハイマーやガンなどをターゲットに創薬および病理研究を行っている。周辺の大学等とも連携しつつ、かつ大学とは独立した機関として自由度の高い研究設備として活発に研究活動を行っている。
半減期の長い核種を用いる実験のみならず、11C(半減期20分)等の半減期の短い核種を利用して標識化合物の自動合成システムを有すること、PET(陽電子断層撮像装置)とMRI(磁気共鳴断層撮像装置)を併用した代謝研究が可能なこと、これらを一貫して行える国内最大規模の設備であることを特徴とする。
特に標識化合物の自動合成システムは装置をメーカーと共同して開発し、運用している。現在は装置自体の低価格化を図り、販売を視野にいれているとのこと(このような点は自ら事業開発を行う理研の伝統を感じる)。
薬物臨床の初期段階に利用する微量投与(マイクロドーズ)研究が進んでおり、薬剤開発コストを下げ、開発を迅速化することが出来ると期待している。抗体医薬を始めとしたタンパク・バイオ医薬の標識化合物による薬物動態解析の報告例が出始めている。
また、経口投与の薬物動態解析が進んでいる(無麻酔実験が動物愛護の関係で欧米では不可の為、日本が中心)。
【あとがき】
理化学研究所神戸研究所がある神戸の臨海地域は空港も整備され、近年交通の便が非常に良くなった。遠方からの利用のしやすさも重要な点である。医療を新しい産業として雇用を創出する神戸市の医療産業クラスター施策は、現在の国の方針とは合致するものと思う。国内の医療需要は高齢化に伴い増加傾向にあり、先端医療の需要も今後増えると思われる。さらに周辺諸国からの利用も視野に入れると、より活発な産業として活用が期待できる。今後は医療産業クラスター構想をより実用段階に進めていくことを期待する。
以上
(記録者:今泉暢)
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