平成20年4月5日 葺手第2ビル会議室
泉 可也 氏(技術士:生物工学部門)
バイオマスとは、再生可能な有機性資源の総称である。これには、草本系の稲わらや木質系の林地残材などの未利用バイオマス、サトウキビやトウモロコシなど草本系目的生産バイオマス(食料作物)、ユーカリやポプラなどの木質系目的生産バイオマス候補、製材工場残材や建設廃材などの廃棄物系バイオマス、といった種類が挙げられる。
バイオエタノールは、バイオマスを原料とするエタノールのことである。2005年の世界のバイオエタノール生産量は46百万KLであるが、その大部分は食料作物を原料としている。国別には、アメイカとブラジルが各35%、中国が8%、インドが4%、とこの4か国で世界生産の80%を超す割合となっている。
バイオエタノールは、糖質をアルコール発酵させ、更に蒸留させて得られる。未利用バイオマスや木質系目的生産バイオマスなどの「セルローズ系バイオマス」では、最初に蒸気やアルカリ薬液を使ってヘミセルローズを抽出しその後、糖化(単糖類や寡糖類に変えること)と醗酵のプロセスが必要である。しかし、サトウキビやトウモロコシなどの食料作物にあっては、「砂糖・でんぷん系バイオマス」であり、糖化又は醗酵からのプロセスで生産できる。
わが国でもバイオエタノールの生産の拡大が打ち出され(農水省の目標6百万KL)、その取組みが始められているが、生産コストが問題である。生産コストは、原材料費と製造費用(加工費)とで構成され、原材料の種類等で大きく違ってくる。現状は1L当たり円で、アメリカでのトウモロコシ原料のエタノールが35円、ブラジルでのサトウキビ原料のエタノールが25円、と推算されている。これに対し、わが国の生産コストの目標数値(1L当たり)は、農水省等(バイオマス日本推進会議)では100円とし、経産省では40円としている。後者の数値は、2段階の導入で2030年にというものであるが、かなり困難のように見られる。
それでは、わが国におけるバイオエタノール生産利用の具体的な可能性であるが、どのような方向で考えられるだろうか。結論的に述べると、次のような見方をしている。
植林からの木質バイオマス利用については、植林コスト、木材輸送コストといった、原材料費に係る課題が大きく、非常に難しい。
休耕田を活用したコメおよび稲わらに着目する水田有効活用のバイオマス利用は、エタノール1L当たり生産コスト200円程度との試算を見当づけられ、補助金の考慮されることが前提になるが、検討テーマとできよう。
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