平成19年10月6日 葺手第2ビル会議室
農業部門
技術士 永江啓一 氏
コウノトリは、江戸時代には全国に生息していたが、1971年に国内から絶滅した。その最後の生息地が、兵庫県の豊岡であった。この豊岡のコウノトリの生息地は、北は日本海に近く、勾配のない湿田の水田地帯を里山が囲み、中央を円山川が流れる南北に細長い盆地状の地形をなしている。
豊岡では、官民一体で1955年にコウノトリの保護活動を開始し、60年代に人工飼育を始めたものの、人工繁殖に成功をみたのは1989年になってであった。そして、1999年に「コウノトリの郷公園」(県立)の開園をみるとともに、2003年には「コウノトリ野生復帰推進計画」(計画策定主体:県)の策定へと至ってきている。
地元自治体である豊岡市にあっては、<人が自然に共生する地域社会づくり>をモットーに掲げて「環境経済戦略」が策定される一方、多様な市民組織が参加する実際機関として「コウノトリ野生復帰連絡会議」がつくられ、多彩な取り組みが行なわれている。
「環境経済戦略」は、次の5つを柱としている。
[1]豊岡型地産地消、[2]豊岡型有機農業、[3]コウノトリツーリズムの展開、[4]環境経済型企業の集積、[5]エコエネルギーの利用
このうちの[2]は、コウノトリと共生する水田づくりを目指すもので、「コウノトリを育む農法」の要件として、次の8項目を設定している。
・化学農薬の不使用又は削減
・化学肥料の削減、栽培期間中不使用
・温湯消毒
・深水管理
・中干し延期
・早期湛水(出来れば冬季湛水)
・堆肥、有機資材の使用
・ブランドの取得(ひょうご安心ブランド等)
環境保全と経済効果とが相互に刺激(共鳴)し合う仕組みづくりは、環境行動を持続させるに資すると考えられるものであり、このような取組みはモデルとして他地域への波及が期待される。
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