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国際委員会

国際委員会 第4期 委員長挨拶

国際委員長佐々木聡(拡大画像へのリンク)

 国際委員長 佐々木 聡

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 第4期目の国際委員会の委員長を仰せつかりました、佐々木 聡 です。よろしくお願い致します。

 2021年は私どもにとり特別な年です。日本技術士会創立70周年、公益社団法人移行10年、そしてAPECエンジニア相互承認プロジェクトに対応する日本のPE(Professional Engineer)としての地位を技術士が獲得して20年です。しかし、技術士制度改革は継続されています。何故でしょうか?

 制度的には、工学教育から実務経験を経て資格取得・能力開発まで一貫した、技術者を育成するための海外の枠組みと、日本の制度との整合が難しいことが理由です。しかし本質的にはProfessionalとEngineeringの概念が日本社会に理解されていないことにあるでしょう。もはや社会貢献と銘打ちConsultant Engineer時代のアプローチを繰り返しても、資格活用や評価が大きく前進することはないでしょう。遠回りでも、先ずは技術者の仕事を見える化し、技術士の哲学も垣間見せ、技術者全体の地位向上に努める。技術士をキャリアプランの当たり前の地位に据え、取得を全面支援して数を増やし、分野を問わない人材育成の仕組みとして社会に認知させる。このPE制度が有する潜在的能力を社会に伝えるためには、世界の動向とその歴史を知る必要があるのです。


 制度改革の旗印はOutboundを意識した「国際的通用性」ですが、国際的には、実質的同等性(substantial equivalence)という表現を用います。「大体同じ」とは、米国ABET(Accreditation Board for Engineering and Technology)が、加英豪愛新の認定プログラムを評価し、履修した学生の資質は実質的に同等としたことが始まりです。さらに、ABETの基準が世界標準となったのは、技術者に必要な資質能力、目標設定や評価方法等だけを定め、教育の手段や方法は縛らず、履修者が目標を達成すれば(outcomes assessment) 実質的に同等としたからです。これが、工学教育認定プログラムの相互承認協定であるワシントン・アコード(WA)で、日本では、JABEE (Japan Accreditation Board for Engineering Education;日本技術者教育認定機構)が加盟しています。

 教育要件には多様性があり、多くの救済措置もあります。WAの創立メンバーでは、政府の関与が緩く多様な教育が容認されたため、特定の業種に必要な教育は標準化し、その質を保証する制度が歴史的に求められました。第三者機関による認定学位(Accredited Degrees)が認証学位(Recognized Degrees)と差別化された理由もそこにあります。しかし例えば、米国の多くの州では後者でも実務期間を追加する等でPEへの道は開けます。さらに、欧州では政府機関による承認(Admission)を併用しています。APECエンジニアで日本の主張に基づき認定に認証が追加されましたが、政治的な意味以上に、当時の日本の技術士が実際に活躍していることが認められたからです。


 では、日本の制度はどうでしょうか?2000年の法改正で2責務を明記し、JABEE認定に併設して、一次試験を教育要件に相当させるための義務化と適性試験の導入を行い最低限の仕組みは整いました。2014年にはPEの資質・能力の基準、工学教育認定の枠組みを議論するIEA (International Engineering Alliance)の“Graduate Attributes and Professional Competences”(GA/PC)を参照した「技術士コンピテンシー」を制定し、2019年試験に導入しました。この前年より日本は6年に一度行われるIEAによる更新審査を受審し2019年6月に6年間の更新が承認されました。形の上では、APEC/IPEA国際エンジニアは同等と見做されたと言えます。

 しかし、本当の実質的同等性とは、技術士一人ひとりがPEとしての資質能力を体現・実装できるということですが、PE制度の歴史の古い職能団体の制度と比較をすれば、その差は歴然としています。本気で日本の制度を守るためには、制度化間近のCPDの準義務化や、これから議論を開始するIPDに魂を入れることが必須です。
 一方で、ここ十年で教育は大きく変わり、JABEE認定者以外でも30歳以下の世代はcompetencyを学んでいます。実は、これ以上の世代も本当は意識的に表現できていないだけと思われます。この気付きを促す情報を繰り返し発信することも大切です。こういった取り組みによって、competencyを指標とした人材育成には普遍性があると社会に伝われば、技術士の新たな評価にも必ずつながります。
 このような問題意識のもと、制度改革の背景となる情報の国内展開に関し、今期は喫緊の課題と考えて取り組んでまいります。


 従来からの活動も疎かにはできません。国際活動検討TFによる国際活動推進基本方針と所掌事項と主要業務の変更に従い、公益社団法人を意識したガバナンス構築に資するように業務を執り行います。海外活動支援委員会と日韓技術士交流委員会についてもTFの議論を踏まえた活動を進めるとともに、各種文書管理や会員の海外活動への支援策も継続致します。

 最重要事項とされたIEAについては、文部科学省と連携しながら国内制度との整合性に留意しつつ、総会での意見発信や情報の収集、他国レビュー等に寄与します。また、2024年度に行われる国内レビューに向け英文HPを改定し、受審体制の準備も今期中に着手します。本年6月改定の第4版GA/PCは、他組織とも連携しつつ、「技術士コンピテンシー」と「APEC/IPEAエンジニアの審査基準書」への影響の可否判断を行い、必要な調整を実施します。

 同じくFEIAP(Federation of Engineering Institution of Asia and the Pacific)については、総会・執行委員会において技術者資格制度における日本の地位向上に努めるとともに、4つの常設委員会のうち特に技術者教育はJABEEとも連携しつつ地域独自の動きに注視していきます。また、WGを設置したIMechEやEA等の組織との交流は、入手情報の価値や相互承認の可能性等の具体的成果と費用対効果も吟味して活動を進めます。

 このように、海外情報の国内展開に留まらず、定常的に担わねばならない業務が多数存在する中では、各委員会・部会・地域本部・県支部との連携が欠かせません。国際委員会へのより一層のご支援、ご指導をよろしくお願い致します。

以 上

2021年7月
国際委員長 佐々木 聡

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