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キャリアモデル
女性技術士キャリアモデル 池田紀子さん
いけだ のりこ さん
1980年代、半年間の米国海外研修で異文化コミュニケーションを学ぶ機会があった。いろいろな国籍・宗教を持つ学生の多様性と、環境や文化が異なる学生間で言語の壁を乗り越える包摂性を意識する日々を過ごした。そこで、従来の交渉スタイル(勝ち負けの対立型)ではなく、『Getting to Yes』という「原則立脚型交渉(Principled Negotiation)」アプローチを知った。これは、感情や立場にとらわれず、双方の利益を最大化し、公平で持続可能な合意を目指す方法である。これらの経験がその後の会社生活の礎となった。
また、西海岸の企業訪問中、バンク・オブ・アメリカビル最上階の役員フロアを見学した際、女性役員がいない、女人禁制の場所に女性でも訪問者だからあなたは特別と案内され、非常に驚いた。その時、入社面接で化学構造を研究の軸としていると話したシーンが思い出され、初心を貫き、できるだけ長くこの研究を続けたいと決意した。ここで、漠然とした海外への憧れから脱却し、自律的に選択し、より良く生きるという自身のウェルビーイング実践が始まったと思い返している。
技術士資格を持つ同僚が大学教授に転職することになった。社内での挨拶回りを受けた際、立ち話しで技術士の存在を知った。そして「あなたには技術士の資格が十分ある」と受験を勧められた。娘が大学に入学して子育ても一段落し、夫が単身赴任したこともタイムリーで、新たな挑戦への契機となった。勤務先にある企業内技術士会の活動は充実していて受験しやすい環境があり、加えて、社外での受験仲間との交流が励みとなり、技術士を目指すことができた。知り合った技術士の絆は強く、多方面で支援を得ることが現在進行形で、本当に嬉しい限りである。
社内では博士と技術士に対して同等の報奨金制度があり、その恩恵を受けることができた。業務としての直接の恩恵はほぼなかったが、社外の方々とのディスカッション前の名刺交換で、技術士と認識いただくとスムーズな会話につながり、この資格に大いに助けられた。
両親の介護や看取りと並行して受験勉強することは想定外であった。技術士取得を目指すことに両親がとても喜んでくれたこともあり、この期間は仕事とプライベートの時間を調整しながら、充実した日々となった。生活スタイルに合わせた働き方を選択し、ストレスフリーで心身の健康を保つことを知り、その後も継続している。
多様な技術と経験を持つ技術士との出会いは刺激的で、会社生活とは異なる観点でキャリアを見直すことになった。技術士会活動を通じた多くの出会いと人脈形成から、新しいチャレンジの始まりに驚きながらも、さらに成長する機会を得て楽しく活動している。
生成AIのような新技術が登場し、世の中の動きが大きく変化している中で、仕事のやり方を見直し、サービスを正しく活用していく姿勢が求められている。当然、技術士にも必要であり、国際エンジニアリング連合(International Engineering Alliance, IEA)は、既存の枠組みや常識を超え、新しい発見や進歩をもたらすブレイクスルー技術を積極的に活用することが技術士の要件であると述べている。私にとって新技術はまさに技術者人生のスパイスである。
我々と一緒に新技術を活用し、仕事とプライベートを統合して相乗効果を出す「ワーク・ライフ・インテグレーション」で大きな活力を得ていきませんか?
※注:記事は2025年7月現在のものです。
1956年生 神奈川県出身
一般財団法人 公正研究推進協会(APRIN)理事(2024.6〜)
一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)理事(2025.7〜)
公益社団法人 日本技術士会理事(2025.7〜)
■所属
紀梢技術士事務所
富士通研究所で半導体、スーパーコンピューター、
バイオインフォマティクス、人工知能の研究に従事し、退職後独立
「IPEJ」,「日本技術士会」,「技術士会」,「CEマーク」及び「PEマーク」は、公益社団法人日本技術士会の登録商標です。
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