男女共同参画推進委員会のホームキャリアモデル女性技術士キャリアモデル 目黒陽子さん
めぐろ ようこ さん
大学/大学院では農学を専攻しましたが、就職活動は専攻に縛られずに自分が面白そうだと思う企業に応募し、富山に開発製造拠点を持つファスナーメーカーに就職しました。入社から現在まで樹脂材料/製品の機器分析の業務に従事しています。さまざまな現象に応じて最適な分析を行い、結果を考察し、時には製造現場や開発と協力して課題解決を行っています。
染色に関する課題に取り組む機会があったこと、仲良くしていた職場の先輩が技術士を取得したことから、繊維部門の技術士に興味を持つようになりました。ある日、若手社員と役員の方との座談会にて、「他部門の技術士には報奨金が出るのに、繊維部門には報奨金がない。アパレル業界と関係の深いメーカーであり、染色をしている会社なのだから繊維部門にも出してほしい。」と要望したところ、その場で役員の方から「出すように考えるから、取りなさい。」とコメント頂いたことから、その約束を守ろうと技術士(繊維部門)に挑戦することを決意しました。
第二次試験1回目の挑戦は不合格。翌年妊娠したため受験を断念しようか迷いましたが、産休中に記述試験、育休中に口述試験が受けられそうだったので、受験し、合格して今に至ります。体調管理、勉強時間の確保など社会人になって一番大変な期間でしたが、良い経験になりました。とはいえ、産休・育休は子供を産み育てるための期間。まずはお母さんと子供の体調、親子関係の構築が最優先なので、男女問わず産休・育休中に受験を検討する方に限っては「受験はまた今度でもいいか〜」位の気持ちで取り組むことをお勧めします。また、今回の技術士取得に際して体調を労わりつつも支援してくださった上司や同僚の方々に感謝しています。
繊維業界では工学専攻の経歴を持つ技術者が多いため、私は農学専攻であったことにコンプレックスを感じていましたが、国家資格である技術士を取得したことで解消できました。受験勉強を通して繊維業界全体の知識が深まり、自社が業界の中でどこに位置するのか俯瞰的に考えるようになりました。「自社ではスタンダードでも業界全体ではニッチ」といったことを理解しているかどうかは、開発業務を進める上で非常に重要であると感じています。
技術士会入会後、一気に社外とのつながりが広がりました。具体的には、技術士会、技術士会_繊維部会、技術士会_北陸支部、JTCC(一般社団法人日本繊維技術士センター)です。技術的な相談先の確保、リーズナブルな価格で参加できるセミナー等、技術士になってよかったと思うことが多くあります。また、技術士仲間から質問されることがあり、社内で目を向けていなかった分野を知る機会を得ています。
現在は2歳になる息子と夫の3人暮らしです。コロナ禍を経て在宅勤務が浸透したことで、午前中在宅勤務をし、午後休みを取って子供を病院に連れて行くといった対応が可能になりました。通勤往復2時間でのフルタイム勤務は、家族と職場の理解と協力があって成り立っていると感じています。
正直、妊娠するまでは『女性だけが出産があり育児も多くを負担するのは不公平/もっと制度が整備されるべき』と鼻息荒く思っていました。しかし妊娠中、職場において薬品やエックス線を扱う業務への不安を上司や同僚に相談したところ、職場では制度で決まっていてもいなくても様々な面で配慮頂きましたし、仕事と技術士の受験勉強に四苦八苦する私を見て、夫は私と同じくらい親になるための準備をしてくれました。環境や人に恵まれているといえばそれまでですが、身構えずに自分の不安や希望を伝えてみることが大切だと身をもって実感しました。
平日の育児は夫が大部分をこなしているため、子供が病気の時は私が対応する/休日は夫にリフレッシュする時間を取ってもらうなど、一方に負担が偏らないよう心掛けています。最近家を建て、高校生から続けている茶道を楽しむ和室と家庭菜園ができる庭を設けました。休日は家で過ごすことが増え、平日には取りにくい家族の時間を確保しています。また、1年前からキックボクシング、その流れでブラジリアン柔術も始めました。今では仕事終わりに汗を流すことが楽しくて趣味の一つになっています。
生活の基盤は富山ですが、世界各国に自社の製造拠点があるため、チャンスがあれば海外勤務を経験したいと考えています。また、視野を広げるために、入社以来続けてきた分析に関わる業務とは異なる新たな業務にも挑戦してみたいです。技術士取得後、社内で様々な部門の技術士資格を持つ社員がそれぞれの分野で活躍していることに気づきました。今後、社内技術士の交流の場も作っていければと考えています。結婚・出産を経てしたいことが絞られると思っていましたが、むしろ挑戦したいことが増えてきました。チャンスを逃さずに挑戦していきたいと思います。
女性の技術者が増えてきたとはいえ、男性に比べるとまだまだ少数です。特に、母親となっても技術者を続けている先輩社員は少数精鋭。私にとってはスーパーウーマンに見えてしまい、復職後は孤独感や無力感を感じることがあります。とはいえ、その生き方を選んだのは自分。会社では先輩方の背中を追いつつ、技術士会で知識/交流の幅を広げつつ、家族との時間も自分の時間も大切にする、欲張りですが自分なりのバランスを取りながらキャリアを築いていきたいと考えています。
※注:記事は2024年6月現在のものです。
■資格
技術士 繊維部門
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