男女共同参画推進委員会のホーム世界の国々からアメリカ政治における女性の参画
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樋口 博子さん (アメリカ在住)
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アメリカの女性に「投票権」が認められたのは1920年のこと。この一世紀近くで、アメリカ女性の権利や社会的地位は向上し、女性の意識も大きく変わりました。そして、アメリカの選挙では、男性よりも女性の方が多く投票するようにもなりました。例えば、1980年以降の全てのアメリカ大統領選挙において、女性の投票率が男性よりも上回っています。そして、2016年には、初の女性大統領が誕生するかもしれないとの期待があり、アメリカ社会における「女性の声」は確実に強くなっています。
その一方で、今年、アメリカで興味深い調査結果がでました。1980年以降、選挙における女性票が男性票よりも上回るアメリカでも、女性の政治家の数は依然低く、例えば、州や連邦議会における女性議員の割合は20%〜25%にとどまっているというものでした。現在のアメリカ連邦下院・上院議員535人の内、女性は104人。知事をみると、50州の内、女性知事はたったの6人(12%)。まだまだアメリカ女性にとって、政界進出には厳しい壁があるという現実が示されました。
昨年まで夫はカリフォルニア州の下院議員を務め、来年再出馬すべく選挙活動に励んでいますが、夫の周りにも優秀で指導者としての可能性が十分ある女性が多くいます。夫が「なぜ出馬しないの?」と聞くと、「そりゃ私にも『妻』がいたら政治家になりたいわよ」と、厳しい反応がぴしゃりとくることが多々あります。いくら法整備が進んでも、いくら女性の投票率が増えても、依然として、男性は外で稼ぎ女性は家庭内で子育てという、固定観念的な女性の役割がこのアメリカでも根強くあり、この敷居を越えるには、相当の時間がかかることを痛感します。
組織や家庭での男性・女性双方の意識変化の必要性や、社会進出する女性や社会進出する女性をもつ家庭へのサポート体制の構築も、今もなお必要なのです。女性の選挙権が認められ95年たった今年もWomen’s Equality Dayがメディアなどで取り上げられました。男女共同参画の実現には、アメリカにおいても、まだまだ多くの努力と継続した働きかけが必要なのです。
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<プロフィール>
・国際協力分野にて、日本政府、シンクタンク、国際非営利団体で勤務
1998年、内閣総理大臣主宰「少子化への対応を考える有識者会議」家庭に夢を分科会委員
・博士(国際貢献) 東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学博士課程修了
・アメリカの前カリフォルニア州議会下院議員アル・ムラツチの妻
(原稿受理日:2015.9.11)
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