平成16年度技術士第一次試験合格者歓迎会(東京会場)

  平成16年度技術士第一次試験の合格者数は約2万3千人となり、昨年に続き2万人台を維持した。合格者に対して今後の修習にあたっての研修を行い、進路のガイダンスに資するため技術士第一次試験合格者歓迎会(東京会場、13:0017:00)が平成17226日(土)機械振興会館にて開催された。合格者約200人が参集し、交流会(18:0020:00)では先輩技術士との交流が行われた。

当日の様子を写真で紹介

1.

【特別講演】21世紀の技術像と日本技術士会の役割

日本技術士会会長 清野茂次

【要旨】
 サービスの国際化・グローバル化等に対応した2000年の技術士法改正を受け、科学技術者群全体を対象とした資格として技術士資格が再定義された。21世紀における技術士はあらゆる職域の中で技術者群の中核的なリーダとして、社会的責任を果たしていく。技術士の職業的位置づけは公共の安全確保、環境保全、その他公益に関係の深い業務の責任者であり、一般消費者と科学技術とをつなぐ役割を果たす。
 この中で日本技術士会の役割は、技術士全体を支援し情報発信によって社会的ステータスを向上させるとともに、会員の相互交流と研鑽の支援を図るところにある。そのため公共機関に対して技術士の活用を働きかけ、災害時への技術支援活動などを通じて21世紀型技術士の認識と啓蒙を進めていく。 一次試験合格は過程に過ぎないので、ぜひ最終目標に向かってまい進してほしい。

2.

【講演】技術士の試験制度について
第二次試験の技術部門と選択科目

日本技術士会試験部長  安藤 忠志

【要旨】
 科学技術の変化に対する優れた追従能力とコミュニケーション能力を持つとともに、高い職業倫理を保持していることが、技術者に対する時代の要請となっている。技術士はこうした科学技術に対する専門的な応用能力と高い技術者倫理を備えた技術者であることを国家資格として、認定したものである。 本日お集まりの皆様は,既に修習技術者であり、必要な修習あるいは7年間の実務経験を経て第二次試験にチャレンジできることになる。 

3.

【講演】修習経路と獲得すべき能力

修習技術者支援実行委員会委員長 

岩熊 まき

【要旨】
  第一次試験に合格された皆様は今後、修習を進めていくことになるが,これには次のような3つの経路がある。

    ・経路1 技術士補として登録、同部門技術士のもとで4年の修習経験。

    ・経路2 優れた指導技術者のもとで、4年間の修習を行う。

    ・経路3 7年間の実務経験。

 技術士の定義「科学技術に関する高等の応用能力」における「高等」とは,相対評価ではあるが、誰にでもできるようなものではない技術能力を意味する。また「応用能力」とは,技術的選択肢の中でベストの方法ではなくとも、ベターな方法を考案できる能力を意味している。修習技術者は基本修習課題に関する修習を進め、科学技術に関する知識を実地に適用していただきたい。技術士会では、修習技術者向けに年間を通じて研修行事を開催しており、これに参加することが修習に役立つ。なお修習活動全般について解説したガイドブックが刊行されているので、これ参考として直ちに修習を開始していただきたい。

4.

【パネルディスカッション】二次試験合格への挑戦

 コーディネータ
  青年技術士懇談会     佐藤 嘉憲(応用理学部門)
 パネリスト
  1.実務経験での合格体験  小松 秀次 技術士(建設部門)
  2.技術士補からの合格者  大村 昭三 技術士(応用理学部門)
  3.技術士を目指して     橋本 正明 技術士補(環境部門)
  4.大学の技術士補       井上 晴彦  技術士補(生物工学部門)

 各パネリストからの発表要旨

【テーマ:実務経験での合格体験】小松 秀次技術士(建設部門)
 業務上の必要性からというより、社外評価の獲得とステップアップのために技術士資格に挑戦した。以下の4点をアドバイスしたい。

  1. 論理的な思考
    • 技術課題、解決方法を論理的にまとめる、誰が読んでも理解できるようにすること
  2. 書き癖をつける
    • まず書き、書くことに慣れていく
  3. モチベーションの維持
    • 無理のない計画 をたて、必ず合格するという信念を持つ こと
  4. 行動原則の学習
    • 先輩・同僚と討論・検証

 経験に裏付けられた技術を自分なりに工夫し,これを論文にまとめる練習が必要である。

【テーマ:二次試験合格への挑戦】大村 昭三技術士(応用理学)
 平成10年に第一次試験に合格し、技術士補に登録後、平成15年に第二次試験に合格した。次の2点を心がけた。

  1. 専門技術能力の習得
    • 地層分布モデルを自分なりの理論で組み立てた
    • 技術上の問題発見と解決に努めていった 
  2. (社)日本技術士会の各種行事を利用
    • プレゼンテーションのトレーニングの場として活用

 目標達成のための思考力形成が重要である。日本技術士会の会合ではモチベーションを高められた。

【テーマ:技術士を目指して】橋本 正明技術士補(環境)

 入社10年目を機に自分を振り返り,これまでの実績や経験を形にするため技術士資格に目標を定めることにした。ちょうど制度変革の時期にあたっていたが,一次試験に合格し技術士補登録した。日本技術士会への入会後は,部会や委員会活動等を通して情報収集と仲間作りを心がけている。これから受験する人へのアドバイスとして、以下の3点をあげたい。

  1. モチベーションの維持
    • メリハリをもって進み、他分野技術者と積極的な交流を図る
  2. 専門技術能力の向上
    • 指導技術士のアドバイス を受けながら、小さな目標を立て、それらを順次クリアしていく
  3. 業務遂行能力の獲得
    • 問題解決能力を磨き、多角的な視点をもつこと、情報の収集、取捨選択、吸収消化が重要

 やり遂げようとする自分の強い意思が重要である。また技術士会の各種行事への参加で、今までと違う世界観や目標が見えてきた。

【テーマ:修習期間のモチベーション維持】井上 晴彦技術士補(生物工学)

 大学院での研究,青年技術士懇談会の委員補佐としての活動等の体験談を通して,修習期間のモチベーション維持について紹介。

  1. 技術士を目指した動機
  2. 修習経験の獲得
  3. 指導技術士の探し方
  4. フォローアップ

 技術士補としての活動により,大学での垣根を越える人脈が形成できた。大学院での研究がそのまま修習経験となっている。

 質疑応答(一部)

 

【身近に技術士がいないがどうすればよいか】

 会社の先輩に指導技術者になってもらい、ガイドブックをもとに修習を進めるとよいでしょう。

【技術士会に参加してよかったことは】

 モチベーションの維持や自分の意識を高めるために有効でした。

【合格者へのアドバイス】

(小松)人間のネットワークを作り、他分野の技術者とも交流しましょう。長期的ビジョンが大事です。

(大村)情熱を持ち続けることです。頑張りましょう。

(橋本)昨年のいま頃は不安だらけでしたが、1年後はこの演題に立っている。なせばなる。

(井上)一次試験合格は通過点なので、交流により自分を高めていただきたい。

 

 

  【懇親会】

   安藤副会長の乾杯のもと,先輩技術士との交流の輪が会場内に広がり、懇談を通じて活発な人脈形成が図られた。


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