建設部会行事報告


 行 事   平成22年 3月
 平成22年3月の行事はありません。
 行 事   平成22年 2月 講演会報告
 開催日時   平成22年2月16日 (火) 18時00分〜19時30分
 講演名  東京スカイツリープロジェクト 
 講演者    望月 康紀氏  東武タワースカイツリー株式会社 営業計画部課長
 開催場所   日本工営株式会社 本社ビル3F大会議室
 参加者   70名
報 告 1.ライジングイーストプロジェクトの概要
 2003年12月にワンセグエリア拡大とデジタル放送対応のために放送局在京6社によるプロジェクトが発足し、2004年12月に新タワーの誘致を東武鉄道として取組むことを表明、2006年3月に建設地最終決定を経て、2008年7月に着工となった。2009年4月から塔体鉄骨の組立が開始され、現在約1週間で7.5m上がっている。2011年春頃に上棟となり、12月に竣工予定である。2012年春の開業を予定している。
 東京スカイツリーは足下には商業施設を配する複合型施設である。ここでは東京の新名所・観光施設及び電波塔という2つの役割を担うこととなっている。
 ビジョンは、都市文化創造発信拠点、都市型生活コミュニティー拠点、都市型観光の広域交流拠点として、タワーのある街作りを推進している。立地条件は、鉄道4線が交差する交通の要所である押上にあり、成田空港からも羽田空港からも直結している。墨田区・台東区は古くからの観光エリアであり、浅草には年間2000万人の観光客が訪れる。東京スカイツリーは、初年度の来客者数を540万人と見込んでいる。

                 

         【図−1】 鳥瞰図                 【図−2】 夜景想定図
             (東武鉄道株式会社・東武タワースカイツリー株式会社提供)

2.東京スカイツリーの概要
 タワーの高さは634m、第一展望台までは350m、第二展望台までは450mある。塔体の断面が三角形(底面)〜円形(頂上)と変化し、周辺では見る位置によって斜めにも見える等いろいろな形状を楽しむことができる。
 エレベーターは地上から第一展望台までは40人乗り4基、第一展望台から第二展望台までは40人乗り2基で構成する。塔体に使用される塗料は、高耐久性塗料、原膜形ふっ素樹脂塗料を使用している。

3.最近の取り組み
 昨年11月にタワー高さを610mから634mに設計変更し、世界一の高さを目指すこととなった。また、ライティングデザインは、「粋」と「雅」の2種類を毎日交互に演出することとなっている。
 インフォプラザを建設現場近傍に設置しているが、土曜日には1日に800人を超える来訪者を迎える等一般の方にも関心が高い。

4.工事スケジュール
 タワー組立に、塔高350mまではタワークレーン3基、それ以上はタワークレーン4基を使用することとなっている。本日タワーの高さが300mを超えた。

5.東京スカイツリーの施工
 各工程の写真により施工状況を説明された。基礎には脚部の基礎に深さ50m、基礎部を連結する梁部には35mの連続地中壁杭が施工されている。

6.工事工程
 工事工程表により、工程を説明された。

7.最後に
 講演者の望月課長は、営業担当と言うこともあり、本プロジェクトに対する熱い意気込みが感じられた。質疑は、日照に関する周辺の影響等7名から9件が寄せられ、技術的な質問にも丁寧な回答があり、今後予定される見学会にもつながる活気ある講演会となった。

(建設部会 平山 昌男 記)

 行 事   平成22年 1月 講演会報告
 開催日時   平成22年1月13日 (水) 18時00分〜20時00分
 講演名  橋梁の予防保全型管理への転換 
 講演者    高木 千太郎氏  東京都建設局道路管理部専門副参事(橋梁構造)
 開催場所   日本工営株式会社 本社ビル3F大会議室
 参加者   34名
報 告

1.はじめに
東京都が管理する橋梁は、1965年の東京オリンピック開催時を契機に多数建設され2008年4月現在1247橋の維持管理が発生している。橋梁の寿命を50年と想定すると、20年後には76%の橋梁が一斉に更新時期を迎える。
更新には仮設橋が必要であり、新設に較べ2.7倍程の費用を必要とするため、限られた建設予算では適切に対応をすることが難しくなってきている。

2.東京都の取り組み
東京都が管理する橋梁は国交省や他の地方自治体が管理する橋梁に較べ10年程早く高齢化が進んでおり、いち早く維持管管理の問題にとりかかる必要があった。そこで、学識経験者を交え対策検討を加えた結果、2006年よりアセットマネジメント手法を活用した予防保全型の管理に方針を転換した。
地方分権が進み、自治体は自らの責任と判断で住民の利益最大化を図ることが求められてきており、都市基盤を中長期にわたり戦略的に管理して投資効果を最大化にしていくことがアセットマネジメントの目的である。
東京都では20年以上に渡る点検記録を蓄積しており、データベース化してIT技術を利用した劣化度予測を作成し5段階の健全度評価をおこなっている。適切に維持管理するによる長寿命化と劣化度予測による更新時期の平準化により、従来の対症療法型管理に較べ、今後30年間で約1.1兆円の総事業費縮減と110万トンのCO2削減という環境負荷低減が図られる見通しである。

引続き劣化度予測の精度向上と、PDCAサイクルによる事業の継続を目指すということで講演を終了された。高度成長期の都市基盤整備からストックの時代に変わっていることが感じとれる内容であった。

      
     【写真−1】 講師 高木千太郎氏             【写真−2】 講演会場

(建設部会 浅岡不二雄 記)

 行 事   平成21年 12月 講演会報告
 開催日時   平成21年12月16日 (水) 17時30分〜19時00分
 講演名  成熟社会のインフラストラクチャー
 講演者    中村 英夫氏 (東京都市大学学長
 開催場所   弘済会館 会議室
 報 告 1.必需型のインフラストラクチャーと戦略的な投資事業
 我が国は1965年以降の成長期を迎え、毎年人口が1% ずつ増加してきた。その中で高速道路延長も毎年増加してきた。しかし、1985年以降人口の伸びが小さくなり、2005年以降はその伸びが止まっている。また、経済成長の伸びも小さくなり、ゆるやかな発展・成長を遂げる成熟期を迎えており、社会は持続的な発展期に入ったことを認識することが必要である。
 必需型のインフラストラクチャーとは、基本的な道路、鉄道等の交通施設、水道、灌漑、電力等のエネルギー施設、河川堤防、海岸保全等の防災施設であり、これらの需要は住民の総意に基づき、鋭意進められてきたシビルミニマム的な施設である。しかし、このような事業は慨成に近づいてきており、今後は優先度の決定が主な課題となっていく。また、現在では、老朽化の進行している施設も少なくない。
 戦略的な投資事業とは、地域経済の振興を図り戦略的・総合的に行われるインフラ整備のことで、鹿島の臨海港湾事業などがあげられる。鹿島の場合は港湾建設に最も不適な場所に港湾施設を建設したが、この理由としては建設用地があったこと、および大消費地の首都圏に近いことなどからこの地域の振興をはかることが目的であった。そして石油コンビナート等の施設を立地し、地域の雇用の創出を図るというものであった。
 このような事業は地域の厚生(所得、生活の質)の向上を主眼に行われてきた。
 主な戦略的な投資事業は次のとおりである。
  • 雇用の創出、人口の安定等を目的とした港湾、工業団地、住宅地区等
  • 洪水制御、水資源開発、農業振興、工業開発、村落整備等
 これらの事業で成果をあげたところは少なくない。しかし、今後は、地域主導の総合的企画が必要であり、絶大な効果のある事業は少なくなると考えられる。
 
2.効率改善、環境改善のためのインフラストラクチャー
 効率の改善を目的とするインフラストラクチャーには、高速道路、新幹線、コンテナー港などがあり、環境改善を目指すインフラプロジェクトには下水道設備、ニュータウン、廃棄物処理場などがある。近年、建設事業の多くの関係者たちはこのようなプロジェクトの整備に携わってきたが、建設事業の減少はこれらのプロジェクトがなくなってきたことが原因の一つとしてあげられる。これは、国の財政に依存してきたためである。しかし、今後はこれまで蓄積してきたこれらの施設の改良事業が多くなる。
 
3.高質化のためのインフラ整備
 これまでのインフラ整備の経緯や現状を踏まえ、今後は、環境良化、生活の質向上、豊かな品格づくりのためのインフラづくりが必要である。
 この構想事例として日本橋プロジェクトを紹介する。これは、東京オリンピックの開催に併せて建設された高速道路(橋梁)を地下に移設して景観を改善し、安全で快適な都心空間を構築するプロジェクトである。この高速道路は、計画時に用地買収の必要のない河川空間に建設されたものである。
 日本橋プロジェクトの意義は、日本橋が美しく、周辺が快適で安全な都心であること、日本の都市の代表として歴史・文化を継承し発展する都市であること、地震に強い道路を有する都心地区であること、さらには全国的な都市再生の契機になると考えられたことである。とにかく品格のある街、誇りの持てる都市づくりが大切である。
 もう一つの例として、外濠通りの改良構想がある。これは建設コンサルタンツ協会の有志と一緒になって構想したものである。外濠通りを地下化し、地上部は容積率を高めて立体開発を行い、災害時に安全な都心空間を造ろうとするものである。私は、このプロジェクトに関与して、日本のコンサルタントはいろいろなプロジェクトを構想するが、自分たちで考え事業化していくということに欠けていると感じた。
 高質化のためのインフラ整備としては、環境整備、都市再開発、景観改善事業などがあげられるが、評価は人々の価値観に依存する。したがって、どうやって国民的な合意を形成していくかが重要である。高質化事業は日本では緒についたばかりであるが、ヨーロッパなどでは既に行われている。都市部の事業については、官民の共同で事業を推進していくことが主となる。
 マズローの欲求5段階説があるが、この5段階とは、生理的、安全、帰属、尊敬、自己実現と個人の欲求が上がっていく。社会の要求も同じように経済的豊かさから安全・安心、そして快適さ、品格と要求レベルが上がっていく。
 インフラ整備も同じである。従来の効率化のためのインフラ整備から脱却して、新しい段階に入ってきている。たとえば、日本の工業製品は性能の良さ、高い信頼性、美しいデザインで世界のマーケットで強く、ジャパンブランドとして確立されている。工業製品と同じように東京の都市がジャパンブランドとして誇れるかなど、国土やインフラも成熟社会のインフラストラクチャーとして新しい段階に入ってきている。

4.維持補修、更新の事業
 これまで蓄積してきた施設に対して、物理的に老朽化、または社会的に陳腐化した施設の補修あるいは更新および耐震事業をどうやって進めていくかが大切である。この背景には、物理的耐用年数に達する施設が急増していることがある。既存のインフラの量としては、たとえば道路は100万kmを超えており、支間15m以上の橋梁は10数万橋あるとされている。補修では対応できない施設は、大規模更新や取り替えを行っていく必要がある。更新に伴って施設の高質化が図れる。なお、更新を必要とする事業は、周辺地域の再開発を伴うことが多い。
 維持補修や更新にあたっては、膨大な量の既存インフラの台帳を作成し、建設・補修の履歴を残すことが重要である。

5.新事業に必要なインフラ整備と災害復旧の事業
 今後の事業の推進にあたっては、新技術の導入、新規の社会的ニーズなどに伴うインフラ整備が必要である。その一つの例として今盛んに議論されているのは森林の再生事業である。日本の木材は輸入品の増加により国内産の木材が使われなくなっているのが現状であり、日本の木材産地の森林が荒れている。この森林再生事業に建設業の持っている能力(機械、労働力)を活用することが必要である。ヨーロッパの森林国(フィンランドやドイツなど)と比べてこの活用が圧倒的に低い。建設業と林業を結びつけて地方の建設業を活性化させることが必要である。また、風力発電(洋上の風力発電)は原子力発電と比べて大規模ではないが、日本全国でエネルギーを確保するという観点から建設業も一躍を担えるのではないかと考える。
 地域分散で個々は小規模な建設事業であるが、全体では相当の事業量が見込まれる事業としては、たとえば自然エネルギーを利用した小規模な水力発電があげられる。その時、重要なことは、施設の立地選定である。
 今後、我が国においては、地震、洪水、高潮、噴火等による被害の復旧のための事業が増える。今後とも予測不能な災害が発生するが、世界の先進国で大きな災害を受けるのは日本しかないであろう。予測不能な災害が発生したときに、迅速な復旧事業を行えるようにすることが必要である。

6.むすび
 国土づくりの事業は社会の成熟化につれて、必需型、戦略型、効率化型、向上型と変容してきた。今こそ、社会のニーズに合った事業の創出が必要で、皆で考えていかなければならない。たとえば、札幌の創成川の整備事業があげられる。これは、創成川という人口河川に外濠通りの構想と同じような整備をしている事業であるが、こういう事業は専門家が考えなければならない。私は、そういう事業を発想するのがコンサルタントの仕事であると考える。今までコンサルタントはこういう仕事をほとんどしてこなかった。これからのコンサルタントは、自分たちで考え、新たな事業を見出していくのが仕事であると思っている。もう一つ認識しなければならないのは、これまで蓄積されてきたインフラの運用が新規投資より重要になってくるということである。新規投資の組織体制をどう構築するかも重要であるが、今後は運用(オペレーション)が新規投資より重要になる時代に入っており、その方向に軸足を移すことも大切であると考える。

 行 事   平成21年 11月 見学会報告
 日 時  平成21年 11月 26日(木) 14時00分〜17時00分
 見学会  東急東横線渋谷〜代官山間地下化工事
 見学先  都市高速鉄道東京急行電鉄東横線渋谷駅〜代官山駅間
 説明者  東京急行電鉄椛謌鼾H事事務所 山崎主事、堀主事
 メトロ開発梶@        友原技術監理員
 参加者   18名
報 告
1.はじめに
 見学会当日は、地下鉄副都心線正面改札口に集合し、参加者18名の受付を終了し、東急電鉄鰍フ山崎主事から建設現場まで案内していただきました。

2.工事概要説明
 現在建設中の新・渋谷駅工事現場まで徒歩で移動し、工事用エレベーターに分乗して、地下にあるプレゼンテーションルームに到着しました。そこで山崎主事から東急東横線渋谷〜代官山間地下化工事の概要をパワーポイントで約30分説明を受けました。
 事業内容としては、東急東横線の渋谷駅から代官山駅までの約1.4km区間を地下化し、平成20年6月に開業した都市高速鉄道第13号線(東京メトロ副都心線)と渋谷駅で相互直通運転を行うものです。
 この事業によって東武東上線・西武池袋線から東京メトロ有楽町線・副都心線を経て、東急東横線およびみなとみらい線までがひとつの路線として結ばれ、首都圏の広域的な鉄道ネットワークを形成するといった内容の説明がありました。
 次に地下化計画区間約1.4kmの工事内容について、シールドトンネル部、箱型トンネル部そして堀割部の3工区に分けて工事の特徴などについて説明を受けました。特にシールドトンネルは、鉄道複線断面形状を包括する2連矩形断面を掘削するためアポロカッター工法という特殊なカッター機構を持つシールドマシンを採用しており、カッター駆動を動画で表現するなど大変わかりやすい説明を受けました。

   
   【写真−1】 山崎主査による概要説明           【写真−2】 シールドマシン(パンフレットより)

3.工事現場見学
 説明をひと通り伺った後、いよいよトンネル内に入り、セグメントによって仕上がったトンネル内部を通り、シールドマシンの真後ろまで接近して設備類を見学しました。
 その後地上に出て、現東横線高架橋沿いに移動しながら、トンネル通過に伴う高架橋補強工事の実施状況を見て、到達立坑そしてJR交差部の工事箇所を通り、代官山駅周辺の改良工事を眺望しました。
 現場見学を終えて、東急電鉄工事事務所会議室に集合し、質疑応答を行いました。質問は事業内容から施工方法に至るまで多岐にわたり、大変活発な討議が行われました。

   
  【写真−3】 シールドトンネル発進立坑         【写真−4】シールドトンネル坑内

  【写真−5】 到達立坑内

4.おわりに
 今回の見学会は、首都圏における大規模な鉄道都市土木の現場ということで、営業線の管理また周辺地権者、そして往来の一般者の方々の安全を確保しつつ、プロジェクトを遂行するというとても貴重な見学会でした。
 工事説明ならびに現場立会い等に携わっていただいた東京急行電鉄鰍ネらびに工事関係者の方々に感謝いたします。
 また、見学会に参加者いただいた方々大変お疲れ様でした。
(建設部会 佐藤 栄徳 記)

 行 事   平成21年 10月 講演会報告
 開催日時   平成21年10月21日 (水) 18時〜19時35分
 講演名  21世紀を見据えた水力発電の開発可能性について  
 講演者    岡本 政明氏 (株式会社 ニュージェック 常務執行役員
 開催場所   日本工営株式会社 本社ビル3F大会議室
 参加者   37名
報 告   
1.講演の概要
  我国の電力を将来枯渇する恐れのある化石燃料に頼らず、現在の原子力と新エネルギーのわずかなる発電量のアップと水力発電量の大幅なるアップでまかなえるか否かという将来の問題に対し、水力については、建設中のダムを含めた既存のダムについて大規模とならない嵩上げ等の工事で現在の倍以上の発電が開発可能であるということを検証された内容が主体の講演であった。

2.既存ダムの改造
  現在、日本国内には、建設中のものを含め1392のダムがあるが、この内、本体の構造、貯水池の容量・面積等の詳細なデータが確実にあるものは、1024とのことである。
  この1024のダムについて、ダムの堤頂部分を改造し、余裕高部分にも貯水させる。あるいは堤体を補強嵩上げして貯水させる等、ダムの小規模の改良により水面を多少アップさせることによりダムの貯水容量が大きく増加することに着目し、現存するデータをベースにして各ダムについて増加可能量の数値的な解明を試み、個々のダムについて、上流の道路・鉄道等のインフラに影響を与えないという条件等を加味し、改造による貯水容量・発電量の増加を算出した。
  その結果、上流から下流まで階段状に発電所が既存するような一級河川(A類型河川と称している)については最上流のダムにしか貯水容量の増加は期待出来ないが、A類型以外の一級河川(B類型河川、C類型河川と称している)及びニ級河川では、ダムの堤頂の改造やわずかな嵩上げに貯水容量の大幅なアップが可能となり、これにより発電量のアップが可能になる。

3.試算結果
  試算では2005年の国内の総水力発電量は900億kwh/年であるが、これが2100年までには1900億kwh/年とすることが可能であり、この間に2005年に6000億kwh/年の化石燃料による総発電量が減少し2100年にゼロになるとすれば、2005年の国内の総発電量10000億kwh/年が6000億kwh/年に減少するが、この内1900億−900億=1000億kwh/年は、既存ダムの小規模な改造で可能であるという提言であった


4.まとめ
  この様な将来起きるであろう国家的な問題を先行して提言、解決していくのも技術者の重要なる使命ではないかと啓発された。講演後、講師と活発な質疑応答がなされた。


  【写真−1】 講演の状況

  【写真−2】 講演の状況(聴講者)



(建設部会 吉田 圭佑 記)

 行 事   平成21年 9月 講演会報告
 開催日時   平成21年 5月22日 (金) 18時〜19時30分
 講演名  自然にやさしい太陽光発電  
 講演者    立石 輝夫氏 (三菱重工業株式会社 原動機事業本部 再生エネルギー事業部
 開催場所   日本技術士会葺手第二ビルA・B会議室
 参加者   43名
報 告 1.太陽光発電市場の導入情勢
 政府は6月10日に、2020年の温室効果ガス排出量を2005年比15%減を発表し(注:鳩山首相は9月22日の国連総会で1990年比で2020年までに25%の削減を宣言また経済危機対策の一環として「低炭素革命」として省エネとなる自動車、家電、自然エネルギー発電などを普及促進を実施する方針である。
 
この中で太陽光発電は、昼間の電力需要ピークを緩和し、温室効果ガス排出量を削減できるなどの効果により、地球温暖化防止が期待されている。
 太陽光発電は、08年7月の「低炭素社会づくり行動計画」により累計導入量目標を2020年に現状の10倍に設定され、太陽光発電の普及を後押しする「エネルギー供給構造高度化法」(太陽光発電の新たな買取制度導入を盛り込んだ法案)が09年7月に成立し、「住宅用太陽光発電システム導入支援補助金」の復活などの施策が次々と発表されている。

 【写真−1】 太陽光発電の事例

2.太陽光発電とは
(1) 太陽光発電の導入メリット
  • 化石燃料を使わないためCOを排出しないクリーンなエネルギーのため地球環境への負荷を低減でき、地球温暖化抑制に貢献できる。
  • 発電電力を自家消費する事で購入電力を削減でき、節電マインドの向上にも役立つ。
  • 環境貢献に積極的に取り組む企業としてイメージアップを図れ、地域住民への啓発にも役立つ。
  • 環境教育にも活用できる。
(2) 太陽電池の発電原理
  • 光が層に当るとSiが正孔と電子に分かれる。(光電変換)
  • p,n層で発生した電位差によって電子はn層へ,正孔はp層移動し,n層は電子がp層には正孔がたまる。
  • 外部回路をつなぐと電子は回路を伝わり発電して,n層からp層へ流れて正孔と結合して消滅する。
図−1】 太陽光発電の原理

(3) 太陽電池の種類と特徴
  • 太陽電池はシリコン系と化合物系があるが、化合物系は重金属が含まれるため日本ではシリコン系がほとんどである。シリコン系は結晶型と薄膜型とに分類されている。
種類 変換効率 年間発電量 製造
エネルギー
製造エネルギー
回収年数
設置
面積
動作
電圧
製造元
結晶型 10〜14% 100% 多い 約2.2年 小さい <36V シャープ、京セラ、三菱電機、三洋電機ほか
薄膜型 アモルファス型 6.5% 110% 少ない 約1.7年 大きい 100V 三菱重工、カネカほか
微結晶タンデム型 8.4% 105% 少ない 1.8〜2.0年 大きい

 (4) 太陽光発電システム構成

太陽光発電システムには、発電した電気を利用するためには以下のシステムが必要である。@太陽電池モジュール A信号変換箱 Bパワーコンディショナ Cデータ収集装置 C発電表示装置 D分電盤 など

(5) 太陽光発電の主な設置事例

設置場所 用途 運転開始 発電容量
スペイン マドリッド郊外 発電事業用 2008年9月 1,700kw
大韓民国 栄州 発電事業用 2008年9月 3,000kw
長崎県 ハウステンボス 園内補助電源 2009年3月 900kw
長崎県 諫早市 補助電源 2009年4月 1,330kw

3.さいごに
 太陽光発電の特徴や原理の説明に大量の写真や図表が使われため、この分野の専門家にとっては詳細の理解に、また非専門家にとっても理解しやすいプレゼンテーションであった。質疑応答では、基本的な事項、設置コストの回収期間など、名から質問があり、それらに一つずつ丁寧に答えて頂き、活気のある中での閉会となった。
(建設部会 村井 洋行 記)

 行 事   平成21年 8月 見学会報告
 日 時  平成21年 8月 7日(金) 13時30分〜15時20分
 見学会  羽田空港拡張 D滑走路建設工事
 見学先  羽田空港D滑走路建設工事現場
 説明者  関東地方整備局 東京空港整備事務所 吉田課長
 参加者   16名
 報 告 1.はじめに
 本見学会は、昨年10月に実施しました講演会「演題:羽田空港拡張工事について」において、現地を見学したいとの要望があったことや講演会講師の松永企画官から快諾を得たことから、関東地方整備局東京空港整備事務所の担当窓口と交渉を重ね、この見学会の実現に至ったものです。
 当日は、羽田空港第2旅客ターミナルビル到着ロビー(出会いのひろば)に集合し、全参加者16名がそれぞれ4台のタクシーに分乗し、目的地である「D滑走路展望台」へは予定時間より少し早めに到着しました。

2.工事概要説明(13:30〜14:00)
  13時30分から吉田課長(桟橋担当)より、羽田空港D滑走路建設工事についてパワーポイントを基に約30分説明をして頂きました。
 先ず、羽田空港は、年間乗降客数約6,700万人、取扱貨物量約71万トン、離着陸回数約30.3万回規模の国際空港で、その処理能力は既に限界を迎え発着容量の制約解消が急務であり、そのために再拡張事業の早期実施が必要であると、事業の背景について説明がありました。また、今回見学する桟橋部(ジャケット式)の構造、規模、施工方法、工事工程等についての概要の説明がありました。

  【写真−1】 吉田課長による概要説明

【桟橋規模】
・幅:520m 長さ:1,100m、面積:約52ha、水深:14〜19m、使用鋼材重量:約35万トン
【ジャケット構造】
・1基:幅63m×奥行45m×高32m、重量約1,300トン/基、総基数:198基
【施工方法】
・上部ジャケット(3箇所)、下部ジャケット(2箇所)を製作、海上輸送し、千葉ヤードにおいて上下部ジャケットを組立て一体化後、所定位置に運搬し専用クレーンにて据付
【工事工程】
 ・桟橋工事:平成22年 8月完成予定
 ・D滑走路:平成22年10月運用開始予定

3. D滑走路(桟橋工区)の見学(14:00〜15:10)
工事概要の説明終了後、管理桟橋に徒歩で移動し監督船(右写真)に乗船し(約6〜7分)D滑走路桟橋工区に到着。D滑走路桟橋工区は、滑走路全長3,120mのうち1,100mを占め、T工区、U工区、接続部工区の3工区に分けられ工事が進められています。

 
         【写真−2】 監督船                      【写真−3】 桟橋工区遠景

 
 【写真−4】 滑走路床版を支持する鋼管杭(φ1.6m)       【写真−5】 一体化ジャケット据付専用クレーン

 
  【写真−6】 UFC床版工(外周部)                  【写真−7】 PC床版工(滑走路・誘導路部)

4.おわりに
当日は、風波浪が高く危険なため予定していた海上見学は中止となりましたが、スケールの大きい工事現場を見学できました。また、貴重な時間を割いて頂きました国土交通省東京空港整備事務所吉田課長を始め関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。
(建設部会 宮下紀代則 記)

 行 事   平成21年 7月 見学会報告
 日 時  平成21年 7月14日(火) 10時20分〜16時30分
 見学会  「つくば3研究所」水理実験施設見学
 見学先  パシフィックコンサルタンツ(株)筑波実験場、(株)建設技術研究所 研究センターつくば、日本工営(株)中央研究所  
 参加者    37名
 報 告  見学会当日は、梅雨明けの晴天に恵まれ、屋外の実験施設見学には最良の日となりました。
 TXつくば駅の集合場所に37名が集結し、つくば3研究所の見学がスタートしました。建設コンサルタントの「つくば3研究所」は、業務受注にもとづいて模型を作成し、水理実験等を行っているものがほとんどです。
 よって、業務に携わる発注者ならびに委員会の委員等、特定の方々のみが足を踏み入れている場所であり、部外者が個別見学することは皆無と言っても過言ではありません。そのような背景から、「つくば3研究所」のご協力をいただいて、今回の見学会が実現できたことは、非常に有意義であったと言えます。
 見学会は、TXつくば駅に10:20集合にはじまり、11時にパシフィックコンサルタント(株)総合研究所筑波実験場に到着し、会議室にて浜口実験場長より実験場施設の全体概要の説明を受けてから、下記の水理実験施設を見学しました。見学後の昼食時での質疑応答も活発に行われました。以下に見学した主な実験施設を列挙します。

○1級河川の捷水路(分水路)の水理模型実験
○橋脚による河床洗掘の水理模型実験(写真1)
○都市河川調節地の水理模型実験

  【写真−1】 見学した水理実験施設(1)

続いて、13時過ぎには(株)建設技術研究所 研究センターつくばに到着し、会議室にて最上谷水理センター次長より研究センターつくば全体概要の説明(写真2)を受けた後、下記の水理実験施設を見学しました。

○河川「バイパストンネル案」の水理模型実験
○多目的のロックフィルダムの洪水吐き形状の水理模型実験
○海岸部の「放流水による局部洗掘が発生した」水理現象の再現

  【写真−2】 水理実験施設の概要説明

引き続き最後の見学施設として、14:30日本工営(株)中央研究所に到着し、会議室にて田中中央研究所長より全体概要説明ならびに開発技術の紹介ビデオを見てから、下記の実験施設を見学しました。

○地盤模型実験;遠心力装置
○長大伏越しの段波ならびに下水道の簡易合流改善(写真3)の水理模型実験

  【写真−3】 見学した水理実験施設(2)


以上をもって、見学会は全て終了し、定刻16:30にTXつくば駅にて解散となりました。
見学会全般を通して感じたことですが、普段見学する機会がほとんどない実験施設のため、参加者のまなざしが真剣で、かつ、鋭い質問が多かったことなどがとても印象に残っています。皆様、お疲れ様でした。

  【写真−4】 見学会参加者


(建設部会 小澤孝三 記)
 行 事   平成21年 6月
  6月の建設部会行事はありません
 行 事   平成21年 5月 講演会報告
 開催日時   平成21年 5月22日 (金) 18時〜19時30分
 講演名  コンクリート構造物の劣化と対策  
 講演者    石橋 忠良氏 (東日本旅客鉄道株式会社 構造技術センター所長)
 開催場所   日本技術士会葺手第二ビルC・D会議室
 参加者   42名
 報  告   5月講演会は、土木学会・コンクリ−ト工学会等の委員、鉄道ACT研究会の会長を歴任された東日本旅客鉄道轄\造技術センタ−所長の石橋忠良氏にお願いし、「コンクリ-ト構造物の劣化と対策」との演題で、JR東日本のコンクリ-ト構造物について劣化とその対策ということで、多くの事例を基にご講演いただいた。
  冒頭、JR東日本の在来線とトンネルについて、1892年から100年分の使用材料別数量変遷の説明があった。橋梁は、初期1890年代に英国から導入された鉄桁から始まり、1910年代からのRC桁、1960年代からPC桁が使われ始めた。トンネルは、1890年代からのレンガ゙に始まり、1920年代から無筋コンンクリ-ト、1970年代から都市トンネルにRCが使われ始めたとのことである。また、新幹線では環境面で圧倒的にRC構造物が多いとのことである。
  次に8工種の劣化事例の説明があった。高架橋のコンクリ−ト片の剥落では、原因の内、44%が鉄筋腐食に伴う膨張圧よるものであり、鉄筋かぶり20mm以下、中性化残り10mm以下で鉄筋腐食によるコンクリ−ト片の剥落が多い。また、雨に当たる部位では中性化残り10mmと、当たらない部位ではかぶり5mm以下程度の部位でのみコンクリ−ト片剥落が生じている。対策工法は、応急対策(叩き落し等)と恒久対策(表面被覆工等)があり、補修工法として10年間の保証が必要であり、試験施工を実施している。トンネルのコンクリ−トは一般に無筋コンクリ−トであり、鉄筋腐食による剥落はなく、多くは施工時の初期欠陥が原因であることを福岡トンネルの事例を基に説明があった。また、天井部の空隙に対するモルタル充填、水位の高いトンネルの路盤の墳泥により、軌道が沈下する現象に対する対策(桁構造化スラブ軌道工法)が示された。その他、アルカリ骨材反応、塩害、桁座損傷、PC鋼棒破断、鉄筋の圧接、耐震等に関する損傷事例とその対策に関する説明があった。この中で、鉄筋の圧接の目視検査で、外観での施工の合否判定ができる熱間押抜き工法(圧接のこぶがまだ熱いうちに削り取る工法)という興味深い説明があった。
  最後に多くの経年した構造物を見て、2年に1度の定期的な目視検査を通して、悪い部位をみつけ対処することで多くの構造物は使い続けることが出来るとの考えであり、今後重要な対策は、PCグラウトの不良による鋼材の腐食破断に対する対策、鋼材の疲労破断に対する予知や対策研究とのことである。今回の講演は多くの事例を基に、判り易い説明が行われ、参加者にとって大変有意義な講演会であった。

    
 
   【写真−1】 石橋 忠良氏                     【写真−2】 講演の状況

(建設部会 田中 博 記)
 行 事   平成21年 4月 見学会報告
 日 時  平成21年 4月23日(木) 14時00分〜16時00分
 見学会  新宿南口地区基盤整備事業現場見学会
 見学先  新宿駅南口地区基盤整備事業工事現場
 説明者   稲垣 孝 氏 (国土交通省関東地方整備局東京国道事務所 事業対策官)
 参加者   21名
 報  告 1.概要説明
  パワーポイント及びパンフレットを基に説明していただいた。
  全国最大級のターミナル駅である新宿駅は1日当たりの乗降客が320万人と全国一であり、その周辺は商業・産業・文化の中心として躍動している。一方、駅周辺では以下の都市的問題を抱えている。

○ 新宿駅南口を通る一般国道20号(甲州街道)は利用客を待つタクシーの行列や路上駐車があふれ、慢性的な交通渋滞が発生している。
○ 新宿跨線橋は架設80有余年が経過しており、老朽化に伴う耐震・ 時の安全性低下が懸念されている。
○歩道が狭いことで歩行者がスムーズにすれ違うことも困難な状況となっている。
○ 駅周辺の高速バス関連施設は分散しており、他の交通機関との乗り換え機能が乏しい。
  
 このような現状に対応すべく、新宿南口地区基盤整備事業では以下のような事業を実施し、問題解決に向けた取り組みが進められている。
○新宿跨線橋の架け替えを実施し、道路・歩道の拡幅による交通機能の回復や耐震・ 時の安全性を向上。
○ 甲州街道南側の線路上を活用し、歩行者広場や高速バス・タクシー乗り場などを整備し、交通結節点機能を強化。
○地下鉄13号線新駅から新宿駅とを結ぶ地下歩道をつくり、安心・安全な歩行空間の創出。

  

  【写真−1】 新宿交通結節点整備完成イメージ      【写真−2】 新宿南口地区基盤整備 事業位置

  【写真−3】 事業対策官による概要説明


2.交通結節点施設(人工地盤)施工現場見学
  新宿南口地区基盤整備事業の柱の一つであるのが甲州街道南側の線路上を活用して、約1.47ヘクタールの人工地盤を創り出し、この人工地盤上に歩行者広場や交通施設等を整備する計画である。今回はこの交通結節点整備において人工地盤架設現場を見学させて頂いた。線路上に架設するということから、鉄道を停めて作業を行うことは困難であり、作業はJR新宿駅の終電後から始発が運行するまでの深夜に集中して行われ、実質作業は1日約2.5時間ほどしか行えないという厳しい作業工程の中進められる。人工地盤は現在、計画の半分ほど架設されており、人工地盤上を実際に歩いて見学させて頂いたり、人工地盤地下部の掘削作業を見学することができた。

  

    【写真−4】 人工地盤架設現場                【写真−5】 人工地盤地下部掘削現場
 
3.歩行者地下通路工事現場見学
  地下鉄13号線新駅から新宿駅とを結ぶ地下歩道整備では、アンダーピニング工法により取付高架橋の機能を維持しながら、高架橋下に構造物(地下歩道)をシールドマシンにより掘削していく計画である。現場見学では坑内を見学させて頂いた。シールドによる掘削は終了しており、内装工事に取り掛かっている最中であった。



    【写真−6】 地下歩道坑内の様子

  本見学会では列車の運行を維持しながら線路上に人工地盤を施工、また取付高架橋の機能を維持しつつ高架橋下を掘削していくなど、困難かつ特殊な施工現場を見学させて頂いた。
  貴重な時間を割いて頂いた国土交通省東京国道事務所の稲垣事業対策官及び関係者の方々に心からお礼申し上げます。

 (建設部会 澤田 賢太郎 記)