建設部会行事報告

    

 

 

 平成21年 1月 講演会報告

  日 時:

 平成21年1月22日(木) 18時00分〜19時30分

 演 題:

「空間と構造」―私にとってのアーキニアリング・デザインー

 講演者:

  
 社団法人 日本建築学会 会長 斎藤公男氏

  

会 場:

 日本工営株式会社 3階 会議室

参加者

 31名

 報 告:

 

はじめに

(社)日本建築学会の斎藤会長は1963年日本大学理工学部修士課程を終了された後、日本大学理工学部で教鞭に立たれ、現在は日本大学の名誉教授でおられます。氏の功績は建築におけるたくさんの大空間建築の作品です。本日は174枚のスライドを使って作品紹介や大空間構造の設計、施工法など氏の建築に対する想いを語っていただきました。

内 容

建築の要素は「科学」、「技術」、「工学」、「芸術」の要素を基に成立している。

レオナルド・ダヴィンチやガリレオは偉大であったが現在の技術から見ると基礎の域にある。過去には設計の意図を見落とし、施工段階の変更で事故に至ったものもある。ハムラビ法典では倫理について厳しく規定しており過去には耐震偽装などの事件は起こらなかった。

2007年に(社)建築学会会長に就任し「建築界を元気に」のキャッチフレーズでがんばっている。そのひとつの活動が「Archi-Neering Design展」(略称:AND展)で建築において構造とデザインの融合を促した。副題は「模型で楽しむ世界の建築」でたくさんの模型を展示し、見て、中には触って楽しんでもらった。20081017日から28日の開催期間中、約6000人の方が入場した。AND展ではアーチ橋、ローマの水道橋などの「橋のデザイン」、薬師寺西塔などの古典に見る「耐震、耐風のデザイン」、ケーブルなどの引張材を組み合わせたハイブリッド構造などの「甦生と進化のテクノロジー」などのテーマで展示した。

ハイブリッド構造のひとつが張弦梁構造である。圧縮力を担うアーチ材と引張力を担うケーブルを組み合わせたものでグリーンドーム前橋、日大理工ホールなどの作品がある。ほかにテンセグリティ構造がある。ロープ、ケーブルなどの引張材を主体とした構造で天城ドームはそのひとつである。

大空間建築は力学的な合理性がないと成立しないが構造体そのものが建築であり、同時に美しくないといけない。構造と芸術の融合が不可欠である。

 


 

【写真-1】 講演される齋藤氏     【写真-2】 講演会の状況

 

(建設部会 高浜良弘 記)

 

 

 

 平成20年 12月 講演会報告

  日 時:

 平成20年12月18日(木) 16時30分〜18時00分

 演 題:

地球温暖化防止に向けた土木技術者の役割

 講演者:

  
 前 土木学会長  石井 弓夫氏

  (株)建設技術研究所 代表取締役会長

会 場:

 弘済会館

参加者

 51名

 報 告:

 

はじめに

インフラは人々に「安全、便利、良い環境(Safety,Convenience,Environment)」、を提供するものであり、人々の生活にとってなくてはならないものである。現在、地球温暖化問題が話題となっており、この問題は人類に歴史的な災害をもたらす。予想される災害を防ぎあるいはそれに適応するのがインフラの役割であり、土木技術者は先頭に立って温暖化対策に取り組む必要がある。今回は温暖化問題や災害に詳しい褐嚼ン技術研究所会長、前土木学会会長の石井弓夫氏ご講演頂きました。

1.災害とは何か

災害は自然現象や人為を引き金とした社会現象であり、産業革命以降の自然の改変や、CO2などのGHG(グリーンハウスガス)による気候変動、地球温暖化など土木による自然改造、開発など人間の力が自然の容量と比べ大きくなり、自然を変化させ災害をもたらすようになってきた。

原因として気象・地震等の自然災害と気候変動やテロ・戦争等の人為災害に分けられ、被害の種類として大きく直接被害(死傷者、家屋損壊、ビル・工場被害、資産滅失、社会不安と混乱)と間接被害(通勤不能・情報システム停止・被災地区からの物流停止による企業活動停止、得意先を奪われるなどビジネスチャンスの喪失、情報ネットワークと行政機能の停止)に分類できるが、近年では間接被害が大きくなってきている。

2.インフラと気候変動

環境省地球温暖化影響・適応研究委員会報告によると日本の平均気温上昇は最大で4.7℃の報告があり、災害危険度は増大してきており、建設産業(製造業のセメントなども含み)が自ら排出するCO?は総量の42.7%であり、GHGの低減と災害を防ぐ手段が求められている。

国土交通省によると降水量の増大、洪水の増大、土石流の激化、高潮及び海岸侵食の増大、渇水リスクの増大、河川環境の変化など気候災害安全度の低下が懸念されている。

3.温暖化災害防止への土木技術者の貢献

GHG排出緩和策(Mitigation)として、構造物的対策としてハード対策(エネルギー供給方法改善、CO2削減、炭素固定)、ソフト対策(総合アセットマネジメント、CDM、公共調達への反映、国際協力等)が挙げられる。しかし現実的で効果的な手段は適応策であり、海面上昇対策、土地利用の変更、異常気象・気候変化対策といった構造物的対策(ハード対策)、都市環境整備、国際協力、治水ソフト対策、治水を河川事業全体に広げた統合流域管理などソフト施策の適応策の推進が重要となってくる。

土木学会等においても地球温暖化対策特別委員会など、地球温暖化防止に向けての研究・活動が行われており、土木技術者は官、学、民一体となって、推進していかなければならない。

4.結論

気候変動に対応するには緩和策と適応策を取るとともに低炭素社会の実現を図らなければならない。気候変動がもたらす危機に備えるために、変動の予測精度の向上、緩和・適応能力の向上を国際、国内、地方レベルで図らなければならない。低炭素社会の実現を促進するために、個人、企業、各国それぞれのレベルでの経済的、政治的手段を取るべきである。

技術者の取るべき行動として、災害は社会現象であり、防災は広い視野で当たらねばならず、社会に関する不断の勉強が不可欠である。気候変動は人類の危機と認識し、気候変動をめぐる政治・経済情報を敏感にキャッチし、技術者として低炭素社会の実現を促進するための業務を遂行すべきである。緩和策、適応策はまさにコンサルタント業務である。優れた成果を挙げることが強く望まれる。

最後に

災害は自然災害であるが、近年は人為的開発やCO?問題で発生していることを解説頂き、またそれへの対応策・適応策についてご指導頂き、特に適応策の検討・実施が今後は重要になることを説いて頂きました。

講演会の最後にCO2削減の地球温暖化防止への寄与や途上国と先進国の役割など多くの質問に対してCO2削減の計画、設計、施工時の取り組みの計画など、今度土木関係技術者の方向についても示唆して頂き、たいへん貴重な講演会となりました。

 


 

【写真-1】 講演される石井氏     【写真-2】 講演会の状況

 

(建設部会 平川 倫昭記)

 

 

 

 平成20年 11月 講演会報告

  日 時:

 平成20年11月11日(火) 13時00分〜16時00分

 見学先:

小田急線複々線化工事現場(小田急線世田谷代田駅)

 説明者:

  小田急電鉄株式会社 複々線建設部 下北沢事務所 村松副所長ほか

参加者

 27名

 報 告:

 

1.概要説明

 パワーポイントとパンフレットを基に説明していただいた。

小田急電鉄株式会社では、朝と夕方の通勤時間帯の混雑に対して、列車の増発や長編成果を行ってきた。運輸力増強対策によって混雑率は若干緩和されたものの、依然として朝のラッシュピーク時間帯においては、過密ダイヤによる所要時間の増大や、混雑率が200%を超えるという問題を抱えている。現状の複線ではこれ以上の列車増発や、駅に隣接する踏切などによってホームの延伸が困難であることから、編成を伸ばすことも出来ない状況である。

このような現状を抜本的に改善し、輸送サービスの向上を実現するために、上下線を各2本ずつ、計4本の線路にする「複々線化事業」を東北沢〜和泉多摩川区間(10.4km)で実施している。この、複々線化が完成すると、朝のラッシュピーク時間帯の列車増発が可能となり、混雑率も新聞や雑誌を楽に読みながら通勤できる程度(混雑率160%程度)まで緩和される見通しである。すでに、複々線化は世田谷代田〜和泉多摩川間(8.8km)で完成しており、現在は、残る東北沢〜世田谷代田間1.6km)の工事を進めている。(図―1)


【図―1】東北沢〜和泉多摩川(10.4km)区間の複々線化の状況


2.地下坑内見学

東北沢〜世田谷代田間は、地上での用地買収が困難であるため、また、ラッシュピーク時における長時間の踏切遮断を避けるために線路の地中化を行っている。その中で、今回見学させていただくのはシールド工法により線路の地中化を行っている世田谷代田駅〜下北沢駅区間(第3工区)と、開削工法で箱型トンネルを施工する世田谷代田駅区間(第4工区)である。

第3工区は、世田谷代田駅付近の発進立坑からシールドマシンを新宿方面に発進させ、小田急小田原線の直下を掘り進み、下北沢駅直下を通過後、回転立坑で反転して小田原方向に向かって掘り進むシールド区間である。シールドマシンは直径は約8mの泥水式シールドであり、工事延長は645m(片道)である。土被り10.0m〜17.4mで営業線下を施工する厳しい条件下の工事であり、地表面への影響を避けるため、剛性の強いスチールセグメントとダクタイルセグメントを採用している。今回は、世田谷代田駅付近の発進立坑と掘進中のシールドマシン内部を見学させていただいた。(写真―1、2)



【写真−1】立坑から見たシールドトンネル内の様子    【写真−2】シールドマシン内部の様子

第4工区は、世田谷代田駅の直下を開削工法により箱型トンネルを施工する区間である。第3工区同様、営業線の直下での施工となるため、ダクタイル鋳鉄製の部材で箱型トンネルを形成している。(写真―3)


【写真−3】箱型トンネル内部の様子

掘進中のシールド内部を見学するという機会は少なく、有意義な見学会であった。

最後に、貴重な時間を割いて案内していただいた小田急電鉄株式会社 複々線建設部 下北沢事務所様に心からお礼を申し上げたい。

 

  (藤原 元気 記)



 

 

 平成20年 10月 講演会報告

  日 時:

 平成20年10月22日(水) 18時00分〜19時20分

 演 題:

羽田空港拡張工事について

 講演者:

 国土交通省 関東地方整備局 東京空港整備事務所 松永康男企画官

会 場:

 日本技術士会 葺手ビル5階A,B会議室

参加者

 44名

 報 告:

 

1.羽田空港拡張工事の概要

羽田空港は、わが国の社会経済活動に重要な一大拠点であり、年間約6,600万人(世界第4位)1機平均200人(世界最大)の旅客数を有するが、滑走路が3本しかないため、超過密な状況にある。これを解消し、併せて国際定期便の就航を可能とするため、2009年末の供用を目指して4本目の滑走路(D)を新設するものである。容量は時間当たり30便から40便に増強される。

空港再拡張をD滑走路に決定した理由は、既存ストックを有効に活用すること、2000年代後半までに就航可能としなくてはならないことなどがある。D滑走路の工事請負契約は、性能発注方式で、PFIによる設計施工一貫方式を採用している。工費は6,000億円、リスク負担は請負者、そして瑕疵担保は10年である

(図-1. 羽田空港とD滑走路の俯瞰)

 

2.D滑走路建設工事の特徴

D滑走緒路建設工事の特徴は次のとおりである。

D滑走路は3,100mの人工島で、2,000mが埋立て工法、1,100mが桟橋工法である。水深は−12mから−20mで、多摩川河口域での施工となるため、河川の通水性確保が重要である。

    ハイブリッド式ジャケットの滑走路を採用しており、裏面はステンレスのライティング、上面はチタンカバーで100年の防錆機能を有する。

・設計・施工面での留意点は、厳しい施工条件下における大規模・急速工事で技術的難易度が高いこと、100年耐用の施設であること、AとC滑走路制限下での施工(一番高いところで約80m)であることなどである。沈下量は、初期約7m、100年後7.9mと想定しており、サンドドレーン、サンドパイルで地盤改良した。

・桟橋は、供用中空港の隣接施工であることから短期間で施工するため、ジャケット式桟橋を採用した。1基あたり1,300tで198基設置する。

・床版は、滑走路と誘導路部(32万m)にはプレキャストコンクリートを、外周部の着陸帯(20万mにはUFCを採用した。UFC床版は、高強度による軽量化と高緻密、高耐久性による長期性能確保というメリットがある。

・鋼管杭は、1,600t吊級杭打船を使用して打設し、最大杭長91m、90t/本荷重である。ジャケット挿入のクリアランスは10cm ジャケットと杭の一体化にはグラウトを使用した。

・埋め立て・桟橋接続部は、上部構造には消波式護岸を採用、管中混合固化処理と軽量混合処理度を適用して軽荷重化を図った。エクスパンションジョイントはローリングリーフ形式を採用している。

 

3.最後に

工法の特徴や施工状況の説明に大量の写真や図表が使われため、この分野の専門家にとっては詳細の理解に、また非専門家にとっても理解しやすいプレゼンテーションであった。質疑応答では、基本的な事項、100年耐用の信頼性など、8名から質問があり、それらに一つずつ丁寧に答えて頂き、活気のある中での閉会となった。

   

 

 

 【写真―1】 講演会の風景       【写真―2】 質問に答える松永企画官

 

(大野 博久 記)

 

 

 

 平成20年 9月 講演会報告

  日 時:

 平成20年9月18日(木) 18時00分〜19時30分

 演 題:

21世紀前半は巨大地震の活動期 〜市民の安全を支える建設技術〜

 講演者:

  
防災・危機管理ジャーナリスト 渡辺 実氏

  (株)まちづくり計画研究所 代表取締役所長

  NPO法人 日本災害情報サポートネットワーク 理事長

会 場:

 日本技術士会 葺手ビル5階A,B会議室

参加者

 43名

 報 告:

 

日本列島は今地震の活動期に入っていると言われており、地震に対する防災・減災対策の必要性・緊急性が叫ばれています。今回は防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏に、想定される地震と被害の特性、究極の減災情報である“緊急地震速報”の現状と課題、被災に備えた準備など、地震時の危機管理についてご講演頂きました。

■講演要旨

○巨大地震の再来期に入った日本列島・・・地震防災の大前提

地震の発生に周期があることは歴史的に証明されており、これまで静穏期と活動期を繰り返してきた。西日本では平成7年兵庫県南部地震以降活動期に入ったとされている。東日本では、近年新潟県中越地震、能登半島地震、十勝沖地震、宮城県沖地震などの発生が見られることから、東日本も活動期に入ったのではないかとみられている。首都圏直下型の地震を含めて、M8〜7クラスの巨大地震、大地震の発生の可能性が四国〜東海の太平洋岸、首都圏、宮城、十勝、根室と広い範囲で高まっている。

○阪神淡路大震災から13年・・・大都市特有の震災の顔が見えた

 阪神大震災は、高度成長後の大都市で初めての大規模地震であり、大都市特有の震災の姿を見せた。すなわち、@多くの建物が地震動で倒壊した。A建物の倒壊や家具の転倒で多くの人が亡くなった。B建物倒壊によって通行不能になった。C企業が被災し、雇用の場が失われた。   

○大都市では「震災難民」が発生する

  巨大都市の震災時には大都市特有の「帰宅難民」、「避難所難民」、「高層難民」が発生する。

@帰宅難民:地震直後に交通機関が運行停止になることから、帰宅しようとする人が路上にあふれ帰れない状況となる。「帰宅難民」は帰宅せずに駅周辺建物倒壊・火災による救助・救出にあたる方向で防災訓練を行うべき。

A避難所難民:23区で東京ドーム11個分の避難所が不足する。「避難者難民」の減少対策が必要。

B高層難民:超高層ビル、マンションでは地震直後にエレベータがとまり、電気、水道が使えなくなる。防災サービスは1階レベルでのみ行われることから大量の「高層難民」が発生する。各自が1週間の備蓄を行い、自立して生活することが求められる。

○緊急地震速報の導入を!

 緊急地震速報”は、地震が発生し揺れがくる前に想定時間と想定震度を知らせる情報である。その運用は2007年10月1日より開始され、同年12月1日より気象業務法の一部改正により「予報・警報」に格上げされた。緊急地震速報”の情報媒体は、テレビ、ラジオ、携帯電話、街の中のスピーカー(防災行政無線)、専用端末機器などがあり、運用開始後3回目の緊急地震速報(警報)となった岩手・宮城内陸地震(2008年6月14日)で、宮城県内の中学校や透析クリニックで緊急地震速報(警報)が有効に機能したことが確認されている。緊急地震速報”は「究極の減災情報」であり、その情報の特性を理解して広く活用していきたい。

 

 ご講演では、他に震災時の「生き残りマニュアル」について用意をして頂いておりましたが時間が足りず、詳細については講演者の著作「大震災−生き残りマニュアル(編著:渡辺実+日本経済新聞生活情報部、発行:日本経済新聞社、500円)」を紹介して頂きました。

講演の最後に、「防災は日常の延長で対策をすることを考え、日常にできることで防災をしていけたらよい。防災が文化にならなくてはいけない。」と話されました。“災害は忘れた頃にやってくる”とよく言われますが、防災を日常生活に取り入れ、文化とすることが必要な時代となっていることを自覚し、またそのことを周りへ伝えていくことが防災・減災の具体的取り組みとして重要であることを認識できた講演会となりました。

 

参考資料:渡辺実著「緊急地震速報」、角川SSC新書、2008年9月

     渡辺実著「高層難民」、新潮新書、2007年4月

     渡辺実著「大地震発生 生死を分ける3秒・3分・3時間後」、幻冬舎

 

 



【写真-1】 講演される渡辺実氏  【写真-2】 講演会の状況

 

(建設部会 小川義忠 記)

 

 

 

 

 平成20年 7月 見学会報告

  日 時:

 平成20年7月4日(金) 14時00分〜16時00分

 見学先:

モード学園コクーンタワー新築工事現場

参加者

 16名

 報 告:

 

建物概要

建築主 :学校法人 モード学園

設計監理:株式会社 丹下都市建築設計

施  工:清水建設株式会社

構造など:地下4階、地上50階。鉄骨造。

 最高高さ203.65m。延面積 80,903.43

工  期:2006年5月1日〜20081031


  

1.建物概要説明(清水建設 沖計画長)
  パワーポイントを使って説明していただいた。コンセプト:モード学園の原点は生糸(絹)である。学生が学び巣立つ教室を繭で覆っている。コクーン(cocoon)は英語で繭。建物自身がモード学園の広告塔である。


     【写真-1】 コクーンタワーの外観

  

  建物は六角形をしたエレベーターシャフトのコアを中心に3棟の教室が外周に配置されている。エレベーターは3層ごとに着床し、3層吹抜けのスモールアトリウムと呼ばれ空間となる。

その他の階へは階段を使って移動する。

外周部にH形鋼のブレースを配置し外からアルミパネルで隠した。これで斜めのラインができるがさらに繭らしく見せるためにガラス面に白いシールを焼き付けた。

繭の形なので中央がふくらみ上下がしぼんでいる。生産性を考慮してサッシは幅6m×3.7mの大型パネルで形状をそろえた。その代わりに曲面なので階高は均一ではなくなるが特に施工上、支障はなかった。施工図は3次元CADを駆使して作成した。

2.建物内見学(案内:清水建設 原山現業長、鈴木事務長)
  

最上階、中間階、下層階と順次、案内していただき、エレベーターから外周までの距離がそれぞれ異なることで外形が繭のようなふくらみを持っていることを実感した。

階高は3.7mで比較的低いにもかかわらず天井を貼らず、床下、設備むき出しのデザインで天井が低いという印象はなかった。ただ天井を貼らない方が化粧などで返ってコスト高とのこと。

難しい仕事でありながらいろいろと工夫を重ねながら特異なデザインを現実の建物として完成させる、その技術力の高さに感心させられた見学会でした。 

高浜 良弘 記)

 

  【図-1】 基準階平面・断面図         【写真-2】 見学会風景(スモールアトリウム)
                   

 

 

 

 

 平成20年 5月 見学会報告

  日 時:

 平成20年5月27日(火) 14時30分〜17時30分

 見学先:

京急蒲田駅付近連続立体交差工事建設現場

 説明者:

京浜急行電鉄滑欄c連立・空港線担当工事事務所 

吉住課長、内田課長補佐、中原技術員
 3工区(大成建設他JV---熊坂副所長他
 4工区(鹿島他JV-------松井工事課長他 
 5工区(大林組他JV-----上杉所長他
 6工区(清水建設他JV---山本統括工事長他

参加者

 25名(申込者34名)

 報 告:

 見学会の開催日は、良い天気でしたが5月にしては暑い日でした。
京急雑色駅下り線改札口より「第6工区の清水建設他JV京急蒲田立体交差工事作業所会議室」に集合し、最初に京浜急行電鉄鰍謔闔幕ニの概要についてビデオとパンフレットにより説明を受けました。
  事業概要として、京浜急行電鉄本線(平和島駅〜六郷土手駅間4.7km)及び同空港線(京急蒲田駅〜大鳥居駅間1.3km)の連続立体交差事業は、環状8号線や国道15号線をはじめとする28箇所の踏切を高架化することにより交通渋滞及び踏切事故の解消、地域分断の解消、魅力あるまちづくりなどに大きく寄与するものとして事業が進められています。(写真-1)

【図-1】 連続立体交差事業の概要

当日は、全8工区の事業区間のうち、6工区〜5工区〜4工区〜3工区の順にて、横浜駅方面から京急蒲田駅方向へ各JV担当の現場を移動し、それぞれの担当者から説明を受けながら徒歩で案内していただきました。主な工事の特徴の概要を示します。

@直接高架施工機の採用
  日本で最初に採用された工法で、営業線の真上にまたぐ形で作業床を持ち、その上に大型クレーンを装備して高架橋を構築する工法で、工事期間の短縮が図られ、早期事業効果を得ることができる。幅が異なったり、高さに違いがある場所でも施工機械の柱間隔や高さを自由に調整できる機能を備えているとのことです。(写真-2)基礎杭の構築から柱の建込み、梁部材の据付など一連の作業が可能な機械とのことでした。


【図-2】直接高架工法の案内

Aプレキャストラーメン高架橋の採用
  工場で製作したプレキャスト柱を建込み、横梁・縦梁の架設や据付を行い鉄筋でつなぎコンクリートで一体化固定する。さらに、工場で製作したプレキャストスラブを据付て、その上面に鉄筋を組んでコンクリートを打設し、高架橋の完成となる。高架橋1サイクル10日前後で完成とのことです。(写真-3)


【写真-1】プレキャストラーメン高架橋施工状況

B仮線工法  
  環状8号線立体交差部に採用されるもので、仮立体線を併用した仮線工法で、下り線と上り線を入れ替えながら工事を進めています。5月中旬に仮上り線に切替えを実施したばかりで、旧上り線のレールがまだ撤去されず残置されている状況でした。片線が立体になっただけで踏切遮断時間が大幅に短縮されたとのことでした。(写真-4)


 【写真-2】仮線工法の施工状況

おわりに
  今回、見学させていただいた現場は、平成24年度の完成を目指し、現在の事業進捗状況として約半分とのことでしたが、完成の暁には利便性の向上はもちろん沿線や道路への付帯影響効果が多大であることを認識するのに十分な見学会となりました。
  最後に、京浜急行電鉄鰍ウんの吉住課長さんをはじめとして、各工区のゼネコンJVさんに現場案内と丁寧な説明をいただきましたことに感謝申し上げます。                  
 

吉宮 和紀 記)

 

 

 

 

 平成20年 4月 講演会報告

  日 時:

 平成20年4月24日(木) 18時00分〜19時30分

 演 題:

世界の環境・日本の環境

 講演者:

財団法人 日本生態系協会 

会長 池谷奉文氏

会 場:

 日本工営(株) 3階会議室

参加者

 41名

 報 告:

 

1.持続可能な発展とは何か

 現在、環境問題は世界最大の問題として扱われており、その影響は深刻の一途をたどっている。今回の講演では「世界の環境・日本の環境」という講演題目のもと日本と世界の環境問題に対する考え方や取り組みの違いなどを講演頂いた。

環境問題とは大きく二つの問題に分類することができる。ゴミ問題と遺伝子の消失である。我々は普段の生活で発生する生活ゴミや我々が普段利用している建築物や土木構造物、そして生活の中で排出されるCO2など大量のゴミを発生させ、木材の大量利用や開拓によって自然を破壊し野生動物などの遺伝子を消失させている。今のような生活を続けていけば土壌が枯れ、植物が育たなくなり、野生生物が消え、ついには食料を得ることも困難になり、人類の崩壊を迎える。

 近年、ヨーロッパをはじめとする世界の国々では “持続可能な発展”をキーワードに掲げ対環境問題に取り組んでいる。野生生物が生きるためには大規模な自然が必要であり、自然を保つためには豊かな土壌が必要である。つまり、土壌を豊かにすることが環境問題を抑制するポイントであるという。ヨーロッパ諸国ではそういった意識が高く自然を乱さないことで大規模な自然を確保し、自然のネットワークを利用した街づくりが行われている。自然と共存していく重要性をひとりひとりが認識し、環境問題に対して高い意識を保持していることが理解できた。

 

2.持続可能な発展に向けて私たちが抱える問題

持続可能な発展に向けて私たちが抱える問題として、自然生態系の概念付けの上で、土地利用における問題、河川・海岸の問題、外来種、携帯電話に含まれるレアメタル、焼却されるゴミによるCO2の問題などについて解説して頂いた。

3.効果的な自然の残し方・つくり方

効果的に良い自然を残すには、大規模自然(大拠点)と小鳥の住む都市公園(中拠点)と家庭の庭や屋上緑化(小拠点)を川や林など自然の回廊で結ぶことであること、そしてブータンでは、自然公園として遺伝子を守るために60%以上の自然を残してつないでいる実例などとともに、東洋の「共存の思想」が欧州で注目されていることを紹介された。

 

野村  貢 記)


 

  【写真-1】 講演される池谷奉文氏        【写真-2】 講演会の状況
                   

 

 

 

 

 




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