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平成21年 1月 講演会報告 |
日 時: |
平成21年1月22日(木) 18時00分〜19時30分 |
演 題: |
「空間と構造」―私にとってのアーキニアリング・デザインー |
講演者: |
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会 場: |
日本工営株式会社 3階 会議室 |
参加者: |
31名 |
報 告: |
はじめに (社)日本建築学会の斎藤会長は1963年日本大学理工学部修士課程を終了された後、日本大学理工学部で教鞭に立たれ、現在は日本大学の名誉教授でおられます。氏の功績は建築におけるたくさんの大空間建築の作品です。本日は174枚のスライドを使って作品紹介や大空間構造の設計、施工法など氏の建築に対する想いを語っていただきました。 内 容 建築の要素は「科学」、「技術」、「工学」、「芸術」の要素を基に成立している。 レオナルド・ダヴィンチやガリレオは偉大であったが現在の技術から見ると基礎の域にある。過去には設計の意図を見落とし、施工段階の変更で事故に至ったものもある。ハムラビ法典では倫理について厳しく規定しており過去には耐震偽装などの事件は起こらなかった。 2007年に(社)建築学会会長に就任し「建築界を元気に」のキャッチフレーズでがんばっている。そのひとつの活動が「Archi-Neering Design展」(略称:AND展)で建築において構造とデザインの融合を促した。副題は「模型で楽しむ世界の建築」でたくさんの模型を展示し、見て、中には触って楽しんでもらった。2008年10月17日から28日の開催期間中、約6000人の方が入場した。AND展ではアーチ橋、ローマの水道橋などの「橋のデザイン」、薬師寺西塔などの古典に見る「耐震、耐風のデザイン」、ケーブルなどの引張材を組み合わせたハイブリッド構造などの「甦生と進化のテクノロジー」などのテーマで展示した。 ハイブリッド構造のひとつが張弦梁構造である。圧縮力を担うアーチ材と引張力を担うケーブルを組み合わせたものでグリーンドーム前橋、日大理工ホールなどの作品がある。ほかにテンセグリティ構造がある。ロープ、ケーブルなどの引張材を主体とした構造で天城ドームはそのひとつである。
大空間建築は力学的な合理性がないと成立しないが構造体そのものが建築であり、同時に美しくないといけない。構造と芸術の融合が不可欠である。
【写真-1】 講演される齋藤氏 【写真-2】 講演会の状況 (建設部会 高浜良弘 記) |
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平成20年 12月 講演会報告 |
日 時: |
平成20年12月18日(木) 16時30分〜18時00分 |
演 題: |
地球温暖化防止に向けた土木技術者の役割 |
講演者: |
(株)建設技術研究所 代表取締役会長 |
会 場: |
弘済会館 |
参加者: |
51名 |
報 告: |
はじめに インフラは人々に「安全、便利、良い環境(Safety,Convenience,Environment)」、を提供するものであり、人々の生活にとってなくてはならないものである。現在、地球温暖化問題が話題となっており、この問題は人類に歴史的な災害をもたらす。予想される災害を防ぎあるいはそれに適応するのがインフラの役割であり、土木技術者は先頭に立って温暖化対策に取り組む必要がある。今回は温暖化問題や災害に詳しい褐嚼ン技術研究所会長、前土木学会会長の石井弓夫氏ご講演頂きました。 1.災害とは何か 災害は自然現象や人為を引き金とした社会現象であり、産業革命以降の自然の改変や、CO2などのGHG(グリーンハウスガス)による気候変動、地球温暖化など土木による自然改造、開発など人間の力が自然の容量と比べ大きくなり、自然を変化させ災害をもたらすようになってきた。 原因として気象・地震等の自然災害と気候変動やテロ・戦争等の人為災害に分けられ、被害の種類として大きく直接被害(死傷者、家屋損壊、ビル・工場被害、資産滅失、社会不安と混乱)と間接被害(通勤不能・情報システム停止・被災地区からの物流停止による企業活動停止、得意先を奪われるなどビジネスチャンスの喪失、情報ネットワークと行政機能の停止)に分類できるが、近年では間接被害が大きくなってきている。 2.インフラと気候変動 環境省地球温暖化影響・適応研究委員会報告によると日本の平均気温上昇は最大で4.7℃の報告があり、災害危険度は増大してきており、建設産業(製造業のセメントなども含み)が自ら排出するCO?は総量の42.7%であり、GHGの低減と災害を防ぐ手段が求められている。 国土交通省によると降水量の増大、洪水の増大、土石流の激化、高潮及び海岸侵食の増大、渇水リスクの増大、河川環境の変化など気候災害安全度の低下が懸念されている。 3.温暖化災害防止への土木技術者の貢献 GHG排出緩和策(Mitigation)として、構造物的対策としてハード対策(エネルギー供給方法改善、CO2削減、炭素固定)、ソフト対策(総合アセットマネジメント、CDM、公共調達への反映、国際協力等)が挙げられる。しかし現実的で効果的な手段は適応策であり、海面上昇対策、土地利用の変更、異常気象・気候変化対策といった構造物的対策(ハード対策)、都市環境整備、国際協力、治水ソフト対策、治水を河川事業全体に広げた統合流域管理などソフト施策の適応策の推進が重要となってくる。 土木学会等においても地球温暖化対策特別委員会など、地球温暖化防止に向けての研究・活動が行われており、土木技術者は官、学、民一体となって、推進していかなければならない。 4.結論 気候変動に対応するには緩和策と適応策を取るとともに低炭素社会の実現を図らなければならない。気候変動がもたらす危機に備えるために、変動の予測精度の向上、緩和・適応能力の向上を国際、国内、地方レベルで図らなければならない。低炭素社会の実現を促進するために、個人、企業、各国それぞれのレベルでの経済的、政治的手段を取るべきである。 技術者の取るべき行動として、災害は社会現象であり、防災は広い視野で当たらねばならず、社会に関する不断の勉強が不可欠である。気候変動は人類の危機と認識し、気候変動をめぐる政治・経済情報を敏感にキャッチし、技術者として低炭素社会の実現を促進するための業務を遂行すべきである。緩和策、適応策はまさにコンサルタント業務である。優れた成果を挙げることが強く望まれる。 最後に 災害は自然災害であるが、近年は人為的開発やCO?問題で発生していることを解説頂き、またそれへの対応策・適応策についてご指導頂き、特に適応策の検討・実施が今後は重要になることを説いて頂きました。 講演会の最後にCO2削減の地球温暖化防止への寄与や途上国と先進国の役割など多くの質問に対してCO2削減の計画、設計、施工時の取り組みの計画など、今度土木関係技術者の方向についても示唆して頂き、たいへん貴重な講演会となりました。
【写真-1】 講演される石井氏 【写真-2】 講演会の状況 (建設部会 平川 倫昭記) |
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平成20年 7月 見学会報告 |
日 時: |
平成20年7月4日(金) 14時00分〜16時00分 |
見学先: |
モード学園コクーンタワー新築工事現場 |
参加者: |
16名 |
報 告: |
建物概要 建築主 :学校法人 モード学園 設計監理:株式会社 丹下都市建築設計 施 工:清水建設株式会社 構造など:地下4階、地上50階。鉄骨造。 最高高さ203.65m。延面積 80,903.43m2 工 期:2006年5月1日〜2008年10月31日
1.建物概要説明(清水建設 沖計画長)
建物は六角形をしたエレベーターシャフトのコアを中心に3棟の教室が外周に配置されている。エレベーターは3層ごとに着床し、3層吹抜けのスモールアトリウムと呼ばれ空間となる。 その他の階へは階段を使って移動する。 外周部にH形鋼のブレースを配置し外からアルミパネルで隠した。これで斜めのラインができるがさらに繭らしく見せるためにガラス面に白いシールを焼き付けた。 繭の形なので中央がふくらみ上下がしぼんでいる。生産性を考慮してサッシは幅6m×3.7mの大型パネルで形状をそろえた。その代わりに曲面なので階高は均一ではなくなるが特に施工上、支障はなかった。施工図は3次元CADを駆使して作成した。 最上階、中間階、下層階と順次、案内していただき、エレベーターから外周までの距離がそれぞれ異なることで外形が繭のようなふくらみを持っていることを実感した。 階高は3.7mで比較的低いにもかかわらず天井を貼らず、床下、設備むき出しのデザインで天井が低いという印象はなかった。ただ天井を貼らない方が化粧などで返ってコスト高とのこと。 難しい仕事でありながらいろいろと工夫を重ねながら特異なデザインを現実の建物として完成させる、その技術力の高さに感心させられた見学会でした。 (高浜 良弘 記)
【図-1】 基準階平面・断面図 【写真-2】 見学会風景(スモールアトリウム) |
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平成20年 4月 講演会報告 |
日 時: |
平成20年4月24日(木) 18時00分〜19時30分 |
演 題: |
世界の環境・日本の環境 |
講演者: |
財団法人 日本生態系協会 会長 池谷奉文氏 |
会 場: |
日本工営(株) 3階会議室 |
参加者: |
41名 |
報 告: |
1.持続可能な発展とは何か 現在、環境問題は世界最大の問題として扱われており、その影響は深刻の一途をたどっている。今回の講演では「世界の環境・日本の環境」という講演題目のもと日本と世界の環境問題に対する考え方や取り組みの違いなどを講演頂いた。 環境問題とは大きく二つの問題に分類することができる。ゴミ問題と遺伝子の消失である。我々は普段の生活で発生する生活ゴミや我々が普段利用している建築物や土木構造物、そして生活の中で排出されるCO2など大量のゴミを発生させ、木材の大量利用や開拓によって自然を破壊し野生動物などの遺伝子を消失させている。今のような生活を続けていけば土壌が枯れ、植物が育たなくなり、野生生物が消え、ついには食料を得ることも困難になり、人類の崩壊を迎える。 近年、ヨーロッパをはじめとする世界の国々では “持続可能な発展”をキーワードに掲げ対環境問題に取り組んでいる。野生生物が生きるためには大規模な自然が必要であり、自然を保つためには豊かな土壌が必要である。つまり、土壌を豊かにすることが環境問題を抑制するポイントであるという。ヨーロッパ諸国ではそういった意識が高く自然を乱さないことで大規模な自然を確保し、自然のネットワークを利用した街づくりが行われている。自然と共存していく重要性をひとりひとりが認識し、環境問題に対して高い意識を保持していることが理解できた。 2.持続可能な発展に向けて私たちが抱える問題 持続可能な発展に向けて私たちが抱える問題として、自然生態系の概念付けの上で、土地利用における問題、河川・海岸の問題、外来種、携帯電話に含まれるレアメタル、焼却されるゴミによるCO2の問題などについて解説して頂いた。 3.効果的な自然の残し方・つくり方 効果的に良い自然を残すには、大規模自然(大拠点)と小鳥の住む都市公園(中拠点)と家庭の庭や屋上緑化(小拠点)を川や林など自然の回廊で結ぶことであること、そしてブータンでは、自然公園として遺伝子を守るために60%以上の自然を残してつないでいる実例などとともに、東洋の「共存の思想」が欧州で注目されていることを紹介された。 (野村 貢 記)
【写真-1】 講演される池谷奉文氏 【写真-2】 講演会の状況 |
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