建設部会行事報告
 

 

 

 平成20年 2月 講演会報告

  日 時:

 平成20年2月5日(火) 18時00分〜19時30分

 演 題:

橋を守る:道路橋の維持管理

 講演者:

国土交通省国土技術政策総合研究所 道路研究部 道路構造物管理研究室 

室長 玉越隆史氏

会 場:

 日本工営(株) 3階会議室

参加者

 51名

 報 告:

 今回は「橋を守る:道路橋の維持管理」という演題で国総研の玉越隆史氏にご講演頂いた。講演は、道路橋における性能規定の現状と課題、道路橋の現状と課題、そしてまとめという内容で構成された。

道路橋における性能規定の現状と課題では、技術基準類の体系、解決の方向性、設計・施工および維持管理における課題について具体的な説明を受けた。性能基準化の時代の要請を満たすためには、保証されるべき要求性能と達成の方法を規定した技術基準が必要である。要求性能は、橋の置かれる状況と想定される対象物の状態を、工学的な解釈に変換しなくてはならない。そのためには、知見を増やす、確からしさを高める、照査法を充実させる、前例の無い場合でも使えるように評価法を充実させる必要がある。また、大規模性、不特定多数による利用など、事後に検証することは困難であることから未然に防止する観点と、プロセスに配慮すべしなどと指摘された。

道路橋の現状と課題では、設計施工および維持・管理における不具合事例をコンクリート内部の鋼材破断、ミシシッピー橋の瞬時の崩壊など、具体的な事例を豊富に提供して頂いた。コンサルタント業界でのアンチョコ点検要領の横行に警鐘を鳴らし、最低限落下させないように核心部を点検すべしであると言及された。平成16年度には、次の点を満たす方向で点検要領を大幅に改定したとのことである。

@客観的事実を蓄え、アセットマネジメントを発展させる。

A対策区分の判定には、データ収集と診断が重要で、特に診断技術の向上につなげる

B過去の事例に学ぶという反省を生かし、技術的知見をナレッジマネジメントに仕立てる。

Cストラクチャ・クリティカル・ブリッジの概念を確立し、基準の整備と配慮の重点化を図る。

 

まとめでは、性能規定における合理化の実現に向けて、要求水準を限りなく明確かつ定量的に行うこと、評価体制の実力と性能評価レベルの整合性を確保することが指摘された。また、限られた資源(人、予算)で適切に資産管理するために人材の育成・確保、知見の共有・伝承・活用などが唱えられた。さらにそれぞれの実現のために、産・官・学の連携と持続可能で魅力的なビジネスモデルの構築が必要であると提言された。

米国ミネソタ州ミシシッピ川の橋崩落事故があって、わが国でも急速に橋の維持管理問題への関心がこれまで以上に高まっている中、写真、図、表を効果的に活用した視覚化技術に、比喩、ユーモアを交えた話術が加わり、非常に理解しやすかった。主としてコンサルタントを対象に、設計や保守点検における警告的な見解も有効に加えられた。今回の参加者は、建設コンサルタント、建設業、事業者など幅広い層から構成されたことからも、日本技術士会の会員にとって時宜を得た有益な講演会であったことがわかる。

最後に、つぎのURLで定期点検に関する豊富な事例を入手できるので、実務に生かして欲しいと強く要望されたので、一度アクセスして頂きたい。

http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0196.htm

 

 

大野博久 記)


 

  【写真-1】 玉越 隆史 氏の講演        【写真-2】 講演会の状況
                   

 

 

 

 平成20年 1月 講演会報告

  日 時:

 平成20年1月18日(金) 18時00分〜19時30分

 演 題:

国土学という考え方

 講演者:

財団法人 国土技術研究センター理事長 大石久和氏

会 場:

 弘済会館

参加者

 42名

 報 告:

 平成20年、最初の講演は(元)国土交通省技監で現在、(財)国土技術研究センター理事長の大石久和氏にお願いした。

 本日は「国土学という考え方」との演題で、我々、建設業界人が最も親しみある公共事業・社会資本整備を事例にとり、国土への働きかけの考え方についてご講演いただいた。

 冒頭、昨今新聞紙上を賑わしている道路特定財源、暫定税率の話題から始まり、一般財源化された場合の影響、暫定税率の廃止にともなう影響について、諸外国での変遷を例示し、予想される諸問題について提起された。また真実を伝えていないマスコミにも問題があるとの警鐘も発せられた。

 次にインフラ整備について、国土の歴史的形成(時間軸)と国土の国際比較(空間軸)の両面から、陸続きの諸外国と島国である日本の都市国家形成の経緯と国民性の相違について述べられ、契約に対する表現手段の違い、市民(共同体)意識が育まれる土壌の違いから、自然条件・社会条件の違いを認識し、俯瞰的な物事の見方の必要性と公環境の中に存在する私環境の考え方などについて言及された。

 需要の少ない日本、その結果、経済がうまく循環しない日本。その日本列島(国土)をハンドリングする上での公共事業の果たすべき役割、その過程で継続的な国土への働きかけが恵みとして還元される一連の流れが国土学である。いま、個々が真剣に考えないと日本国民の将来の豊かさに影響を与えることになるとの問題提起がなされた。

 国土学の考え方は講演者の著書「国土学事始め」(毎日新聞社出版)や現在、連載中の週刊 サンデー毎日の「国土のかたち」でも述べられているが直接、著者から図を交えながら迫力ある講演を聞けたことは日本技術士会 会員にとって幸運で平成20年のスタートにふさわしい講演会であった。

 

伊藤康裕 記)


 

  【写真-1】 大石 久和 氏の講演        【写真-2】 講演会の状況
                   

 

 

 

 平成19年 11月 見学会報告

  日 時:

 平成19年11月8日(木) 14時00分〜16時00分

 見学先:

 首都高速中央環状新宿線SJ22工区(2-1)

 

 

 説明者:

 首都高速道路株式会社 東京建設局 新宿工事グループ 山田 淳 所長

 大成・鹿島・鉄建 特定建設工事共同企業体 深澤 裕志 所長

参加者

 29名

 報 告:

当日はやや肌寒い薄曇の天候のなか、千代田線代々木公園駅に集合し参加者29名で、首都高速中央環状新宿線富ケ谷トンネル出入口部の現場見学を行った。

 最初に、大成・鹿島・鉄建 特定建設工事共同企業体富ケ谷トンネル作業所会議室において、首都高速株式会社山田所長より、首都高速の事業概要及び中央環状新宿線の路線概要について説明を受け、続いて、共同企業体深澤所長より、富ケ谷トンネル出入口の工事の特徴及び当日の見学箇所についてビデオを使用して詳細に説明をして頂いた。

 本工事は、併設された2本のシールドトンネルを地上からの開削を行わずに地中で切り開き、両シールドを接続して地下出入り口を構築する工事であり、最新技術である「太径曲線パイプルーフ工法」が採用されている。非開削切開き区間の施工において、土圧及び水圧は、上部は立抗からトンネル方向に施工する直線パイプルーフで支保し、下部はシールドトンネル内からトンネル直角方向に施工する曲線パイプルーフで支保されている。

曲線パイプルーフの施工は、片側のシールドから下方に向けて発進し半径16mの円弧を描きながら反対側のシールドの鋼殻(B=1.2m)の主桁間にあらかじめ組み込まれたガラス繊維強化プラスチック部に到達させるため、鉛直方向±100mm、水平方向±50mmの施工精度が要求され、掘進機の位置計測技術と制御技術の開発で採用が可能になったとのことである。


図−1   新宿側非開削区間標準断面

 

 また、立坑部の北側(新宿側)と南側(大橋側)では、表層の地層が異なるため、地下水位低下に敏感な腐植土層が存在する北側区間は凍結工法によって止水、逆巻き工法で切開き部のRC躯体構築を行い、腐食土層がない南側区間は、薬液注入工法による止水、順巻き工法による躯体構築としているとのことで、地表(山手通り)の沈下に対して細心の対策がとられている。

 現場見学は、首都高速山田所長、共同企業体深澤所長及び河本現場代理人の案内で、富ケ谷交差点の横断歩道橋より、工事区間全体を俯瞰後、切開き部切羽、立抗内上部直線パイプルーフ設置状況、シールド内支保工設置状況等について見学させて頂いた。

 現場見学後、再度、作業所会議室に戻り、質疑応答の機会を与えて頂き参加者にとって有意義な見学会となった。

 最後に、貴重な時間を割いて案内して頂いた首都高速株式会社山田所長、共同企業体深澤所長及び河本現場代理人に心からお礼を申し上げます。                                   (都出 英夫 記) 

 

 

   【写真-1】  切開き部切羽        【写真-2】 シールド内支保工
                   

 

 

 

 平成19年 10月 講演会報告

  日 時:

 平成19年10月12日(金) 18時00分〜19時30分

 演 題:

@最近の緑化教育について

A最近の緑化事業の取り組み

 講演者:

@佐藤 美津子氏(茨城県技術士会)

A丹 左京氏(茨城県技術士会理事)

参加者

 20名

 報 告:

 緑化は、建設並びに建築事業において、非常に重要な項目になりつつある。ヒートアイランド対策やCO2削減といったハード面だけでなく、都市景観を形づくる要素としての認知はますます高まるばかりである。今回の講演では「緑化」をポイントに、建設技術者に対する緑化教育の重要性と実施について、および困難な条件下における緑化の実施例とその技術的背景についての2題について、茨城県技術士会のお二人をお招きし、講演頂いた。

 

1. 「最近の緑化教育について」佐藤 美津子氏

筑波研究学園専門学校の非常勤講師としての立場から、現場に出る建設技術者に対する土木環境学、緑化デザイン、都市計画、環境工学、ランドスケープ計画の教育の重要性を教育現場での実施状況を踏まえて紹介された。

(1)筑波研究学園専門学校の特性と教育プログラム

地域、専門学校としての特性から、卒業生の殆どは現場監督としての実務に就く。実際に現場において物作りする立場となる彼らにとって、例えば道路計画の上位には都市計画があり、全体としての調和を保っていることを知っておくことは大きな意味がある。また、そのような都市景観形成の一翼を担っているという自覚が仕事に対する誇りに繋がっている。そのため、教育プログラムは建設工学を中心に多岐にわたっている。

(2)都市計画見学(つくばセンター)

つくばセンターは非常に良く計画された街である。この街には公園93箇所約100haのほか、複合的な公共施設が都市軸としての歩道を中心に配置されている。この場は、学生達の日常生活の場でもあるのだが、知識と解説を踏まえて見学を行うことにより都市計画としての工夫や困難さが理解できるようになる。

(3)緑化デザイン実技(模型製作)

すべての学生は、卒業製作として2,500m2を対象として緑化デザイン模型を約1年間かけて製作する。

ここでは、自由な発想に基づき、緑化された公共施設をデザインし、模型製作させている。ゾーニングや動線の計画について、実際に自分で模型製作することで知識が計画の背景にあることを理解させる。模型製作には非常に力を入れる学生もおり、優秀な作品が多い。

(4)まとめ

学生の多くは実務者として現場に就くわけであるが、基礎を学ぶことの重要性そして少しでも自然と環境の重要性に気付かせることが、彼らの誇りと良い仕事をしようとする意欲に結びつくものと考えている。

 

2. 「最近の緑化事業の取り組み」丹 左京氏

筑波研究学園専門学校の非常勤講師として、また茨城県の「自然の再生研修会」講師、実務者としての立場から、社会ニーズを踏まえた緑化事業の最新の取り組みについて紹介された。

(1)社会ニーズの変化

生産型社会からサービス型社会への移行に伴い、顧客の要望に応える提案活動としての緑化事業が脚光をあびるようになってきた。

茨城県では「自然の再生研修会」として150〜270名規模の研修会を定期開催してきており、現地視察や試験施工もこのなかで実施、発注者からコンサルタント、コントラクター、NPOなど関係者のレベルアップと緑化意識の浸透が図られている。

(2)技術的背景

高次団粒構造の客土が実用化され、工場生産できるようになったことで、雨撃に強く、根の侵入も良い施工が可能になり、今まで困難とされてきた場所での緑化に展望が開けた。

その範疇には、強酸性地盤や岩盤斜面、海岸砂浜の緑化まで含まれる。

(3)実施例など

化学技術としての高次団粒構造の客土、緑化技術とそれを現地に応用する人工盛土やジオテキスタイル技術などの複合により施工システムが完成しつつある。

実例としては既に171hr、300件の実績が生まれており、植生も低木だけでなく、用途に応じて高木の適用なども行われている。

実例として挙げられたのは、エコフロンティアかさまの岩盤斜面、JAJI(総合自動車試験場)の造成面、北茨城市の足洗海岸、J-PARC(大強度陽子加速器施設)などが紹介された。特にJ-PARCでは客土にチップを混入することで黒松の生育条件が改善された試験施工の実例などが紹介された。

 

野村 貢 記)


 

  【写真-1】 佐藤 美津子氏の講演      【写真-2】 丹 左京氏の講演
                   

 

 

 

 平成19年 9月 見学会報告

  日 時:

 平成19年9月28日(金) 14時00分〜17時00分

 見学先:

 千葉市 中央雨水ポンプ場建設工事

 

 

 説明者:

 大成・フジタ・大林・東亜・伊藤建設共同企業体

 八浪悌朗作業所長、吉澤崇幸代理人(監理技術者)

参加者

 19名

 報 告:

 見学日は、前日までのぐずついた天気から一変、秋とは言え暑い位の良い天気に恵まれた。見学者は、京葉線・千葉みなと駅に集合し、徒歩で5分程度の『千葉市中央雨水ポンプ場建設工事現場』に到着した。

まず、事務所に案内され、八浪所長のご挨拶の後、吉澤氏より、パワーポイントを用いて、施工手順(掘削前の仮設備の設置・組み立て、沈下掘削工、躯体構築工、設備の撤去、上屋構築等)、各段階における仮設備の配置計画、主な設備(掘削・排土設備、送気設備、救急設備)の概要等、順を追ってわかりやすく説明して頂いた。

中央雨水ポンプ場は、千葉市の中心市街地の約450haを排水区域とし、施設能力は排水能力約14.5 m3/s、滞水池貯留量約17,000m3である。主な施設としては、ポンプ棟、沈砂池棟、雨水滞水池があり、ポンプ棟、雨水滞水池の地下部分はニューマチックケーソン工法で施工し、沈砂池棟の地下部分は鋼矢板(鋼製支保形式)で施工する計画である。総工費は約95億円、工期は約3年半とのことであった。

今回は、このニューマチックケーソン工法の施工状況を見学することが主目的である。

 

  
      
図−1   千葉市 中央雨水ポンプ場計画断面図

 

本工事の特徴は、底面積1,000 m3以上のニューマチックケーソンを近距離で同時期に2基施工することと、圧気圧0.3MPaに達した時点で、減圧症対策として酸素減圧を行うことである。また、ケーソン内が0.18MPa以上の加圧状態では、ケーソンショベルを地上より遠隔操作する無人化施工を実施している。

説明の後、質疑応答があり、ケーソン2基を近距離で施工する上での問題点、作業体制、排土の処理方法など、活発な質問がなされた。その後、現場内を視察させていただいた。主な施設は次のとおりである。

 

(1)ABキャリア(掘削・排土設備の一部)

ケーソン内で掘削された土砂を地上まで排土する設備で、二重のロック装置により加圧状態を維持しながら施工する工夫がなされていた。                    

(2)遠隔操作設備                

無人化施工の心臓部ともいえるところで、ゲーム感覚で操作できるような操作卓が十数台並んでいた。作業性について担当者に質問したところ、やはり有人施工に比べれば単位時間当たりの施工速度は落ちるが、長時間施工できるので最終的には施工速度が速くなるとのことであった。

(3)救急設備

ケーソン内は加圧されているため、万一、減圧症が発生した場合は緊急に治療する設備が必要である。写真−2はホスピタルロックと呼ばれる救急再圧室で、労基法に基づき5台設置されている。幸いにして、まだ使用実績がないとのことである。

(4)送気設備

本工法の特徴である圧気を作る施設であるコンプレッサー、空気清浄器などの送気設備も見学し、本工法の概要を理解することができた。                

ニューマチックケーソン工法は文献等ではよく目にする工法だが、今回の参加者の方々の中でも実際に見たことがある方は意外に少なく、とても有意義な見学会であった。

最後に、貴重な時間を割いて案内して頂いた共同企業体の八浪所長、吉澤代理人に心からお礼を申し上げたいと存じます。

播磨 進 記)


 

   【写真-1】 遠隔操作室         【写真-2】 ホスピタルロック内部
                   

 

 

 

 

 

 平成19年 8月 見学会報告

  日 時:

 平成19年8月20日(月) 14時00分〜17時00分

 見学先:

 東京湾アクアライン「海ほたる」「風の塔」

 

 

 説明者:

 東日本高速道路(株)関東支社東京湾アクアライン管理事務所

 宇佐美副所長、山下工務担当課長、小川技師

参加者

 12名

 報 告:

 残暑真っ盛りの中、川崎駅に集合した見学会参加者は、路線バスにて、東京湾アクアラインの海中トンネルを走り、道路がトンネルから橋に移り変わる中継地の人工島「海ほたる」に到着した。

 「海ほたる」では、東京湾アクアライン管理事務所の宇佐美副所長、山下課長、小川技師の出迎えを受け、工事記録の展示室である、「海めがね」にて、工事記録のビデオを見た後、山下課長から、アクアライン全体の施設概要を説明頂いた。

 東京湾アクアラインは全長15.1km、東京湾のほぼ中央を横断する有料道路で、浮島側取り付け部から「海ほたる」に至る全長の約2/3の区間がトンネル部、「海ほたる」から木更津本線料金所に至る全長の約1/3の区間が橋梁部で構成され、トンネル部のほぼ中央に、工事中はシールドマシンの発進基地となり、完成後はトンネルの換気施設として機能する、人工島「風の塔」が建設されている。

 建設費1兆4400億円、1m当たり9500万円という数字は、海面下最大60mの海底を、直径13.9m、延長約10kmのトンネル2本と、最大支間長240m、全副22.9m、延長約4.4kmの長大橋梁、そして2箇所の人工島を建設したという一大プロジェクトの規模を如実に物語っていると思われた。

 「海めがね」で30分ほどの説明の後、2台のミニバン仕様のパトロールカーに分乗し、トンネルの一般車走行面の真下に設置された管理用道路内に案内して頂いた。

 管理用道路は、トンネル内の事故等での緊急避難路としても機能する施設で、当然、通常は一般の眼に触れない施設である。300mピッチで設置されているという、走行路面の路肩からの避難用スロープ、消火設備の泡送管等、長大な海底トンネルならではの設備が印象的であった。

 どこまでも真直ぐ、果てしも無く続くと思われるような薄暗く狭い管理用通路を走りぬけ、「風の塔」に到着。約60mを高速エレベーターで駆け上り、ドアを抜けた外には、高さ90mと75mの三角円錐状にデザインされた換気塔本体が、背中合わせに聳え、真っ青な夏空を背景に、圧倒的な景観をかもし出していた。換気塔は片側の塔の基部外側から吸気し、他の一方の搭の内側から排気する構造となっており、二つの塔に挟まれた空間は、ビル風の理屈通りの強風を作り出し、排気拡散に寄与するという工夫がなされていた。

 「風の塔」基部で上り線トンネルから下り線トンネルにUターンし、「海ほたる」に帰着、約2時間に渡る見学会は終了した。

 一般車走行面下の管理用、避難用設備、「風の搭」の換気塔設備等、通常では決して眼ににすることができない設備を、貴重な時間を割いて案内して頂いた宇佐美副所長、山下課長、小川技師に心からお礼を申し上げたいと存じます。

(鈴木敏郎 記)


 
   【写真-1】 山下課長による説明      【写真-2】 見学会参加者
      (管理用トンネル内にて)          (「風の塔」にて)

 

 

 

 平成19年 7月 見学会報告

  日 時:

 平成19年7月26日(木) 13時30分〜16時00分

 見学先:

 地下鉄13号線(副都心線)渋谷駅及び新宿三丁目駅建設現場

 

 

 説明者:

 東京地下鉄株式会社(東京メトロ)建設部新宿工事事務所 西村所長、三木技術課長、平野主任

参加者

 33名(当初申込者37名、欠席者4名)

 報 告:

 見学会の開催日は、梅雨末期の曇り空で大変蒸し暑い(33℃)天気でした。
 半蔵門線渋谷駅9番出口に集合し(参加予定者が37名、これでもお断りした)東京メトロさんよりヘルメット、軍手、ペットボトルなどを受取り、渋谷駅9番出口より地下鉄工事現場構内に入りました。まず、構内地下3階部分のコンコース予定地で西村所長、平野主任より13号線の路線概要をメトロ路線図等にて説明を受けました。
 13号線建設は、池袋〜渋谷駅間(8.9km、途中6駅)で平成13年6月に工事着手し、池袋・新宿・渋谷の副都心への重要な足となるとともに既設の地下鉄線やJR線などの鉄道各線と交差、接続、連絡され鉄道利用者の利便性の向上、沿線の発展、町づくりに貢献するものと事業推進されています。平成20年6月には、池袋駅で東武東上線並びに西武有楽町線・池袋線と相互直通運転が計画され、また、平成24年度を目途に、渋谷駅にて東急東横線・みなとみらい線と相互直通運転が計画されていて、埼玉県西南部から都心を経由し、横浜方面に至る広域的なネットワークが完成することになります。
渋谷駅見学
 渋谷駅前の明治通りと宮益坂通りの交差部直下に開削工法にて、4層5径間箱型ラーメン(躯体断面 高さ約21m×幅約36m)が、半蔵門線を受替えながら乗換コンコースを抱き込む形でホーム延長200mの駅部が構築されていました。 10両運転用ホームが2面で4本の線路が敷設されていて、当面は両端部の線路のみ使用し、東横線との相互直通運転開始時に4線が使用されるとのことです。工事の進捗は、土木躯体工事とレール敷設がほぼ終了し、駅構内エスカレータの設置と電気工事を待っている状態で、道路下では土砂の埋戻し中でした。環境に配慮し、自然換気を取り入れ、地上から地下4階のホーム面まで吹き抜け構造として、快適な空間を提供する駅計画となっており、完成が待たれるところです。
新宿三丁目駅見学
 渋谷駅の構内見学後、東京メトロさんの計らいでワゴン車、タクシーに分乗して渋谷駅から新宿三丁目駅(高島屋前)まで移動し、新宿三丁目駅の現場構内を見学させていただきました。高島屋前から花園神社前まで800mも続く地下回遊通路にもなっており、明治通り下に開削工法にて2層3径間箱型ラーメン(躯体断面 高さ約12m×幅約18m)です。13号線は地下鉄で初めて急行列車を運行する計画になっていて、急行停車駅として工事が進められていました。
 都営新宿線と丸の内線との中間部を通る形で構築され、現在の工事進捗は、土木躯体工事とレール敷設がほぼ終了し、駅構内エスカレータの設置と電気工事を待っている状態で、道路下では土砂の埋戻し中でした。バリヤフリーに最大限配慮され、人と環境にやさしい地下鉄建設をめざしていることがあらためてわかりました。
副都心線展示室
 新宿三丁目駅の構内から出た所、花園神社横にある新宿工事事務所内に「わかりやすい地下鉄建設」を目指して、「副都心線展示室」を設置していて、副都心線のジオラマや建設機械の模型、地下鉄の歴史パネルなどが多数展示してあり、地下鉄の作り方や歴史、副都心線の計画について専門以外の方にもわかりやすく配慮され展示されていました。

 今回、見学させていただいた現場並びに展示室は、副都心地区の交通の頻繁な場所で一般に目にふれることなく地下構造物が構築されるという土木構造物の最先端を認識するのに十分な見学会となりました。
 最後に、東京メトロさんの西村所長さんをはじめとして丁寧に説明をしていただきましたことに感謝申し上げます。                              (
吉宮和紀 記)


 
  
【写真−1】西村所長による説明       【写真−2】見学会参加者

 

 平成19年 6月 見学会報告

  日 時:

 平成19年6月28日(木) 11時〜18時30分

 見学先:

 独立行政法人 土木研究所
 国土交通省 国土技術政策総合研究所

 

 

 説明者:

 土木研究所 田所主査、国総研 箱石上席、松本企画係長他、(杉田上席、田中主研、諸田研究官、今村研究官)

参加者

 34名(東京発32名、現地集合2名)

 報 告:

 見学会の開催日は、梅雨のまっただ中にありはっきりしない天気でしたが、心配された雨も一時的で、むし暑い中、汗を拭きながらの見学会となりました。
 東京駅鍛冶町駐車場バス乗り場には32名が集合し、予定通り11時ちょうどに出発することができました。常磐自動車道守谷SAにて車中で昼食をとり、つくば駅で電車で到着した2名と合流し、1時過ぎに余裕を持って土木研究所に到着しました。
 はじめに、土木研究所の講堂にて企画部研究企画課田所主査に、全体の行程をご案内いただきました。続いて箱石上席から、平成18年4月に改組された土木研究所と国土技術政策総合研究所について、使命と役割、職員数・予算、組織、中期目標・計画、重点プロジェクト研究、近年の活動の成果、重点的研究課題、実施中のプロジェクト研究、終了したプロジェクト研究、情報発信の取り組みなどについて説明して頂き、短い時間の中で両研究機関の全容を把握することができました。
 再びバスに乗って、広大な敷地に広がる実験施設の視察を行いました。
● 三次元大型振動台
 テーブルの大きさが8m×8mの振動台で、加速度2G、最大振幅60cmで任意波形の加震ができ、日本で起きたすべての地震が再現できるものです。この施設は民間もレンタルで使用することができ、振動台の横では、住宅の耐震性能を評価するための実物大の模型を建築中でした。
●  輪荷重走行試験器
 実際の輪荷重の走行を再現するため、車輪による加重を付加させた状態で載荷装置を移動させるもので、実験中の状態を見せて頂きました。
 鋼製床板の上を15rpmで輪荷重が大きな音を立てながら往復する載荷試験はとても迫力があるものでしたが、載荷試験が何ヶ月も続くこともあるとの説明を受け、このような地道な試験の裏付けがあってこそ、安心して使用できる土木施設を造ることができることを確信しました。
●  ダム水理実験施設
 大正15年内務省土木試験所赤羽分室の設置に始まり今日に至る土木試験所の歴史の説明を受け、続いてダム水理実験施設を見学しました。
 大きな実験棟の中にダムの洪水吐きや放流設備、土砂を流すダムなどの複雑な流れの解明や計測を行うための模型実験施設がところ狭しと造られていました。そのうちいくつかの模型には通水していただいており、その流れる様を見て、模型実験でなければわからない現象があることを実感しました。
●   試験走路
 延長6152 mの試験走路をバスで走行しながら、騒音を低下させる舗装、路面散水実験、照明実験、道路標識、降水、衝突など、各種実験施設の説明を受けました。
 走行路には2つの大きな横断勾配を付けたループがあり、そのうちの北ループでバスの外に出て、カーブにおいて高速走行する車両にいかに大きな勾配が必要かを体感することができました。
●   ITS(高度道路交通システム)
 ITSの開発および実用化の取り組みとして、AHS(高度走行支援道路システム)技術を用いた実用化に向けての研究・開発の状況を説明して頂きました。屋外には車載器が搭載された実車が2台展示されており、近未来の利用を想像できるよう配慮されていました。

※今回見学させて頂いた施設は、両研究所の数ある実験施設の代表的な一部ということでしたが、土木実験の役割と必要性を認識するのに十分な内容で、充実した見学会となりました。それぞれの施設では、ご担当の研究官からわかりやすく、丁寧に、熱の入った説明をして頂きましたことに感謝申し上げます。(
小川義忠 記)

  

 

 平成19年 4月 見学会報告

  日 時:

 平成19年4月23日 (火)  13時30分 〜 16時30分

 見学先:

 横浜市: 都筑区センター北駅・川和車輌基地   緑区中山駅

 

 

 説明者:

 横浜市交通局高速鉄道建設部  講師:伊佐見工事事務所長 他9名が対応

参加者

 

 報 告:

 東急東横線日吉駅とJR横浜線中山駅間の横浜市北部13.1KMに亘り建設中の地下鉄グリーンラインは、現在、平成20年3月開通予定で工事の最終段階となっている。構造物については、トンネル部工事はほぼ完了し、駅舎工事の段階である。又、一部の完成路線を利用し最新のリニヤ方式を採用した試運転が行なわれている。今回は、このラインの計画から開業までの状況、問題点等を伊佐見所長より説明を受けると共に、車輌、車輌基地、シールドトンネル、中山駅部、等を見学、説明を受け、その場所場所で質疑応答を行った。(見学会幹事吉田記)

建設工事全体について
 横浜市北部の日吉〜中山間は、近年都市化された地域であり、かつ横断する鶴見川一帯は、有名な軟弱地盤地帯あるといった不利な条件下での地下鉄新線建設工事である。この新線建設に当たり、リニヤ方式の採用により路線の急勾配、急カーブによる地盤、用地対応、車輌の床面を低く押えることによりトンネル等の断面を小さくする等により建設コストを押えていることが良く理解できる。又、車輌基地の下部を鶴見川遊水地として利用するといった、行政の枠をこえた斬新なことが行われている。

個々の工事について
 駅舎部の大断面ナトム工法、複線シールドトンネル、地下水脈遮断対応対策等の最新技術が駆使されていることがよく解った。車輌、駅舎等についても構造、機能の面からも利用者に対しの「安全性、快適性」についてよく配慮されていることが理解できた。

 




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