このたび平成12年4月26日に技術士法の一部を改正する法律が公布され,技術士が職業倫理を備えることを求めると同時に,技術士の資質の一層の向上を図るため,資格取得後の研鑽が責務として明文化された。
すなわち,職業倫理に関しては,「技術士又は技術士補は,その業務の遂行に当たっては,公共の安全,環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない」(技術士等の公益確保の責務)と明文化され,また,技術士の能力維持・向上に関しては,「技術士は,常に,その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ,その他その資質の向上を図るように努めなければならない」(技術士の資質向上の責務)とされた。これによって,技術者資格の国際的な相互承認への対応に向けて国際的整合性も充実した。
技術士の資質向上については,(社)日本技術士会は従前より積極的に指導支援してきたが,これを契機に,(社)日本技術士会は,技術士法改正に対応して会員のみならず,わが国の技術士のCPD
(Continuing Professional Development:継続教育) に関する事務の中心的機関として,技術士のCPDを関連学協会等と連携協力してより一層支援するために,CPDに関する基本的な実施方策を以下のとおり定める。なお,この実施方策は必要に応じ適宜見直すこととする。
2.目的
技術士は,専門職技術者として,次のような視点を重視して,CPDに努めなければならない。
<技術者倫理の徹底>
現代の高度技術社会においては,技術者の職業倫理は重要な要素である。技術士は倫理に照らして行動し,その関与する技術の利用が公益を害することのないように努めなければならない。
<科学技術の進歩への関与>
技術士は,絶え間なく進歩する科学・技術に常に関心を持ち,新しい技術の習得,応用を通じ,社会経済の発展,安全・福祉の向上に貢献できるよう,その能力の維持向上に努めなければならない。
<社会環境変化への対応>
技術士は,社会の環境変化,国際的な動向,並びにそれらによる技術者に対する要請の変化に目を配り,柔軟に対応できるようにしなければならない。
<技術者としての判断力の向上>
技術士は,経験の蓄積に応じ視野を広げ,業務の遂行に当たり的確な判断ができるよう判断力の向上に努めなければならない。
3.技術士CPD(継続教育)の形態
技術士CPD(継続教育)には多種多様な形態が考えられ,個々の技術士は,自主的研鑽に最も適したものを自主的に選択して実行すべきであるが,そのCPD形態の選択に当たってはできる限り第三者の立場からも研鑽実績として認定され得るものであることが望ましく,以下に述べるような形態が主な対象として考えられる。
(1)研修会,講習会,研究会,シンポジウム等への参加
日本技術士会,関係学協会(学術団体,公益法人を含む),大学等,民間団体及び企業が公式に開催するもの
(2)論文等の発表
研修プログラム及びOJT政策が明示されていて,成果が明確なもの
(4) 技術指導
業務上で特に技術的成果をあげた業務,学協会,民間団体,企業等の表彰を受けた業務,特許出願した業務など
(6)その他
4.技術士CPDの課題
技術士CPDの修得すべき課題としては,次のものがある。
A. 一般共通課題
(1)倫理
倫理規程,技術倫理(技術の人類社会に与える長期的・短期的影響の評価を含む技術士に課せれられた公益確保の責務など)
(2)環境
地球環境,環境アセスメント,環境課題の解決方法など
(3)安全
安全基準,防災基準,危機管理,化学物質の毒性,製造物責任法(PL法)など
(4)技術動向
新技術,品質保証,情報技術,規格・仕様など
(5)社会動向
国内,海外動向(国際貿易動向,GATT/WTO, ODAなど),商務協定並びに技術に対するニーズ動向など
(6)産業経済動向
内外の産業経済動向,労働市場動向など
(7)規格・基準の動向
ISO, IECなど
(8)マネージメント手法
工程管理,コスト管理,資源管理,維持管理,品質管理,リスク管理など
(9)契約
役務契約,国際的な契約形態など
(10)国際交流
英語によるプレゼンテーション・コミュニケーション,国際社会の理解,各国の文化及び歴史
(11)その他
教養(科学技術史など),一般社会との関わりなど
B. 技術課題
(1)専門分野の最新技術
専門とする技術,周辺技術など
(2)科学技術動向
専門分野,科学技術政策,海外の科学技術動向など
(3)関係法令
業務に関連ある法令(特に改定時点)
(4)事故事例
同様な事故を再び繰り返さないための事例研究ならびに事故解析など
(5)その他
5.CPD提供機関
CPDの場を提供する機関,団体は以下が主催するものを主とする
(1)技術士会(各支部,部会,委員会,調査委員会,プロジェクトチーム等を含む)
(2)学会,技術関係協会,産業団体,公的研究開発機関
(3)大学等高等教育機関
(4)民間教育団体・機関
(5)企業(企業内研修,OJTなど)
6.技術士CPD(実績)評価
技術士は,旺盛な知識欲と向上心をもとに継続的研鑚を行なうことを本分としなければならないが,法的な裏付けのある保証品質を確保している証左として,一定期間内に所定のCPD 単位数(CPDに費やした時間に「重みファクター」を乗じた数値)を取得し,履修CPD(継続教育)の実績を以下の考え方に基づいて登録申請することが望ましい。ただし,技術士が日頃従事している職務(例えば大学教官による日常の講義等)は,CPDの対象にならない。
(1) CPDの履修単位と単位の考え方
技術士は,CPDの追加・追記を3年ごとに行うことが望ましい。技術士は,3年間に150時間(実際に費やした時間に重みファクターを乗じた時間)のCPDを行うことが望ましい。
技術士はCPDの履修にあたっては,自己の目標,専門領域・立場に照らして3に示す形態や4に示す課題の特定のものに偏らないようにバランスのとれたものとなるよう心がける。
(2) 時間重みファクターの考え方
CPDとして登録を申請する場合,CPDとして実際に費やした時間にCPDのグレードを勘案した「時間重み係数」(Weight
Factor = CPDWF)を考慮するのが妥当である。すなわち,受講するよりも発表や講師の方が同じ1時間でもCPD効果が高いと考える。なお,論文発表や業務経験,委員会活動については,時間重み係数が馴染まないことから,ある程度の幅を持たせたCPD時間を設定することが実際的と考える。
また,実施に当たっては,以下に示す値を目安とし,社会の動向,状況の変化により,見直すこととする。
7.技術士CPDの推進体制
(1)(社)日本技術士会の推進体制
(社)日本技術士会は,各支部,各部会,各委員会,各調査委員会,各プロジェクト等の内部のCPD活動を統括し,CPD活動の活性化を図ると共にCPD実績登録のための機能を整備する。
(2)関係学協会との連絡協議会
(社)日本技術士会は,技術士CPDの場の拡大を図るため,学協会に広く働きかけ,関係学協会と技術士とから構成される「CPD連絡協議会(仮称)」を設置する。その協議会を通じ,関連情報の円滑かつ迅速な交換を行うことにより,関係学協会におけるCPDの場の利用を支援促進し,利用者としての技術士の声のそれらの場への反映を図る。
(3)産業界への働きかけ
(社)日本技術士会は,CPDにおける企業内研修,OJTその他産業界の果たすべき役割が重要であることから,産業界に対し,CPD活動の認識を高めてもらい,そして積極的に支援してもらうように働きかける。