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金属部会

2008年(H20)7月から12月例会講演アーカイブス

所属は講演当時で示してあります。

2008年7月16日

テーマ:レアメタルの現状と課題
講 師:田中和明氏(新日本製鐵(株)君津製鉄所 品質管理部 薄板一貫品質技術グループ)
(概要)
 講演者は平成8年に39歳で技術士になり、現在、新日本製鉄株式会社君津製鉄所に勤務しております。金属部門の技術士として、金属の歴史から最新の技術動向や金属資源を取り巻く情勢まで、幅広い分野に興味を持っており、講演や執筆活動を通じて、金属の持つすばらしさと可能性をお伝えしようと日々研鑽されております。本日のご講演は、今、世界的な争奪戦が繰り広げられているレアメタルに関する内容をご紹介戴きました。
 レアメタルは、インジウムやネオジムなど聞きなれない元素であるが、液晶テレビや永久磁石など身の回りのいたる所に使われている。レアメタルは、日本の最先端工業において不可欠の元素群であり、大半を海外から輸入している供給不安定な元素群でもある。
 本講演では、レアメタルの種類や利用形態、供給国などの基礎的な話題から始まり、レアメタルの持つ需給問題について現状の説明を行い、今後の課題について展望を述べた。
 レアメタルは、存在国が偏在していたり、希少であったり、精製が困難であったりする31鉱種47元素の総称である。レアメタルの利用形態は、鉄鋼、銅、アルミニウムなどコモンメタルの添加物としての使用するものが最も多く、半導体や磁石や超伝導素子など電子・磁性材料に用いられたり、ITO(透明電極材料)やセンサー、発光素材など機能材料に用いられたりしている。現代産業の最先端技術はレアメタルが支えている。
 レアメタル供給を取り巻く状況は、資源国の工業化による輸出規制、より付加価値の高い製品への加工、資源ナショナリズムの台頭など深刻なものが多い。こうした背景から最近ではレアメタル価格の暴騰が発生し、供給不安定を招いたりしている。
 今後の課題は、レアメタルの安定供給、代替資源や代替元素の確保が挙げられる。安定供給のためには国際協調体制による海外資源の確保や国内備蓄の充実などの資源セキュリティの構築が不可欠である。レアメタルは、使用製品の性能向上や寿命延長による使用量の削減、元素戦略や希少金属代替材料開発など政府主導の研究活動によるユビキタスな元素への転換、都市鉱山や都市鉱床などの概念で語られるリサイクル体制の確立など、高度な技術、困難な技術開発が必要な課題に直面している。さらに、これまで経済的合理性から省みられなかった国内鉱山の再開発や海底資源の利用、劣質資源などの活用など、金属関係者がなすべき課題が山積している。
 環境問題では、CO2削減のために燃料電池の利用や太陽光発電などへの期待も大きいが、大多数の対策がレアメタル使用量の増加を招く。現代産業の大転換期にさしかかかっている現在、レアメタル問題の解決に残された時間は限られている。産学官はこれまで以上に協同すると同時に、相互交流を深め、レアメタル供給不足解決に向けた対応策を加速する必要がある。技術士はその仲介役としての役割を果たして行かなければならない。

2008年8月20日

幹事会
場所:ニューオタニイン東京「ももきりの間」
出席者:20名
日本技術士会専務理事、西村文夫様
金属部会幹事;大山、奥村、浦辺、神戸、小林、斎藤、笹口、芝崎、清水、神藤、高田、中山、中村、萩野、松田、森、山崎、吉武、渡辺
議事
1.公益法人化に関する意見交換(金属部会会則など)
2.全国大会並びに見学会について
3.その他

2008年9月17日

1.講演会
テーマ:ものつくり事前検討技術・CAEの現状(ダイカスト鋳造CAEの現状)
講 師:藤田賢二氏(藤田企画 代表)
(1)自己紹介
 講師はS42年日立金属入社。非鉄金属鋳造関連の仕事に従事し、特にアルミ、マグネダイカストのエンジニアとして製造、型設計、生産設備設計、適用製品の開発を経験した。
 S47年〜48年に米国のダイカストの実情調査・勉強に渡米し、H6年〜H13年成形用金型関連の研究開発に従事、H14年以降ダイカスト金型、樹脂金型の製造販売・技術開発などを行ってきた。
 社外活動としてH10年に埼玉県「金型研究会」の立上げに参加、所属H13年に日立技術士会入会、H16年に(社)日本技術士会入会と埼玉県技術士会入会した。H19年退社後「藤田企画」を設立しH19年 埼玉県「ものつくり研究会」(旧「金型研究会」と「NC工作研究会」を合併させたもの。)の立上げなどに参加、本年、H20年4月奥村貞雄氏のお誘いを受けて金属部会へ入会した。
(2)内容の要約
 本日発表は「ダイカスト鋳造CAEの現状」として[1]ダイカスト鋳造解析、[2]金型構造解析を、そして更に発表者がつかんでいる開発途上の解析技術の一部を紹介する。
 国内ダイカストは、市場シェア80%を占める自動車産業の伸びにあわせ90万トン/年を超える規模まで成長した。日本のダイカスト技術は今や世界で最も優れている。しかし金型産業全体で占める割合はプレス金型35%、プラスチック金型37%と比べてダイカスト金型は7%と少ないなど、産業のビジネス環境を技術面とコスト面から分析した内容を説明する。
 技術面については、1970年代に起こったモータリゼーションによって爆発的に成長し今日に至っている。車産業は永遠のニーズ「低燃費化」実現のため、構成部品の軽量化を強く求めてきた。ダイカストによって(1)アルミ材へ材質変更が容易になり(2)ニアネットシェイプに成形でき(3)安価で大量生産に向くプロセスであるため、自動車部品の生産に最適なプロセスの一つとして採用され、適用アイテムの拡大が貪欲に求められた。
 アイテム拡大のニーズは、(1)大型製品生産可能な設備、(2)機能として耐圧性や材料強度、品質信頼性の著しい向上、(3)高い生産性を強く求めた。その結果、鋳造技術、鋳造設備、自動化機器、工程能力を高める制御技術を発展強化させ、これらの技術力は世界最高峰にある。具体的には[1]大型で高剛性、射出応答特性に優れるダイカスト鋳造機を開発、[2]動作制御に優れる自動化機器、[3]過酷な条件化でも耐久性に優れる金型材料と金型表面処理[4]工程能力を保証するため鋳造諸元を計測する技術と制御技術  を産み出した。更なる競争力強化を目的に事前検討技術CAEの発展を求め開発実用化に努めているが、まだ未完成である。以上のダイカスト技術の中で、特に金型設計や鋳造諸元の決定には、未だに経験に頼る暗黙知が多く残され、トライ一発で合格できるレベルに達していない。開発から生産着手までに必要な時間は大型自動車ダイカスト部品の場合、通常4ケ月から6ケ月が現状である。これを解決する有効な武器としてダイカスト鋳造CAEが脚光を浴びている。一方、コスト面からみると、中国他、低賃金国からの追い上げが厳しいのはこの業界も例外ではない。特に金型は、顕著な傾向を示している。金型の主要顧客自動車産業は激烈な国際競争下にあるのは周知の通りである。金型産業も前述の様に生き残っていくにはCAD/CAE/CAM/CATの一元利用による「安い、速い、良い金型」造りや、特に、事前検討技術CAE活用によるトライ一発金型造りは有効な武器であろう。これからの一層の研究開発が望まれる。

2.旧曾木発電所創立100周年記念イベント(レンガサポーター)報告
報告者:名誉部会長 吉武進也
(1)DVDによって、旧曾木発電所が明治42年に日窒コンチェルン創業者の野口遵氏によって建造された歴史とその建設に努められた方々の紹介はじめこの歴史的建造物が湖底に沈み一年に3ヶ月ほど全貌をのぞかせる姿、その復元のために故高城様はじめ多くの方々の努力によって、脱落したレンガの復旧がなされた現状までを映像でまとめられ、大口市周辺の観光地などの内容が紹介された。(平成18年3月に旧曾木発電所本館、ヘッドタンクが国の登録有形文化財に登録。)
(2)吉武名誉部会長が2008年8月23日に鹿児島県大口市の旧曽木発電所建造100周年記念プレイベントの長寿レンガサポータープレート除幕式と記念講演会に高橋会長、西村常務理事など社団法人日本技術士会の役員ともども参加された。除幕式の状況や記念講演会で高橋会長が「水力発電と電気化学工業」の演題で講演をされたこと、故高城氏の奥様などと懇談し、地元有力者や主催者のNPO法人会長出来場洋氏などとの意見交換や交流会などが実施された当日の状況などのほか近くにある曾木の滝など名勝地の紹介がされた。

2008年10月17日

見学会
見学先:日立金属(株)安来工場見学会
(1)金属部会の紹介;
 金属部会幹事奥村貞雄氏から見学会参加者の紹介並びに金属部会の活動状況などについて説明した。
(2)安来工場のご紹介;副工場長 長谷川正人様
 「ヤスキハガネ」はわが国最古の歴史と伝統を持つ鋼であり、ヤスキの「キ」は濁らないが、安来は「ギ」とにごる。もともと地名としては濁っているが、製品ブランドとして濁るのはイメージが悪いとの理由で「キ」としたとのことである。
 現在の主要生産品は工具・刃物材料たとえば、各種金型材料、剃刀の刃、高級刃物、切削工具などで、剃刀の刃は世界の約2/3のシェアを占めるほか自動車部品材料は、エンジンバルブをはじめピストンリング、フラッパーバルブ、ベルト材など信頼性が要求され、疲労強度の高い材料が自動車メーカーのトヨタ、ホンダさんなどから要求される。
 エレクトロニクスのデバイス用部品はシャドウマスク、リードフレーム、スパッタリングターゲット材、PGA用金属球などがある。そのほかに航空機用やエネルギー材料として、タービンディスクやタービンケース、耐熱シャフトなどの部品があり、いずれも高信頼性が求められている。
 本工場は1899年に雲伯鉄鋼合資会社(後、安来製鋼所)として設立、1937年に国産工業、日立製作所に吸収合併され、戦後、日立金属工業(株)として日立製作所全額出資の会社として分離独立したもので日立製作所より歴史の古い工場である。
(3)冶金研究所の紹介;所長 坂本大司様
 「特殊鋼分野では世界一を目指す!」を合言葉として他に類のない材料、合金組成を独自の加工プロセス技術で作り上げたいと考えている。冶金研究所は1934年に始まり74年間、我が国で最も長い歴史があり、工具鋼、耐熱合金など様々な材料の合金設計技術による開発を行っている。高温疲労特性や強度の優れたエンジンバルブ材などの組織制御やナノメタラジーによる超工具鋼の開発など理想に近かづける開発を行っている。またUDS法という溶融金属に振動を与えて真球状のPbフリーのはんだボールの製造、PDRという熱プラズマ液滴精錬によるTa、Ruターゲット材のリサイル、RVDによって積層金属箔の蒸着接合、エッチングによるバンプ形成などの技術開発を行ってきている。
(4)ビデオによる安来工場の紹介;
 安来鋼は〜伝統と新技術の調和による〜「ヤスキハガネ」として広範囲の用途、工具や金型を始め高強度自動車部品、航空機、エネルギー、電子工業など広範囲の製品を製造し、その製造現場、溶解、熱間圧延、冷間圧延、新素材、品質管理、電気アーク、真空アーク再溶解(VAR)、エレクトロスラブ再溶解(ESR)の工程の紹介や大型熱間油圧プレスによる鍛造加工、プログラム制御による6段圧延ミル、熱間圧延、線材ミル、小径丸線などが紹介され、線の熱間伸線では4.5mmは世界最小径である。
 インライン熱処理、熱処理後の急冷、鋼の細かな温度管理、縦型連続熱処理炉、曲がりのでない熱処理など各種の熱処理設備と冷間圧延、特殊製線、孔型ロール、帯鋼工程、スリット加工などにより剃刀、ピストンリング、電子部品(リードフレーム)用素材の生産や粉末プロセス、大型ターゲット、工具の表面改質、表面コーティングなどが紹介された。
(5)工場見学;
[1].熱間鍛造:
 4,000トン(据え込みMAX4,600トン)の三菱製油圧プレスにて10〜15トンの八角形の鋳造インゴットの上下方向から熱間据込みや縦横方向からの鍛造を一人の作業者により、大型のマニピュレーター操作によって鍛造加工をして、角ビレットに成形していく現場を見学した。
[2].成形、線、異型材:
 2ラインにて3,000トン/月の3直2交代体制で生産している。500Kgのビレットを1,000-1,500℃に加熱後2ロールのタンデムリバース圧延によって、縦、横、楕円丸と圧延する。中間ブロックミル(3ロール)では異型のY型などの成型をしている。また線材ミルでは連続焼鈍炉によって真空焼き入れ、焼戻しなどが行われている工程を見学した。
[3].帯鋼:
 270名で3直2交代の生産体制、工程は、酸洗い→圧延→表面研磨→中間圧延→軟化焼鈍→冷間圧延寸法出し→条取り→歪取り焼鈍→検査→梱包の工程である。
 鋼板は400mm幅以下とそれ以上の幅広ラインがある。6段圧延機では厚み測定をX線透過測定と形状測定器でモニタリングし、中間ロールを移動させて、寸法、形状を制御している。又、条板の切断は幅2mm〜35mmまでの範囲をスリッターで切断するが、刃先寸法のクリアランス調整は、現在も熟練者の目に頼って行われている。熱処理炉は800℃〜1,000℃で、析出、歪取りなどお客様の要求に合わせて実施している。長尺の条板を20〜30mの高さに上げて、上から加熱しながら下部で巻き取りながら冷却する。雰囲気は不活性ガスAXガスや水素ガスが使われる。
[4].特殊製線工程:
 1,000トン/月を200名の3直2交代で生産している。自動車、エレクトロニクス、工具関係の材料を製造しているが、ピストンリング用は素材の約6割を占め、その他はベアリングボール、エンドミル、ドリル、タップなどの素材である。伸線は熱間で5.5mmφしたものを、表面をシェービングにより皮?きし冷間伸線、焼鈍する。タンデム圧延機で丸線を平角にして矩形線、幅方向の寸法を一定にそろえる。最近はピストンリングの生産が増加して、連続焼鈍炉を新設した。この炉はステンレス中心の熱処理で温度を780℃と一定にして、炉の長さを長く取り、供給速度を変化させることによって材料ごとの条件を決めている。各線は1本ずつをパイプに通して水素ガス中で熱処理される。
[5].試験センター:
 製品の品質管理として材料強度は引張り強やミクロ組織試験とレーザー表面検査装置によって表面の品質を確認、主要部品の内部欠陥に対しては水浸式超音波探傷機や素材には渦流探傷機などを使用し検査している。
 冶金研究所では「オンリーワン技術の開発」を目指し、疲労評価試験やプラズマの高融点材料開発、反射率の測定などを実施いている。また、技能養成所においては若い人の教育などに努めている。
(6)和鋼博物館の見学;館長 八十致雄様のご案内
 1階にある映像館にて日本古来の「たたら製鉄」の技術が映像で紹介された。国の選定保存技術保持者である村下の真砂砂鉄を木炭の炉内に30分ごとに投入し、3日3晩一睡もしないで、火力や炎の状況を観察しながら玉鋼の原料を作る、すさましい操業状況が紹介された。現在は、二代目の木原氏が村下として、その跡を継ぎ活躍し、現在全国の刀匠、約200人にこの玉鋼の供給をされている。
 古代、中世、近世まで約1,300年間、日本の鉄の供給の中心であったが、明治34年に海外の製鉄法が導入され、輸入品などのよって衰退し、大正時代に停止した時期があるが、昭和8年に軍刀用として玉鋼が供給された。これは終戦により廃止され、その後、阿部氏(村下)が75歳の時、このたたら製鉄の技術の復活を果たし、現在に至っている。
 展示場には「たたら製鉄」の歴史や天秤ふいご、たたら製鉄で使用した用具とその製造工程などが紹介されている。また、たたら鋼の研究をされた俵国一博士の研究の著書や遺品などが展示してある。日本刀なども展示されていて、その断面なども写真などで詳しく紹介されている。また、実際の玉鋼が半溶融状態で破砕され、良質の刀にできる部分とそれ以外は他の用途に使われる部分が一目了然できる展示がされている。

7.懇親会(日立厚生館)
日立金属(株)出席者
 坂本大司氏(冶金研究所所長)
 長谷川正人氏(安来工場副工場長 兼 生産技術部部長)(技術士)
 八十致雄氏(和鋼博物館館長)(工学博士、技術士)
御礼の挨拶:金属部会長 清水 進
乾杯:金属部会名誉部会長 吉武進也
手締め:是永 逸生(九州支部・機械) 元日立金属(株)工場長
*懇親会は和やかな中に有意義な情報交換ができ、日立金属(株)安来工場様のご厚意によりまして山海の珍味と地元の銘酒「玉鋼」などを堪能させていただき、大変楽しい懇親ができましたこと深く感謝致します。

8.見学会出席者
 畠山正樹氏(前常務理事)、田中和明氏(金属)、渡辺孫也氏(金属)、板垣純司氏(金属)、平野富夫氏(金属)、上野英生氏(金属)、大山光男氏(金属)、藤田賢二氏(金属)、出羽昭夫氏(金属/中四国支部)、奥村貞雄氏(金属)、山崎宏氏(金属)、佐川渉氏(建設、原子力・放射線) 神戸良雄氏(金属)、吉武進也氏(金属)、是永逸生氏(機械/九州支部)、清水進氏(金属)、堀川浩甫氏(金属)、植田幸男氏(建設/中四国支部)、芝崎誠氏(金属)、笹口裕昭氏(金属)、泉館昭雄氏(電気電子/九州支部)

見学先および懇親会参加者による集合写真(拡大画像へのリンク)

見学先および懇親会参加者による集合写真

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2008月11月19日(水)

テーマ:塗装アルミ二ウム合金の糸状腐食について」
講 師:野坂恵介氏(野坂技術士事務所)
(概要)
 講師は昭和36年に横浜国立大学を卒業、富士製鉄(株)(昭和45年3月31日合併により、新日本製鉄(株))に入社以来、電気めっきの研究を中心にして、主に容器用表面処理鋼板の製造、研究等に従事した。その後、塗覆装鋼管、建材用カラー鉄板、薄板技術サービスなども担当した。さらにその後、(株)日鉄テクノリサーチにて各種技術調査に従事し、アルミニウム合金の腐食にも関与した。平成19年4月に技術士登録し、平成20年には放送大学の産業と技術専攻を卒業されて、現在に至っている。ここではアルミ二ウム合金の糸状腐食の考え方が変化してきているので、その腐食のメカニズムや腐食促進試験の方法、腐食の成長反応及び腐食原因調査などについての現状を説明された。
 アルミニウム合金は塗装、表面処理などを施した上で使用される場合が多い。その際に問題とされる腐食のうちでも、糸状腐食は環境中の海塩粒子や湿度、温度などが関与する特殊な腐食である。この糸状腐食は通称「糸錆」と呼ばれ比較的新しく分類されたもので、原因が特定されていない分野である。本講演は自動車車体用アルミニウム合金の糸錆性についての試験結果と、主にヨーロッパにおいて研究されている最近の技術内容の紹介があり、今後の技術開発の参考となる未公表資料を含めて説明された。
 糸状腐食は、初めて系統的に調査がはじめられたのは1944年であったが、大きな問題になったのは、1960年代に熱帯地方を飛ぶ航空機の胴部や翼のビレット付近に発見されてからである。当時、クロメート処理や、陽極酸化などの表面処理が有効であることが判明し、とりあえず解決されたとみられてきた。しかし1990年代になってヨーロッパの海岸地域の建築物に使われたアルミニウム合金に糸状腐食が発生し、大きな問題になった。2000年代には、自動車車体にアルミニウム合金を採用する動きがでてきた。
 糸状腐食を再現するには、特定の環境条件が必要であり、促進試験方法としては、濃塩酸(気体)に1時間曝し、湿潤験機(40℃、82RH)20日、40日後に評価するLockheed法が有名である。
 今回、糸状腐食促進試験と暴露試験を同時に行い、糸状腐食の再現性について調査を行った。その結果、アルミニウム合金中のCuの含有量の影響などを確認することができた。今後、アルミニウム合金の用途拡大のためには、腐食に関するデータが必要であり、糸状腐食に関しても、逐次データベースを拡充していく必要があると思われる。
 糸状腐食に最も有効と思われてきたクロメート処理は環境問題などにより、規制される状況にあり、無公害な、耐糸状腐食性の優れた表面処理の探索研究が続けられている。糸状腐食は主にヨーロッパにおいて問題になり調査されてきたが、最近ではアメリカでも関心が高まっている。最近の研究傾向は、アルミニウム合金中の金属間化合物と母材との間で、状況によってアノーディック、カソーディックに変化することによる腐食や、表面活性層(1μm)の影響、アルミニウム合金成分としては考えられないPb、Cuなどが腐食に関与するなど、に関心が集まり、調査されている。

2008年12月17日

幹事会
出席者:19名
大山、奥村、神戸、小林、斎藤、芝崎、清水、神藤、高田、田中、中山、中村、萩野、平野、松田、森、山崎、吉武、渡辺
議事
1.金属部会の幹事、常設委員、実行委員に関する相談
2.金属部会・若手技術者の会発足及び機関紙発行について
3.平成21年金属部会・化学部会・応用理学部会合同見学会のご案内
  「ノーベル物理学賞受賞記念見学会」
4.各委員会からの報告

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