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建設部会

2024年1月 建設部会現場研修会(報告)

■日 時:2024(令和6)年1月30日(火)8:30〜18:00
■研修場所:南摩ダム本体建設工事現場(栃木県鹿沼市上南摩町)
■説 明 者
・独立行政法人 水資源機構 思川開発建設所 竹内 裕治 ダム工事課長
・独立行政法人 水資源機構 思川開発建設所 大村 朋広 事業調整役
■参加者:22 名(会員 21 名、非会員 1 名)

1.はじめに
 数十年に1度の重大な危険が差し迫った異常な状況を表す『特別警報』が頻発している。予測不能な大規模災害が全国各地で当たり前に発生する中、思川開発事業の中核的な役割をになう南摩ダム本体建設工事について、水資源機構思川開発建設所並びに大成建設株式会社のご協力により、思川開発事業の概要、南摩ダム本体建設工事の進捗状況及び堤体盛立、フェイススラブ(コンクリート遮水壁)等の施工状況について現場研修の機会をいただいた。

2.現場研修内容
(1)説明ホールにて
 最初に思川開発建設所の事業調整役の大村様より思川開発事業について講義をいただいた。
1)南摩ダムの概要
 南摩ダムの所在地は、栃木県鹿沼市上南摩町、河川名は利根川水系南摩川である。ダム堤体は、コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム(CFRD)、堤高は86.5m、堤頂長は359m、総貯水容量は5,100万m3。南摩ダムの堤体に採用したCFRD形式は、国内のロックフィルダムで広く採用されている、堤体内に土質材料からなるコアゾーン(土質遮水壁)を設置して遮水する土質遮水壁型ロックフィルダム(ECRD)とは異なり、堤体上流面のコンクリート壁(フェイススラブ)で遮水する構造である。
2)思川開発事業の目的
 思川の支川南摩川に南摩ダムを建設し、洪水を調節するとともに、思川支川の黒川、大芦川にそれぞれ取水放流工を設置して、これらの施設と南摩ダム貯水池を導水路で結び、水を融通しつつ効率的な水資源開発を行うことを目的としている。

(2)ダムサイトにて
 ダム工事課長の竹内様より、南摩ダム本体建設工事の進捗状況及び堤体、洪水吐き、利水放流設備、水力発電設備、フェイススラブ等の施工状況について講義をいただいた。
1)堤体について
 堤体積は約240万m3であり、堤体材料には堤体の上流約2.5キロメートルに位置する原石山から採取したロック材を使用している。内部ロック材は主に堆積岩類のチャート、外部ロック材には堅硬で緻密な火山岩の玄武岩を使用している。
 ロックフィルダムの堤体は、経年的に沈下・変形が生じるため、CFRD形式である南摩ダムでは盛立施工段階において施工中の沈下を促進させ、盛り立て完了後の堤体の沈下・変形を最小限に抑えることで、フェイススラブの変形量を抑制する薄層転圧工法(材料を薄層で敷き均し、締め固める施工仕様)を採用した。
2)洪水吐き
 洪水調節は自然調節方式で、ダム地点の計画高水流量は130m3/s、そのうち125m3/sをダムに貯留し、5m3/sを洪水吐きから放流する計画である。
3)コンクリート表面遮水壁について
 遮水壁のブロック幅は15m、止水板は鉛直・水平継ぎ目のすべてに銅製止水板を採用し、コンクリートの収縮やジョイントの目開きに追従させる構造としている。ひび割れが発生したときの伸長を防止するため、上下2段にD19の鉄筋を250mmメッシュに入れている。
 コンクリート打設は毎時2mの速度で上昇する移動式型枠(スリップフォーム)で行い、最大斜面長約160mのブロックでは4日間連続で施工する。締固めはスリップフォームに搭載している半自動バイブレーターと人力の併用により行っている。特に端部や狭い箇所は人力により十分な締固めが行われている。また、コンクリートの表面はコテ仕上げを行い平滑な面となっている。
 フェイススラブに適したコンクリートの選定においては、受注者の大成建設様よりコンクリートの配(調)合の技術提案をいただき、良質なコンクリートの打設が実施できている。
 養生の方法は、断熱マットを使用して水和熱をしっかり保温し、後追いでバルーン養生を行い、ジェットヒーターから温風(35℃程度)を給熱することで行われる。給熱期間は、初期凍害を防ぐために5日間程度(圧縮強度5N/mm2程度)、その後2日間は断熱マットで養生し急冷を避けるよう留意している。
 コンクリート遮水壁は1ブロック完成まで連続打設を行うため、厳しい気象条件の場合はコンクリートの打設予定の変更を検討する。また、コンクリート打設中に急な降雨があった場合には、大型テントによる打設面養生や打設速度の変更などの措置を行い対応している。
 コンクリートの施工計画は、細部にまで工夫や配慮がされていることが説明を受けて感じた。

3.おわりに
 気候変動への適応やカーボンニュートラルへの対応のため、治水機能の強化、水力発電の促進への理解が深まった。水災害の激甚化・頻発化を踏まえ、ダム運用の高度化、流域のあらゆる関係者と協働し治水対策、防災対策に励まなければならないと痛感した。
 最後に、日常の業務でお忙しいなか現場を案内していただいた、思川開発建設所の竹内様、大村様に心より感謝申し上げます。

講演担当:宮下、片岡、榎本、影山、太田(文責)

写真ー1堤体についての講義状況(拡大画像へのリンク)

写真ー1 堤体についての講義状況

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写真ー2集合写真(拡大画像へのリンク)

写真ー2 集合写真

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