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建設部会

平成28年12月 建設部会 講演会報告

日 時:平成28年12月14日(水)16:30〜18:00
講演名:「インフラ認識と科学的精神〜輝く未来を導くもの〜」について
講演者:大石久和((一般財団法人)国土技術研究センター 国土政策研究所長)
講演場所:日本教育会館 喜山倶楽部(9F)
参加者:66名(会員60名、非会員6名)

1.はじめに
 本講演は、次期土木学会会長に就任される大石久和(一財)国土技術研究センター国土政策研究所長をお招きし、国土学の思想を幅広い視点から講演頂いたものである。

2.講演内容
【国土学】
・「国土に働きかけなければ、国土は恵みを返さない」。国土に働きかけるにあたっては、[1]国土の歴史的形成(時間軸)と[2]国土の国際比較(空間軸)の観点から考える必要がある。

【わが国の経済と公共事業の現状】
・わが国の現代の経済学者は皆アメリカ合衆国の大学へ留学している。しかし、アメリカ式のビジネスモデルはわが国の文化に適応できていない。
・「構造改革なくして景気回復なし」として諸改革を実施したが、経済はまったく成長しなかった。名目GDPについて、アメリカ合衆国は利上げできる程に好調であるのに対して、わが国は低調であり、このままではメキシコ並みの経済力にまで低下する。わが国の名目GDPは1995年の世界3位から2015年の世界26位にまで低下し、名目賃金は1995年に比して87%にまで下がっている。共働き世帯数が増える中、賃金をどのように上昇させていくのかが課題である。
・わが国の一般政府公的固定資本形成費は、1996年比で47.1%、2016年の公共事業関係費は2009年から約2割減少している。
・わが国経済の輸出依存度は対GDP比で10〜20%と高くない。近年の韓国の輸出依存度は対GDP比50%程度である。わが国の高度経済成長は輸出ではなく、内需拡大で成し遂げたものである。
・世界的なグローバリゼーションのサイクルの終わりの始まりという新潮流に対して、わが国はレジーム・チェンジができていない。

【欧米のインフラ政策】
・元NHK記者による著書には、ドイツのインフラ政策が見えていない。ドイツはモビリティに敏感であり、そのインフラ整備こそがドイツの経済的な強みである。ドイツのメルケル首相は、「移動の自由は民主主義の根幹、経済を支える基本」と説いている。ドイツの高速道路網は車線数比率と速度規制において、日本をはるかに凌駕している。

【合理的な思索の蔑視による装備・装置のおそるべき軽視】
・わが国は装備・装置のおそるべき軽視から未だに脱却できていない。第一次世界大戦で近代戦は国力総力戦だとわかったにも関わらず、第二次世界大戦では勝算のない戦いを起こした。それは合理的な思索を蔑視し、事実を踏まえた論理・推論の欠如した情緒に流される議論による。
・「わが国の道路や港湾などはすでに十分に整備された」、「わが国の財政には、公共事業をやる余力がない」、「公共事業には無駄なものがある」などはすべて刷り込み成果であり事実ではない。建設国債を発行してインフラ整備を行うべきである。
・合理的な思索の蔑視は、わが国におけるいくつかの裁判事例にも表れている。それは、裁判官の「判断を下すための知識が欠けていることへの恐れのなさ」、「知識がなければ判断できないという常識の欠如」による。

【資格法の問題】
・弁護士らは法律上「使命」や「品格」が要求されているが、医師や技術士にはそれらが求められていない。改正すべきである。

【国債と公共事業費】
・国債などの公債は、外部あるいは将来への借金というよりも世代内でのお金のやりとりである。国債の負担が後世代に残ることはない。
・税金は問題なしで国債は大問題ありというが、誰の問題なのか。
・政府の会計は、一般税収+赤字特例公債のAと建設公債のBにわかれている。公共事業の資金はすべて建設公債であり、公共事業費を削っても他の予算費目に回らず、また増やしても他の予算費目を圧迫しない。公共事業費削減は内需を減らしてデフレを促進し、経済成長を減速させるだけである。

3.おわりに
 わが国の経済課題を歴史と国際比較からわかりやすくご説明頂き、これからのあるべきインフラ認識を示して頂きました(一般財団法人)国土技術研究センター国土政策研究所長の大石久和様に、心から感謝申し上げます。

写真ー1講師(大石久和氏)(拡大画像へのリンク)

写真ー1 講師(大石久和氏)

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写真ー2講演会の様子(拡大画像へのリンク)

写真ー2 講演会の様子

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