2011年に開催した例会及び講演会の報告等を掲載しています。
川口淳一郎 教授 元(ISAS/JAXA)宇宙航行システム研究系教授
映画化などで話題となっている「はやぶさ」の挑戦についてその指揮を執られた川口教授から直にお話頂いた。小惑星イトカワの調査が地球の歴史や地震の研究に役立つといった調査の意義から始まり、宇宙開発に用いられた技術が民生転換して、例えば写真の圧縮技術JPEGとして生活に役立っていることなどの背景も含めた講演でした。NASAもためらうチャレンジングな計画を日本が成し遂げたこと、また、「リーダーには一芸に秀でた人間を当てるべき」、「これまでに学んだことは演習問題」といった哲学的知見は聞いている人達に感銘を与えました。100名近くの参加者が川口教授の言葉の一つひとつに耳をそばだてて聴き入っていたのが印象的でした。
渡辺春夫 氏 技術士(化学部門)、元ソニー
「はやぶさ」に最初にも搭載されたリチウムイオン二次電池が、世界で最初にSONYで商品化されてから20年になる。その開発の第一線で活躍された渡辺技術士による講演で、電池の特長、充放電メカニズムといった基礎的な話の後に安全弁やPTC(Positive Temperature Coefficient)など安全対策の具体的な説明があった。韓国の追い上げなどの現状の紹介とともに、新規の正極、負極、電解質材料の開発や大型用途への対応など今後の展開が示された。今後自動車での需要を軸に市場の拡大が期待される。
錦谷禎範 博士 JX日鉱日石エネルギー(株) 研究開発本部・中央技術研究所
錦谷先生は、光化学分野での量子化学的基本概念とR&Dアプロ−チを解説した後、有機薄膜電池、色素増感太陽電池等の構造、作動原理、作動機構や発電機構、また有機ELのエネルギー効率、作動原理、構造や動作原理等について説明された。
話の内容のキャッチアップは容易ではなかったが、他方で国内外の研究者間で共同研究がされておりグロ−バルにも一定水準を越えた研究成果が多く出されていること、更に新材料開発にはレベルの高いトライが実際になされていることを再認識し、近年の技術の高度化を実感した。
秋元英郎 氏 技術士(化学部門)
秋元技術士が三井化学(株)時代に開発した「超臨界流体を用いる微細発泡成形技術」が多くの実例と共に紹介された。自動車のサンルーフフレーム、エンジンカバー、カーエアコン操作パネルや電動工具等では軽量化した上で強度を保持し低価格化を達成する必要があるが、NaHCO3等の化学発泡剤やN2、CO2やフロン等の物理発泡剤を超臨界状態で樹脂と混合し低圧下で発泡させると気泡が均一分布して発生し、気泡の体積分だけ軽量になる。この原理、成形法、ベネフィットが紹介された。また独立開業後の体験の紹介もあった。
若手グループ主催(第4回化学部会 休日開催イベント)
内川惠二 氏 東京工業大学大学院総合理工学研究科 物理情報システム専攻教授
川原田雪彦 氏 DIC株式会社 技術士(化学、総合技術監理)
吉成伸一 氏 富士フイルム株式会社 技術士(化学)
概要等の詳細は、下記の添付資料「11月19日:第4回化学部会休日開催イベント報告」をご参照ください。
「産総研つくば エネルギー技術研究部門施設紹介及び見学会:太陽光発電工学研究センター他各種エネルギー最新技術」
10月27日(木)に産業技術総合研究所の「太陽光発電工学研究センター」と「ナノシステム研究部門」の見学会が実施された。研究所では3.11の“東日本大震災”の影響は受けたものの大事には至らず、研究は継続されていた。前半の太陽光発電工学研究センターでは、実際の設置パネルが長期の使用によってどう耐久性に影響が出ているか、後者のナノシステム研究部門では、カーボンナノチューブの金属体と半導体のカラム分離法やプルシアンブルーによるセシウムの高効率吸収等の最近の技術動向が紹介された。(秋葉)
宮山 勝 先生 東京大学先端科学技術研究センター 教授
携帯電話用バッテリー、ノートパソコン、コードレス電動工具、電気自動車等に使用されるリチウムイオン電池への要求項目は、エネルギー密度、高速充放電、コスト低減、安全性である。中〜大型蓄電デバイス・システムの今後の性能向上のために、どのような材料組成、電極材料、電池構成にしたらよいかの研究動向、今後の展開について詳細な情報を聞くことができた。
田中 徹 氏 SBIアラプロモ(株)取締役CTO 技術士(生物工学部門)
ソフトバンク・インベストメント(株)とコスモ石油(株)の合弁会社が、掲題の化合物を生産、用途開発をしている。光合成細菌Rhdobacter sphaeroidesの変異種を用いた発酵法で同化合物を生産しており、医薬品、健康食品、化粧品の他、肥料や除草剤等にも用いられているという。講演内容がとても興味深いものであった上に、同社の試供品を東京本部の聴講者のみならず、Web会議でつながっていた中国地方の聴講者にも送って頂いたことは感謝に堪えないと思った。
岩澤康裕 博士 日本化学会会長、東京大学名誉教授、電気通信大学燃料電池イノベーション研究センター特任教授
我が国の科学技術の結果たる公表論文数はここ最近減少傾向にある。そして一人当たりの名目GDP、IMDの国際競争力ランキング等も低下してきている。「そんな中で我々は何をすべきか?」という観点から岩澤会長が持論を展開された。
国が科学・技術へ研究資金を増額し、しっかり人材に投資して人的基盤を強化し、夢のある“理学・工学分野の科学・夢ロードマップ”を作成して国づくりを進める必要があること、またここ10年で6人のノーベル化学賞受賞があったことにより”化学には大きな夢がある“ことに熱弁をふるわれた。
「化学部会活動の現状と期待」
・「化学部会の現状と課題」 部会長 林誠一 氏
・「化学部会還暦雑感」 前理事・部会長 植村 勝 氏
・「化学部会の思い出と課題」 前化学部会長 廣川一男 氏
錦谷禎範 氏 JX日鉱日石エネルギー中研所長
最高被占軌道(HOMO)、最低空軌道(LUMO)の概念を基にした理論化学を材料開発に応用する考え方が分かり易く説明された。この理論化学の視点から、有機EL、有機太陽電池、有機トランジスタも動作機構、高効率化、装置構造等の説明があった。なお、有機レーザを如何に作りだすか、現在この辺が究極の目標になっている。
また、新機能材料創生の基盤技術に昨年ノーベル賞を受賞したクロスカップリング反応が利用されており、この分野の技術は日本が一番強い。そして有機半導体の製造に「鈴木―宮浦クロスカップリング反応が利用されているとのこと。
平松信明 氏(応用理学/情報工学部門技術士・総合技術監理技術士、日本気象協会主任技師)
我々の生活に身近な天気が科学的な見地から解説された。通常の天気予報では短い時間での説明だが、本講演では時間を十分に使い、“昨年の夏はどうしてあんなに暑くなったのか”、“地球温暖化の実態と今後の予想”、そして“今年の夏以降の天気の予想”について分かり易い説明があった。
年ごとの気温や気候に影響を与えるキーワードはエルニーニョ、ラニーニャ、亜熱帯ジェット気流、チベット高気圧、オホーツク海高気圧、太平洋高気圧等であること、また、地球温暖化については今後の研究を待つ必要がありそうだと感じた。
以上、秋葉記
若手グループ主催
概要等の詳細は、下記の添付資料「7月16日:平成22年度 化学部門第一次試験合格者およびJABEE修了生歓迎行事報告」をご参照ください。
富山能幸 氏(化学部門技術士・元信越化学)
木村 修 氏(化学部門技術士・元住友化学)
講演1:「理研のミッション 〜個人知、理研知、そして社会知〜」
小川智也 氏(理化学研究所和光研究所長)
講演2:「化学部門技術士として 〜自分らしさを基にしたビジネスモデル〜」
丹生光雄 氏 技術士 (化学部門)
積水ハウス「河市北利根の住まいの夢工場(環境面に対する住まい取組を中心に)、ゼロエミッションハウス、建材のリサイクル工場の見学」
南部宏暢 氏(太陽化学執行役員、技術士)
武田邦彦 先生 中部大学総合工学研究科 教授
環境問題についても思想信条の自由と学問の自由は確保されているが、日本の現状は違っているという。科学者が科学として環境問題(循環型社会とエントロピー、生物活動と温暖化、生物多様性)を取り扱うとどのようになるのかそれを講演で明らかにされた。炭酸ガスによる温暖化は科学的証拠に基づいて発言されていない、環境問題は科学的・合理的になされていないと説かれた。また、技術士制度にも言及され、現状は機能していないと。反省すべき点が多くあった。
福井 寛 氏 技術士 (化学部門) 日本化学会フェロー・元資生堂
化粧品技術には皮膚を中心としたバイオ関連領域と新素材や乳化・可溶化および粉体の分散といったマテリアル関連領域があり、これらの異分野の知見を融合して新しい価値を創造している。本講演では、皮膚科学の進歩に基づいたスキンケア開発、メーキャップにおける光学粉体の進化、コロイド化学を駆使したメーク落としの開発、フレグランスにおけるかおりの心理生理効果など各領域での化粧品技術の最前線について紹介された。
「IPEJ」,「日本技術士会」,「技術士会」,「CEマーク」及び「PEマーク」は、公益社団法人日本技術士会の登録商標です。
公益社団法人 日本技術士会 / Copyright IPEJ. All Rights Reserved.