ナビゲーションを飛ばしてコンテンツへ
  • 生物工学部会のホーム
  • 地域本部・県支部・部会・委員会
  • 公益社団法人日本技術士会
  • RSSについて
生物工学部会

研修旅行実績(見学会および講演会)2013年

見学の様子(拡大画像へのリンク)

見学の様子

(画像クリックで拡大 89KB)

研修旅行記録

【日時】平成25年7月19日(金)13:00-17:30(終了後懇親会)
【訪問先】大阪大学医学部附属病院未来医療センターおよび病院内施設
【懇親会】スカイレストラン(附属病院病棟14F)

【内容】
1. 未来医療センターの紹介
 銀杏会館において齋藤充弘会員(未来医療センター講師)より、未来医療センターについて紹介がなされた。新薬が開発されるまでには多くの時間・費用が必要であることから、トランスレーショナルリサーチ(新しい医療を開発し、臨床の場で試用してその有効性と安全性を確認し、日常医療へ応用していくまでの一連の研究過程)は重要な役割を担う。未来医療センターでの実践例として、大腿の筋肉組織から筋芽細胞を取り出して培養し、シート状にして心疾患の患者の心臓表面に移植する(シートを貼り付けて馴染ませる)ことで、心機能を改善させる臨床研究が紹介された。

2. 未来医療センター見学
 未来医療センター(附属病院外来棟4F)を見学した。I相試験を実施する施設の先に、患者から採取した生体試料を扱う部屋が併設されており、未知の病原体からの感染リスクを低減するために、グローブボックスにて作業が行われる。また、実験試料へのコンタミを回避し、常に同一の実験を実施可能な開発中の実験ロボット(川崎重工社製)についても見学した。クリーンベンチのようなガラス張りの箱の中には2つの作業用アームがあり、それぞれ補助と操作を行う。続いてiPS細胞臨床研究センターを見学した。齋藤会員よりモニターを介して培養しているiPS細胞について解説がなされ、心筋に分化したiPS細胞が脈動している様子を観察した。

3. 救急救命センター、ドクターヘリ(附属病院病棟屋上)見学
 屋上のヘリポートにドクターヘリの姿を確認すると、見学者は一斉に手持ちのカメラのシャッターを切った。職員の解説によれば、最高時速は200km/hであり、機内に簡素な医療器具が備え付けられているが、手術等を行うことは困難であり、できるだけ早く病院に患者を運ぶことが使命である。

4. 薬剤部院内製剤調整施設(附属病院棟B1F)見学
 シクロスポリンのリポソーム製剤等を調製する施設を窓から見学し、職員から院内製剤について説明を受けた。院内製剤とは、病院内の薬剤師が医療法の下に薬を調製することである。院内製剤から市販された薬品も多くある。院内製剤は常用製剤と特殊製剤の2つに大別され、直近の10年で特殊製剤は3倍も増加している。そのほか、サニテーション、施設の殺菌、水質検査、機器バリデーション等について説明頂いた。

5. PETマイクロドーズ試験施設(附属病院棟B1F)見学
 放射線部のPET(positron emission tomography)検査棟において、PETマイクロドーズ試験の説明を伺った。筋芽細胞のシートを心臓に移植した前後を測定し、手術の効果を確認したり、薬剤の分布と定量を行うことで薬効を評価したりする。ポジトロン放出核種で標識されたトレーサーは半減期が短いため、すぐに患者に投与できるように、トレーサー生成のためのサイクロトロンが併設されている。

集合写真(拡大画像へのリンク)

集合写真

(画像クリックで拡大 82KB)

6. 講演 大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻 紀ノ岡正博教授
「再生医療における細胞加工について」
 紀ノ岡先生は化学工学が専門であり、ヒト細胞をどのように育てるかが研究テーマ。
(1)iPS細胞について:抗生物質なしの環境で培養するため、コンタミリスクが高く、環境はクリーンが望ましい。また、毎日、同時間帯に培地交換が必要。
(2)再生医療について:再生医療において、人工皮膚は表皮と真皮の間の基底膜の角化細胞を用いて作られる。日本の再生医療製品は、J-TEC社の2品のみであり、開発が遅れている。律速は法律によるところがあり、改正の動きがある。現在の医師法・医療法では、再生医療の実施において、医師からの細胞培養のCROへの委託は許されていないが、これが許可されるように法改正されると考えられる。
(3)細胞加工システムについて:川崎重工社のR-CPXおよびカネカのP4CS、東京女子大学の岡野先生と共同開発中の自動細胞シート作成装置(組織ファクトリー)について紹介がなされた。組織ファクトリーは、各実験操作を行うユニットがモジュール化しており、実験用途によってレゴブロックのように組み合わせを変えて使用することができるFMP(フレキシブルモジュール型プラットフォーム)形式をとっている。

7. 所感
 普段立ち入ることのない病院内の施設を見学することができ、更に第一線の研究者の話を聞くことができ、大変有意義であった。再生医療が、iPS細胞の基礎的な研究に留まらず、様々な工学的取り組みや臨床研究によって発展を続けていることを改めて実感し、未来医療の無限の可能性を感じた。

以上

(記録者:本田 大士)

関連ページ

このページのお問い合わせ:生物工学部会

ページトップへ