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農業部会

平成20年2月度講演会〔講演要旨〕

平成20年2月2日 葺手第2ビル会議室

WTO及びFTA等の貿易協定をめぐる動きについて−農業分野関係の考え方と交渉の現況−

 農林水産省 生産局総務課 国際室長
 塩谷和正 氏

 最初に、WTOについて基本的なところをいくつか述べますと、WTOは正式名称を世界貿易機関(World Trade Organization)といい、1995年に設立されました。歴史的には、第2次大戦が終わって間もなくの1948年に発足したGATT(貿易と関税に関する一般協定)から、発展してきております。第2次大戦は、世界不況から経済のブロック化が進み、それが一因で起こったとされます。その反省から、GATTは自由貿易体制が望ましいという考え方を基本とし、WTOはそれを引き継いでいるということです。

 WTOには現在151カ国・地域が加盟しています。WTOの取り組んでいる主な業務は2つあります。その1つは、世界共通の貿易のルールづくりを目的とする交渉の業務です。前回の交渉は1994年に妥結したウルグアイ・ラウンドで、現在は2001年に立ち上げられたドーハ・ラウンドが大詰めを迎えております。その2つは、各国間における貿易紛争のパネルの設置による解決に係る業務です。

 WTOにおける意思決定は、全会一致の合意(コンセンサス)をもってなされます。意思決定の事項に関しては、それを踏まえて各国は加盟国に対して最恵国待遇を付与するなどの義務を負います。協定違反にはパネルの裁定、対抗措置などの法的措置が取られます。

 農業分野の交渉での論議は、[1]各国の関税をどうやって引き下げるか(市場アクセス)、[2]各国が農業者に対して支出している補助金のうち貿易に影響するものをどうやって下げていくか(輸出補助金や国内支持)、の2つが主要事項となってきております。今次のドーハ・ラウンドでの農業交渉ですが、輸出補助金の撤廃は決着済みとなったものの、市場アクセスと国内支持については、なお大きな課題が残されております。

 ドーハ・ラウンドの全体の状況ですが、[1]米国は国内補助金で、[2]EU・日本は農産物の関税で、有力途上国(ブラジル・インド等)は鉱工業品の関税で、それぞれ守りの立場にあり、お互いに弱い所を攻めあう、いわば「3すくみ」の状況となっております。これからどう決着していくか、その見通しについては不透明感を増しております。

 最後に、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)についてですが、交渉はともに2カ国間で行なわれます。世界の各国間で結ばれたこれら協定の件数が、1990年代以降急速に増加しています。わが国は、このFTAやEPAについては、WTOの多角的貿易体制を補完するものとして、アジアを中心に交渉、締結を推進しております。国内農業への多大の影響が懸念される農産物に関しては、関税撤廃の例外品目とするなど、柔軟性をもった取扱いの行なわれることが多くなっております。

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