ナビゲーションを飛ばしてコンテンツへ
  • 男女共同参画推進委員会のホーム
  • 地域本部・県支部・部会・委員会
  • 公益社団法人日本技術士会
  • RSSについて
男女共同参画推進委員会

男性技術士キャリアモデル 田中尚さん

田中尚さん(拡大画像へのリンク)

      田中尚さん

(画像クリックで拡大 20KB)

田中 尚 さん

たなか ひさし さん

土木と地質のかけ橋

 私は大学で地質学を専攻しました。多くの同級生が地質コンサルタントへ就職する中、地質の知識を直接的に土木の世界の中で生かしたい、土木と地質のかけ橋となりたいと思い、建設会社に入社しました。
私が勤務している日特建設(株)は、土木分野の中でも特殊な基礎工事を得意とする会社で、目に見えない地面の下で行う工事が主体です。例えば、ダムを建設するにはただ堤体を作るだけでは十分ではなく、周辺の地山岩盤の亀裂から漏れる水を止める必要があります。そのために、地中に直径5cm前後の穴を何10mもの深さで掘り、その穴を利用してセメントミルクを注入して亀裂を埋めます。また、地すべり対策では、グラウンドアンカーという構造物を使って地すべりの動きを止める工事を行います。このグラウンドアンカーを作るためにも、地中に直径9〜17cm程度の穴を何10mもの深さで掘り、重要な構造物を作ります。これら、地面の下での仕事を適切に行うためには、工事の知識だけでなく、地面の中の地盤の状態(地質)を推測し、評価する知識も必要となるのです。

技術士との出会い

 入社時、私は技術本部地質部に配属されました。地質部では、先輩・上司の指導の下、日本全国の施工現場で気きる地質的トラブルの対応などを行いました。
そこで指導していただいた上司が技術士であり、それが人生初の技術士との出会いでした。上司も私と同じ地質を学んできた方で、まさに土木と地質のかけ橋の仕事をしていました。工事担当者には分かりづらい地質の情報を分かりやすく説明し、施工における留意点などを伝える、彼のそんな仕事ぶりに憧れました。特に、技術士としての考え方や仕事の進め方、人柄などにとても肝銘を受けて、自分もこんな人になりたい!こんな技術者になりたい!と心から思いました。

目指せ技術士

 実は、この上司に出会うまでは技術士という資格の存在を知りませんでしたが、尊敬する上司にならい、私も技術士(応用理学部門)を目指す決意をしました。
まずは技術士補となるために、入社した1999年から試験にチャレンジし、3年目の2002年に合格することができました。当時、どんな勉強をしたかはっきり覚えていないのですが、過去問題を解いたり、出題分野に関連する高校の教科書を読んだりした記憶があります。
 技術士補となった次に目指すべきは技術士です。受験資格が満たされた2004年からチャレンジし始めましたが、合格までに何度も何度も申し込むことになりました。そのおかげで、悲しいかな、申込み方法だけは社内の皆さんに指導できるようになりました。
 そして、5年目となる2008年に念願の合格通知を受け取ることができました。実は、その間の2005年は妻へのプロポーズを優先し、試験当日は欠席してしまいました。しかし、そのプロポーズがうまくいき、現在の私があるので、決して後悔はしていません。

技術士になって

 技術士になって良かったと感じることが色々とあるので紹介します。
 社内的には、比較的若いうち(?)に技術士を取得することができたので、上司や先輩から一目置かれるようになりました。さらに、当社では資格手当があるため、給与アップとなりました。
 社外的には、名刺交換をした際に、「技術士資格を持っていらっしゃるんですね」と言っていただけることがあり、それがとてもうれしかったです(ま、若いうちだけでしたが)。また最近は、技術士であるということが、直接的に、お客さんの信頼や期待につながることを日々実感しています。何より自分自身にとって技術士であることが戒めとなり、責任感をもって仕事ができるようになりました。それまでのちょっとだらしない猫背の自分が、背筋を伸ばして生活できるようになった気がします。

広島支店技術部としての仕事

 2018年度から広島支店技術部に異動となり、自宅を離れて単身赴任となりました。広島支店での業務は、当社が受注した工事に対し、地質的なトラブルが発生しないように施工方法を検討したり、発生してしまったトラブルにどう対処すれば良いかなどを検討したりすることを行っています。
トラブルに対する対処方法の検討は、技術士受験の際に勉強した課題と問題点の整理、それに対する解決方法の検討といった流れを用いることで、効果的な提案をスムーズにすることができています。この考え方は普遍的なものですので、技術士となる前よりもスッキリと物事を捉えることができるようになり、とても役になっています。また、総合技術監理部門におけるキーワードである「トレードオフ」の考え方は、どのような業務を行ううえでも重要な考え方であり、日常的な課題に対して応用しています。

俯瞰と時間

 自分が行動するにあたって常に意識している言葉をご紹介します。それは「俯瞰と時間」という言葉です。技術士になった頃からこのことが大切であると思うようになり、その後は何をするにも常に意識をしています。
まず“俯瞰”とは、物事をうまく進めるためには、その事象の全体像を把握・理解した上で自分のすべき行動を考えることが必要であり、俯瞰的な視野が必要である、という意味です。どうしても、没頭したり、急いだり、自分の得意なことを調子に乗ってやろうとした時に近視眼的になり、結果としてその判断はベストでなかったということがあります。
もう一つの“時間”は、時間というものをとても大事にし、何を行うにも時間を意識して行動するように、という意味です。時間は不可逆性の物理現象であり、私たちは刻一刻と刻まれる後戻りのできない時間の中を生きています。そんなことを考えると、何気なく過ぎていく時間がとても貴重なものに思え、作業に要する時間、締切日、待ち合わせ時間など、どれもが大切な時間と思えるようになります。なお。この時間には、自分の時間を大切にするという意味だけでなく、人の時間も大切にするという意味も含めています。
この2つの言葉を意識してい業務を行うことで、合理的かつベストに近い答えを出すことができるようになったと思います。

子育てと仕事、優先順位とメリハリ

 現在、小学五年生(11歳)の子どもがいます。自宅を離れての単身赴任中のため、帰宅するのは月に1回程度です。しかし、このような環境でも、しっかりと子供と向き合い、父親の役目を果たしたいと考えています。
 昨今ICTツールが浸透したおかげで、週末にはスカイプでビデオ通話をするなど、コミュニケーションをとることができています。もちろん帰宅した時には積極的に子どもとの時間を作り、一緒に過ごすようにしています。これは日ごろから子どもと接してストレスが溜まりやすい妻へのフォローにもなっています。
 帰宅するタイミングは子どもの予定などと合わせるため、1ヶ月前には決まります。ですので、そのタイミングで必ず帰宅できるよう、優先順位を持って業務を進めて完遂し、帰宅したら仕事のことは考えない、とメリハリをつけるようにしています。今では、帰宅するために仕事を頑張る、というのが一つの原動力となっており、単身赴任も悪くはないかな、と思うこの頃です(もちろん、常日頃から家族と一緒に過ごせるのがベストではありますが)。

スカイプ写真(拡大画像へのリンク)

スカイプ写真

(画像クリックで拡大 24KB)

おわりに

 私のエッセイが何かの参考になればと思い、筆をとらせていただきました。こんな人が技術士なんだ、と思っていただければ幸いです。
 これから技術士を目指す皆さん、ぜひ頑張ってください。応援しています。私は、全ての人が技術士になれる力を持っていると思っています。全ての人が技術士になれる考え方を持っていると思っています。後は、その力や考え方を試験や実践でうまく表現できるかどうかにかかっている、と思っています。技術士になった暁には、日本技術士会に入会して技術士同士の交流を深めましょう!

プロフィール

●略歴
岐阜県出身。大学入学とともに岐阜を離れる。
就職に伴い上京。転勤や出向、出張で各地へ赴き、全国47都道府県制覇を達成。
現在、日特建設(株)広島支店にて勤務。
●趣味と特技
大学時代から始めたマンドリン。社会人団体に所属し活動(現在は音楽活動を「育休」中)。
新入社員時に先輩から勧められたゴルフ。最近、また火が付き猛特訓中。
●資格
技術士 総合技術監理部門
技術士 応用理学部門 地質
一級土木施工管理技士
コンクリート診断士
土壌汚染調査技術管理者
など

経歴

1974年12月
 岐阜県にて誕生
1990年4月
 岐阜県立岐山高等学校に入学
1993年4月
 山口大学理学部地質学鉱物科学科に入学
1997年4月
 山口大学大学院理工学研究科化学・地球科学専攻に入学
1999年4月(24歳)
 日特建設株式会社に入社 技術本部地質部に配属
2002年2月(27歳)
 技術士補(応用理学部門)を取得
2002年4月
 長野支店(現長野営業所)技術課に異動
2005年4月
 (独)土木研究所土砂管理研究グループ地すべりチームへ出向
2005年7月
 妻との出会い
2006年2月
 一級土木施工管理技士を取得
2006年3月(31歳)
 結婚
2008年4月
 技術本部技術開発グループに異動
2009年3月(34歳)
 技術士(応用理学部門 地質)を取得
2009年4月
 コンクリート診断士を取得
2010年3月(35歳)
 技術士(総合技術監理部門)を取得
2011年10月(36歳)
 第一子誕生(男の子)
2012年4月
 経営企画室に異動
2012年10月(37歳)
 マイホームを購入
2013年2月
 土壌汚染調査技術管理者を取得
2014年4月
 海外事業部に異動
2018年4月
 広島支店に異動

※注:記事は2022年11月現在のものです。

このページのお問い合わせ:男女共同参画推進委員会

ページトップへ